第39話 Jealousy

「これは何とも豪華ごうかだね・・・」


自宅のリビングルームでバスケットの中身を見せてもらった御門みかどは眼を疑った。


友梨佳ゆりかの手作りサンドイッチは、料理のうで未熟みじゅくさは素材そざいでカバーとばかりに、生ハムやローストビーフといった豪華ごうか食材しょくざいしみなく投入とうにゅうされている。


「どうぞ召し上がって下さい。」


「ありがとう。遠慮なく頂くよ。」


友梨佳ゆりかはサンドイッチを口に運んだ御門みかどの表情を心配そうに見つめる。


「いかがでしょうか?」


「・・・うん、美味うまい。これはお店に出せるレベルだね。」


「本当ですか!嬉しい・・・」


御門みかどの喜ぶ顔が見たくて頑張ってきた友梨佳ゆりかにとって、それは最高の感想だった。


今日までの苦労がむくわれた友梨佳ゆりか歓喜かんきする。


彼女は、これをきっかけに料理に目覚めざめる事になるのだが、それはまた別の話である。


食事を終えた2人は御門みかどの部屋に移動し、彼の作品を見せてもらう。


「この辺にあるのが最近の作品かな、美術館と違って下書きとかもざっているし、全く整理が出来ていないから、適当に見てくれてかまわないよ。」


拝見はいけんします。」


御門みかどのスケッチブックを見せてもらった友梨佳ゆりかは、一枚のスケッチに目がまる。


御門みかどさん、これは・・・?」


スケッチを見つめる友梨佳ゆりかの表情が一変いっぺんする。


それは確かにブラジャー姿の鷹飼美野里たかがいみのりのスケッチだった。


「ああ、それか。それは前に俺が妹の胸にブラジャーをいた時に作成したスケッチだよ。」


御門みかどの返答を聞いた友梨佳ゆりかの心にメラメラと対抗心たいこうしんき上がり、おさえる事が出来ない。


御門みかどさん、私の身体からだにもブラジャーをいて下さい!私、妹さんには負けたくありません!」


そう宣言した友梨佳ゆりか躊躇ちゅうちょなくシャツを脱ぎ捨てると、ブラを取って上半身裸になる。


美大生である御門みかどにとって、裸婦らふデッサンは日常茶飯事にちじょうさはんじであるため、女性のヌードそのものは見慣みなれたものだ。


しかし今回は完全に予想外の不意打ふいうちであったため、さすがの御門みかど動揺どうようかくせない。


美野里みのりの言う通り、彼女の胸はどう見てもDカップ以上はあった。


ブラを取り去ったばかりの彼女の肌にはブラのあとがくっきりと残っており、それがみょうにリアルである。


生来せいらいの芸術家である御門みかど友梨佳ゆりかの裸を見ながら、このブラのあとを再現するにはどうすれば良いかを無意識に考えていた。


しかし今はそんな事を考えている場合ではない。


御門みかど即答そくとうを求められていた。


下手へたに断ったところで、友梨佳ゆりかは絶対に納得しないだろう。


実際にブラをく以外に彼女を納得させる方法は見当たらなかった。


『それにしても蘭堂らんどうさんを家にまねくたびに、思いもかけない事が起こるな・・・』


抵抗ていこうをあきらめた御門みかどは彼女に伝える。


き上がるまで2時間位かかるけど、時間は大丈夫?」


「はい!大丈夫です。」


友梨佳ゆりかは勝者のみを浮かべながら即答そくとうした。

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