47都道府県オブ・ザ・デッド

名取

47都道府県オブ・ザ・デッド

1.Outbreak ~北海道・東北編〜

第1話 岩手と秋田



「頼む岩手! いるんだろ!? 開けてくれ!」

「いやだ! もう帰ってくれ……」

 どんどんどんどん。どんどんどんどんどん。

 凄まじい勢いで玄関を叩く音が先ほどから鳴り響いている。秋田である。こっちはバリケードを作って震えながら再三拒否しているにもかかわらず、盛岡さんさ祭りの太鼓かというレベルの熱量でドアをノックをし続けている。

「なして!? こういう時はお隣同士助け合うもんだろ!?」

「だってお前、半分くらい壊死してんじゃん……やだよ」

「ばか、これはもともとだって。俺の体は平成12年ごろからずっとガンと自殺と高血圧でとっくにボロボロだよ。ほら、ぼだっごといぶりがっこも持ってきたし入れてくれ」

「此の期に及んでそういう体に悪いもん食うじゃんお前嫌い」

「保存食と水と米と漫画が必要だろ、こういう非常事態こそ。釣りキチ三平コンプリートボックスも持ってきたし一緒に読もうぜ」

「古いんだよチョイスが。時代は今ハイキュー‼︎なんだよ」

 と言いつつも、俺は渋々バリケードをよけ、玄関の鍵を外した。ドアの隙間から、見飽きに見飽きた隣人の顔が覗く。金色がかった瞳を潤ませて、しょげた秋田犬のような表情で尋ねてくる。

「入れてける?」

「もー……しょうがねーなー」

 こんな奴でも、隣人であることには違いない。

 それにネットで「東北は根暗だ」とかなんとか言われてもやっぱり癪なので、とりあえず俺は秋田を家に入れることにした。


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