バキューマーズ 〜ストレス回収社〜

盛田雄介

プロローグ

 誰にも名前を知られてない山々に小さな1つの村があった。


今宵、太鼓の音色に合わせて歌声がこだまし、村人達は感嘆の舞いを踊る。


山は村人に応えるかの様に一瞬、大地を震わせたが、年に1度の祭りだ。気がつく者など誰も居ない。


しかし、それだけは山に呼応するかの様に目を開いた。


目覚めたそれは、すぐさま人の匂いを嗅ぎつけ、湖にいた1人の祈祷師を見つける。


祈祷師はすぐさま、それから逃げようとしたが泥に足を取られ倒れてしまう。


必死に助けを求めたが、笑顔で踊りを楽しむ村人達の耳には全く届かない。


祈祷師は、悲しみに濡れていく心に小さな火を灯す。


それは喜んだ。ようやく自分を理解してくれる者が現れたから。


これからは、同士をもっと増やしていこう。

でなければ、私のこの気持ちは収まらない。

もっと人が多い所へ行かねば。


それは、鬼の形相で走り狂う祈祷師を優しく包み込み、村へ出た。


村人達は顔を歪ませ踊る。

手を取り合い踊る。

血を求め踊る。


さぁ、踊れ、踊れ。もっと踊れ!

躍り狂え!


僕はこの日の事を胸の傷にしまい込んだ。

朝の日差しの中、ひっそりと花弁を閉じる睡蓮と共に。

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