第14話 End of a happy time

2人が店を出たのは、午後3時半だった。

夕方と呼ぶには、まだ早い時間だ。


御門みかど深呼吸しんこきゅうともに大きくびをすると、友梨佳ゆりかに話しかける。


「フゥ、結構お腹いっぱいになったな。」


御馳走ごちそうして頂き、ありがとうございました。」


「こっちこそ楽しかったよ。そうだ、散々さんざん連れ回しておいて今更いまさらだけど、蘭堂らんどうさんの用事は大丈夫だいじょうぶだったのかな?」


「私の用事は今日でなくても大丈夫だいじょうぶです。」


「そうか、それならもう家に帰った方がいいな。」


「え、でも・・・」


「今日は結構歩いたし、蘭堂らんどうさんが思っている以上に身体からだつかれているはずだ。それに蘭堂らんどうさん、門限もんげんがあるんじゃないのか?」


図星ずぼしだった。

友梨佳ゆりかの家には門限もんげんがある。


特に今日は車を勝手かってに帰してしまった手前てまえ門限もんげんまで破る訳にはいかなかった。


門限もんげんギリギリだと御両親ごりょうしんが心配する。今日は早めに帰った方がいい。」


「・・・分かりました。」


友梨佳ゆりか渋々同意しぶしぶどういする。


四谷三丁目駅よつやさんちょうめえきはすぐ目の前だったが、混雑こんざつ座席ざせきに座れない事も考えた御門みかどは、友梨佳ゆりかをタクシーに乗せる。


「お金は大丈夫だいじょうぶ?」


「カードがあるので大丈夫だいじょうぶです。」


「そうか、じゃあ気を付けて」


タクシーの自動扉じどうとびらがバタンと閉まる。


友梨佳ゆりかは急いで窓を開けると、真剣な表情で御門みかどに話しかける。


「あの、私たちお友達という事でいいですよね?」


「ああ、蘭堂らんどうさんがOKならね。」


友梨佳ゆりか満面まんめんみを見せながら返事をする。


「ええ、もちろんOKですわ。」


走り出したタクシーの中から、彼女は御門みかどの姿が見えなくなるまで目で追い続けた。

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