第2話 家老、来ちゃったんですけど

「うらめしやああ」


ある晩耳元で聞こえた。

勘十郎しゅじんこうはとびおきた。


「ななななななんあ!!!家老様!?化けてでたのですか!」


勘十郎は信じられないものを見た。

明らかにご家老だ。ここは二階だ。部屋の扉は閉まっている!

足がない!!!

頭に白い三角のつけてる!!


「勘十郎くん、儂を殺した?」


「いいえ殺してません!!!!!南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏!」


実際、真実は本人にもわからない。暗かったし、急に襲われたものだから斬っちゃったかもしれないのだ。


「ん~、儂わからんのよね~、暗闇の中、息絶えたから。いやあ、すごく痛かったなあ。」


「南無阿弥陀仏…」

「もういいよそれ、ちょっと普通に話し合おうか。」

「いえいえいえ、透けてますし、普通ではいられません!」

「そうよねえ。儂、どうしたんだろうね。なんで幽霊みたいになっちゃたんだろうね。」

「みたいではありません!幽霊です!」

「そっかー、やっぱりそうなのか~。まあ、是非もないよね」

「いいんですかそれで。」

「もう仕方ないよね~死んじゃってるし。体軽くていいよ~。持病の腰痛も消えて、動きやすくて素晴らしいね」


そういってその場でくるくると回って見せるご家老さま。

生前より生き生きしていた。

こころなしか皺も少なく、若返ってさえ見える。


「というわけでね、勘十郎くん。今の生活に困ってないから、恨んでないよ」

「さっきうらめしやって言ってたじゃないですか!」

「あれ言わないといけない決まりっぽいんだよね~。」

「迷惑です。」

「でもね、困ったことに幽霊になったのに、見えるの勘十郎くんだけっぽいんだよね。」

「なんと迷惑な。」

「というわけで勘十郎くん。仲良くしてくれたまえ。」

「…」

「では、国元の話をしてやろう。」

「!」

「一つは君にとっていい知らせだ。妹ちゃんの、殿への嫁入りはなくなった」

「本当ですか!」

「ただもう一つが問題だ。殿から我が息子へ、勘十郎くんの敵討ち命令がでた。」

「なんと!追手はご子息様ですか…」

「困ったことに成功しなければ帰還できぬ。さらには失敗すれば我が武田家は御家断絶とのこと。というわけで勘十郎くん、息子に斬られておくれ。」

「いやでございます!」

「ううむ、やっぱりそうなるよね。でもねえ、武田家が無くなっちゃうのは困るよ。何人の家来たちが路頭に迷うことか。なんとかできないかい?」

「なんとかですか。そうですね…真犯人を見つけ出すくらいしか。私ではありませんからね…」

「そうだよねえ。犯人誰なんだろうねえ…」


その後二人は話し込んだが、犯人の検討はつかず、結局朝になると、


「じゃ、またくるから」


そう言って家老様は消えていった。


勘十郎のミッション

・武田のご子息から逃げきること

・家老を斬った真犯人を見つけること


果たして青年はクリアすることができるのだろうか。





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