俺一人だけ魔王軍の元に召喚されたのだがっ……!

結月アオバ

第一章

プロローグ

 とある広間に12の椅子と玉座が1つ。辺りは暗く、時折鳴り響く雷の光だけがこの広間を照らしていた。


 椅子に座っているのは全員人型。しかし、人ではない。誰もが角や翼、背丈など普通の人間とは違う特徴を持っていた。


「……これより、魔王軍定例会議を開始する」


 玉座に座る女性ーーー今の世で魔王と呼ばれる『サキュバス族』のオスクロルが、その魅惑の足を組み替える。


 広間にいる数は14人。その内の12人は魔王幹部と呼ばれ、各々が主要の地で来るべき人間との戦争を待っている。


 そして、12人のうちに含まれない一人が、魔王であるオスクロル。そしてもう一人は、玉座の横で所在なさげに立っている


 黒髪黒目の至って普通の人間。ガタイも引き締まっているわけでもなく、かと言って容姿が特段に優れている訳でもない。


 そう、彼はこの異世界に召喚されていところを人間である。


「勿論、議題はこの人間ーーー神楽珠希かぐらたまきという人間共が捨て駒にさせようとし、召喚されそうになった所を間一髪で私の部下であるミリーナが救った」


 おお……と少しざわめき出す。


「して魔王様、その人間……神楽珠希はいかにして?」


 玉座に1番近く、向かって右側の角と翼の生えた悪魔がオスクロルに向かって声をかけた。


悪魔の王デーモンロード』と人間に呼ばれ、恐れられている魔王12幹部の一人。その瞳は、珠希を値踏みするように全身を見ていた。


「召喚者たちの中で最も強い者を、ミリーナには急いで引き寄せるとようにと伝えた。反応が大きく、見つかりやすかったと言っていた」


 そして、オスクロルは珠希の腕をぐっと引き寄せる。急なことに体勢を崩した珠希を「うおっ……」と言いつつも、完全には体勢を崩さず、少しよろける程度だった。


 何故かオスクロルが面白くなさそうな目で珠希を見ていたが。


「ーーーそれに、珠希の強さは私自身が確認した。きっと、頼りになるはずだ」


 今度は強引にグイッ!と引き寄せ、珠希の頭を撫でた。珠希は「なんでこうなったんだっけ……?」と思い、少しだけ過去を思い出すことにした。

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