サンダルでダッシュ!

新吉

第1話 サンダルでダッシュ!

 夏だ、海だ、目の前に広がる。青い空が海とつながっている。海風がふけば磯のかおりがする。足は自然と走り出した。堤防の階段をこえて、砂浜。サンダルはすぐ脱ぎ捨てた。ビーチサンダルにすればよかったのに、ヒールのあるやつ。砂の感触、暑い、貝殻がいっぱい。でもそれよりまずは、目の前の、



「海だー!」



 足を濡らしに行く、丈の短いスカートだから平気。私の両足を波がのむ。つめたくて気持ちいい。ざあーっと波がひいて少し足が砂に沈む。



「懐かしいね」


「ほら!早くこっち入りなよ!つめたいよ!」


「はいはい」



 泳ぐ準備なんてしてなかった。ちょっとした気まぐれで久しぶりに海に行こうかと、車の進路を変えたこいつ。私は最初は乗り気じゃなかったんだけどね。海に近づくにつれ風が変わって、私の気分まで変えた。



「貝殻拾ってどうするの?」


「今日の思い出にする」



 私はすっかり乾いた足で砂浜をゆっくり歩いて、貝殻を探す。後ろからあきれたような声がする。



「そろそろいくぞ、日に焼けるよ?」


「もーちょっとだけ!バッチリ日焼け止め塗ってきたから」


「はいはい、昔は気にしなかったのにな」


「子どもの頃の話でしょ」



 腐れ縁のこいつとはもう長い付き合い。私たちは去年の夏、ついに恋人同士になった。他のバカやってた友だちとではなく、二人きりでいろんなところに出かけている。


 足の砂をほろって、サンダルをはく。飲み物を買っている後ろ姿が見える。私は走って追いかけた。

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