消えた聖剣

「この小判、金額的な価値解るかな?」

 鑑定能力は無いから、物の相場がわかりません。

「これが10枚あったとして、金としての価値は金貨と同じかな?」

 この辺は、サーシャが鑑定してくれます。教会は、色々とあつかう物が多いので、鑑定のスキルを学ぶそうです。

「金としてなら、同じか、この板の方が価値あります」

「何でこんな事をするんだ?」

 偽金貨だとしたら、文句をいうために乗り込む可能性がある。

「この板、価値あるのですね」

 サーシャが、小判を見ながら感心しています。

「小判ですか?何となく、覚えがあるけど、この世界にもあるのね」

 レンが呟きます。

「そう言えば、この世界には小判は無いのですよね・・・。何でこんな事を、あの店主はしているのかな?」

 色々と、情報が足りません。

「どうします?」

「情報が欲しいです、レン、そこの兵士連れてきて」

「了解」

 レンにお願いして、隠れていた兵士を引きずり出します。レン、個人の戦闘力はかなり高いです。最初、自分ひとりになったら逃げるつもりだったみたいです。彼女の加護、一度戦闘になると、みかたが全滅するまで逃げられないみたいです。

 細かい制約があるみたいなので、その辺をしっかり調査する必要があります。


「どういうつもりだ?」

「どうだと思います?」

 レンに殴られ、気絶した兵士は、縄でぐるぐる巻きにされ、私の前にいます。

「知り合い?」

 縛られた兵士を見て、サーシャが微妙な表情をしています。

「この国の、第4王子のガガガーン様です」

「本人?」

「間違いありません。治安維持関係の部隊に所属しているお方です」

「サーシャ様?」

「私達を、監視していたのですか?」

「自分は、この道具屋を調査しております。サーシャ殿たちは、何かありませんでした?」

 何か、知っているみたいなので、色々と聞いて見ました。

 あの道具屋は、最近色々と問題があるそうです。一番の問題は、聖剣を買い取った事。王国の宝物庫から、第2王子が持ち出して売ってしまったらしい。ことが判明して、あわてて取り返そうとしたが、既に売却済みということで、取り返せなかった。

 売った相手を問い合わせても、客の情報を教える事は出来ないという事で、教えてもらえなかった。

 国相手に、それが通用しないはずだけど、この道具屋は強気だった。

 捜査のの途中で、軍から横槍が入り中止になった。

 第2王子と軍部は繋がりが強く、何か裏がある。ガガガーンはそう思い、調査を続行。彼は、王位継承権が無く、国ために忠実に働く人物だった。

 聖剣を売って、その資金で何をしたのかというのが、とても気になっていた。

 二月ほど調査していたが、不正の尻尾は捕まえる事ができなかった。

 その間、強盗を返り討ちにしたという報告が10件発生している。

 この手の店にはありがちだが、死体が理解不能の状態だった。

「理解不能?」

「どうやって殺されたか、死体を見ても解らなかった」

「解らない?」

「魔法で殺した感じは無い。6人は、額に穴が射当て死んでいる」

「この世界に、銃ってある?」

 額に穴が開くと効いて、銃の存在を考える。

「銃?」

「多分、無い」

 サーシャは、存在自体を知らないみたいで、レンは心当たりが無いみたいだ。

「7人目は顔が金属の破片まみれで死んでいた。ただ、この男は、商人の仲間の可能性もある」

「残りは?」

「喉元をナイフで一突き。ただ、この国の騎士で私の部下だった・・・」

 2人の騎士が殺されたみたいだ。

「弱い?」

 そう聞くと、睨まれた。

 ここまでの情報から、この商人は異世界から物を召喚できる可能性があります。

 どれだけの物を扱えるのか、とても気になります。私の場合、恩賞のポイントで色々と購入できますが、手軽に買えるなら、便利な能力だからね。

 これを、女神たちが殺害を要求する理由がわかりません。

「聖剣は、無いと困る物なの?」

「星属性の武器は、それなりにあります。盗まれたのは、その中の一つです」

「どうしても、取り返さないと駄目な物じゃない?」

「絶対とはいいません。第2王子が何か企んでいるみたいなので、それを確認するのが目的です」

「王様になる為に?」

「私に、王位継承権はありません。国のためです」

 一瞬、暗い表情をしましたが、国のためというのは本当みたいだね。

「こちらも、事情があるから、一緒に行く?」

「良いのですか?」

「自分の身は、自分で守ってよ」

「了解しました」

 ガガーガンは、大人しくこちらの指示に従います。権力者と、ある程度コネを作るのは大切な事です。利用させてもらいます。


「すみません、忘れ物をしてしまいました」

 道具屋に戻り、そういいます。小判を入れた袋を、落としていたので嘘ではありません。

「ありました!」

 出た時と同じ場所に、袋はありました。店主も気づいていなかったみたいです。

「あれ?」

 その場で中身を確認します。

「これ、金貨じゃないですよね?」

「お前がすり替えたんじゃないのか?」

「そんな時間はありませんよ」

「そう言う、加護があると聞いている」

 そう言いながら、店主はナイフを構えます。

「大人しく出て行くなら、何もしない」

 ナイフがこちらを向いた瞬間、レンが反応します。

「もうっ!」

 それを、抱きつく事で静止します。さりげなく移動して、サーシャの前に出ます。店主は、一瞬迷いを見せましたが、がガガーンに向かい、ナイフを向けます。

「守れてないよっ!」

 次の瞬間、ガガガーンを蹴り飛ばします。かなり手加減をしましたが、緊急事態です。壁にめり込み、瀕死の状態です。

 ただ、彼の立っていた場所を通過して、ナイフの刃が通過しています。

 スペツナズ・ナイフでしたっけ?壁に刺さった刃を見ながら、感心します。

 これ、実用化されたもを購入できるスキルなら、役に立ちそうです。

 唖然としている店主を、殴り倒して気絶させます。

 直接話さなくても、事情を調べる事は可能です。

 さて、ここで何があったのか、調べるとしましょう。



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