第8話 正面
「まず最初に大事なことがある」
部長の神城くんが説明してくれる。
人vs人のeスポーツにおいての大事な点をレクチャーしてくれていた。
「大事なこと?」
僕が聞き返す。
やはり僕としては、ゲームというと操作が大事なのではないかと思ってしまうのだけど、彼女たちの雰囲気からすると、そこはできて当たり前でそれ以上のことがあるようにおもう。
「そう、こういう鉄砲で戦うゲームは正面で撃ち合ってはいけない」
神城くんはさらっと大事なことを言った。
4vs4で戦うゲーム、最初に遠い位置から向かい合って戦うこのトイバトルにおいて、大事なことは正面で撃ち合ってはいけないということだった。
「え?そうなの?そういうゲームなんじゃないの?」
ぼくは驚いて聞き返した。
なぜ正面で打ち合ってはいけないのか。
正面で打ちあわないというのは実際にはどうすればいいのか?
そう思ってると、綾崎さんがいろいろ操作を始めながら僕にいった。
「ちょっと試してみましょう」
彼女はそういって、セッティングを完了させ、自分と僕だけがいる空間を作った。
そしてぼくの目の前に彼女のキャラクターがいる状態が生まれた。
「いっせいのせ、で撃ち合ってみましょう」
彼女はそういう。
そう、さっき神城くんがいった、正面で打ち合ってはいけないということを、実際にためそうということだった。
「オッケー」
僕はZRボタンの位置を確認しながら言った。
このボタンを押せば弾が出る。
いっせいのせ、ということばのタイミングでこのボタンを押せばいいはずだった。
「いっせいの、せ」
綾崎さんはいいながら、コントローラを構えている。
神城くんもその様子を見ている。
そして打ち合い。
刹那で僕と綾崎さんのキャラクターが弾を撃ち合って、同時に二人ともやられて、スタート地点に飛んで行った。
「あ、相討ちになった」
僕は言う。
これには驚いた。素人である僕が、同じタイミングとはいえ、撃ち合ったら、日本トップクラスの綾崎さんを倒せてしまった。これはすごいことなのでは?
「そう、こういうゲームは正面から撃ち合うと相討ちになるんだ」
神城くんは説明する。
簡単に説明してくれたところによると、これは弾が届くまでの時間が結構あって、届くまでの間に相手が弾を打ってきてしまうと、先に打てたとしても自分にも当たってしまうということだった。正面で打ち合っている限りは先に打てたことに対するメリットが減ってしまうということだった。
「これは結構実力差があってもこうなる」
神城くんはつづける。
この着弾までの時間が結構あるので、実力差があっても同時に正面から打ち合えば、両方やられてしまうということらしい。全然しらないことなので面白い話だった。
「ただし、とてつもなく実力差がある場合は別よ」
綾崎さんが微笑みながら言った。
その瞳の奥にはメラメラと輝く情熱を感じ取れた
「え?」
僕は驚いて聞き返した
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