途上



あの日…

貴方様を失った後

わたくしは死にました…


沢山の涙と 沢山の血を流した末

産声を上げた愛し子を残して…


望んで望んで

焦がれるままに

何日も何日もの夜を越えた

その結果


たった一つ残された命を腕に抱き

もう一人のわたくしは立ち竦んでおります


貴方様と引き裂かれたわたくしは

また…独りになってしまいました

独りで歩き始めねばなりません

泣き叫ぶ心を封印しながら


今のわたくしは

どこへゆくのか分からない

川を漂う一枚の小さな木の葉


…もうしがらみに捕らわれたくはありません…


わたくしはこれから先ずっと

貴方様とは異なる道を歩むことになるでしょう

それが定めなのならば

わたくしは受け入れるしか御座いません


いつか…貴方様とは

どこかで再びお会いする日が来るかもしれません

それが一体いつなのか分かりません

世を跨いでしまうかもしれません


でも…その時まで

わたくしは さまよい続けようと思います

小さな命を抱いたまま

ただ独りで

何かに縛られること無く

自由にさまよい さまよい続けます


生き残ったわたくしを生かす為に


いつの日か 遠い未来で

貴方様に巡り会える日が来るその日まで


二つに別れた小さな流れが

少しずつ大きい流れとなり

やがて澄み切ったあの青空の下

大きな海へと辿り着く様に


その時が来たら

わたくしは 大きな翼をはためかせ

きっと

本当に心から笑顔になれるのでしょう


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