第18話

着せかえ人形③


最後はお手製の洋服や人形だった。ボール紙が無いので、ぺらぺらした薄い紙に描いていたのだが、きちんと色鉛筆(簡単に大きな面積を塗れるクレヨンやクレパスも持っていたが、あのクレヨンとクレパスのざらざら感が嫌いだったから)で色を塗っていた。オリジナルのキャラクターではなくて、アニメーションの模写だったが、作るのには一体きりで満足できた。もちろん「まぁ」が担当した。先ほどのプリマドンナ達の人形と一緒に遊んだ。紙がぺらぺらだったので、ボール紙の紙相撲の人形なんかに興味をそそられた。身近にコピー機も両面テープも無い時代だったから、ぺらぺらの紙をボール紙に貼りつけることなんて、思いもよらなかった。セロファンテープを折り曲げて先っぽを貼りつけ両面テープにすることも出来たのだが、キレイじゃないので、やらなかった。お洋服の紙の折り目がぺらぺらなので、ちぎれそうになるのはセロファンテープでくっつけた。そのうち、折り目を折らずに遊ぶ様になった。私の遊ぶ性質は大抵は「じゃじゃ馬」か「クールビューティ」だった。純粋な飯事は「王子様」とか「お姫様」とか「天才少年」とか「天才博士」とか「強い格闘家」とか、どちらかというとモテメンが多かったが、着せかえ人形の性格は「男の子」ではなく「女の子」だった。「女の子」は「明朗快活」な人気者(笑える事に「かよ」と「まぁ」の二人っきりの遊びなのだが)という設定だった。同じ部屋で三姉妹布団を隣にひいて、母が消灯してるかの確認をする時は、布団の下に、着せかえ人形達を隠して狸寝入りしていた。母の温情か?一度も見つかることなく、二人っきりで遊んでいた。(妹は慣れてるのか、うるさがらずに、お利口なので、普通に眠っていた)二人っきりの秘密の遊びは「スリル」もあった。だが、純粋に「役になりきっている」瞬間が楽しかった。マンネリなのに、マンネリを感じずに二人のアドリブは抜群の相性だった。たぶん今に思えば「単細胞」の「まぁ」が似たような話題を、似てると気がつかずに、フル「攻め」だったので「かよ」は相づちをうって、フル「受け」ていたのだと思われる。私にとっての至福の時間が、姉には「まぁ」は、わがままだからと、付き合ってくれていたのだろう(と今は思える)偽物の仲良しが永遠につづく事を疑いもしない「まぁ」だった。 ぬいぐるみや人形やおもちゃや着せかえ人形達と一緒に。

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