第十三話 河津千本桜を見に行きました
季節は初春。ようやく緑の丘にも春の訪れがやって来た。寒い冬、あたいの苦手な季節もそろそろ終わる。前世ではストーブの前で毛がチリチリになるぐらい近づいて、暖まっていたっけ。
ヒメ神様の神通力行使後、人間たちがケーキとチキンを食べて大騒ぎする”くりすますぱーてぃー”やら、寒い中わざわざ神社仏閣へ
しかし、最近はよく街中で偶然陽菜と陸くんが出会う機会が増えてきたと思う。学校帰りでも二人で待ち合わせという訳ではないものの、たまたま一緒になることもあるらしい。(妹の結衣ちゃん談)
あたいがヒメ神様からこっそり聞いた話では、ヒメ神社での初詣では二人とも「「陸(陽菜)と一緒にいたい」」が今年のお願いだったそうだ。ちなみに二人が引いたおみくじは揃って大吉らしい。
あたいは生後九か月、陸くんの家に来てからは七か月が経とうとしていた。
すっかり巻き尾も成長し、体にピッタリ密着していた尻尾もようやくフリフリ出来るまでになった。やっぱり尻尾で感情表現できると違うなぁ。お口も少し伸びて、成犬に近づいてきている。冬のもふもふ毛が抜けた時はあたいのぬいぐるみが出来るぐらい、抜け毛が出たけどね。
陸くんと陽菜は今春からいよいよ”ちゅーがくせい”になるらしい。
先日も陸くんが家の中で見慣れない紺色の服をお母さんに着せられていたが、妹の結衣ちゃんがそれを
そんな訳であたいはいつも通り、相変わらずのんびりした毎日を送っている。最近は善行レベルも上がっていないが、少しぐらいゆっくりしてもいいよね。
三月初旬のある日、お弁当を持って、陸くんと陽菜があたいを花見に連れて行ってくれた。まだまだ微妙な関係の二人だが、やはりヒメ神様の御力が影響し、自然な成り行きでお花見デート(?)になったのかもしれない。
陸くんと陽菜の話では、
天気は快晴。あたいが晴れ犬だからかしら。
あたいは陸くんの自転車の前かごに入れられ、会場近くの道の駅まで連れてこられた。ここからはリードを付けられ、桜を見ながらぶらぶら歩き。でもあたいは散歩大好きなので、長距離でも全く問題ないのだ。
河津桜はそれほど大きな桜の樹ではないので、あたいも抱っこされれば間近で花が見られる。もちろんお口にも入れてモグモグお花の味を確かめられるね。
「綺麗だよね、ここの千本桜って。まだ植えられてからそんなに経っていないはずだけど、ずーっと続くピンクの景色に圧倒されちゃう」
陽菜が早咲きの河津桜を見て嬉しそうに話す。
「そうだね。聞くところによると、日本でも最長級らしいよ」
「へぇー、緑の丘でもまだ知らない人が多いから、ここは穴場だよねぇ」
しばらく歩いてから、あたいたちは途中の広場で、昼食を取ることになった。陸くんがビニールシートを敷き、陽菜とあたいも一緒にお邪魔する。
あたいは陸くんからお水とカリカリご飯をもらってムシャムシャ食べ始める。
「はい、陸。これ、あたしが今朝作ってきたんだ」
陽菜は自分で作ってきたサンドイッチのタッパーを開け、陸に
「おぉ、すごいな! 結構お腹が減ってたんだ」
陸くんは遠慮せず、ムシャムシャとサンドイッチをいただく。
「はい、紅茶もどうぞ」
陽菜が気を利かせて陸くんへ紅茶のボトルを差し出す。
「ゴクゴク、うん、とってもおいしいぞ」
「えへへ……それじゃあ、あたしもいただこうかな」
満足そうな陸くんの笑顔を見て、顔を赤く染めた陽菜もようやく食べ始めた。
そういえば陸くんが口をつけたボトルもそのまま気にせずに飲んでいるわね。まだ陸くんへの告白は出来ていないが、最近陽菜は自分自身の気持ちを隠し切れなくなってきたようにも見える。
今日のお花見では犬連れの花見客も多いようだ。あたいと同じ柴犬に、あたいは前足を上げて二本立ちで挨拶してみる。
「アォーン(こんにちわん!)」
相手の柴犬がビクッとして、あたいから離れる
あたいは今世では誰にでもフレンドリーなのだが、テンション高めなので、たまに相手から避けられることもある。うん、ちょっと悲しいね。
そうして夕方近くに往復十kmのお花見が終了。お散歩としては長めだけど、あたいは大・大・大満足だった!
帰りは道の駅近くのいちご農園で、陸くんと陽菜はいちご狩りを楽しんだんだ。
あたいも少しご
そんなわけで本日の二人のお花見デート(?)は終了。今日も春のほんわかな一日が過ぎていった。
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