第5話 部長

「いらっしゃい!君が噂の転入生だね」
部室に入るとそこには、すでに3人の姿があった。

そう話しかけてくれたのは少年。

僕のクラスにはいなかったみたいだけど、六年生なのだろう。


その少年と綾崎さんともう一人奥に物静かそうな美少女がいた。


「噂?」

僕は聞き返す。
ぼくは噂が流れるような存在じゃないはずだった。

とくにこの学校に入ってきてから特に何もしていない。


「そう、成績優秀、スポーツ万能、イケメンの謎の転校生」

その少年は続ける。
全部身に覚えがない。
どこから流れた噂なのだろうか・・・


「謎って」

僕が笑う。

特になんの謎もない、普通の転校生だからだ。

転校生だからというだけで謎なのかもしれないけれども。


「ゆかりが言ってたよ。面白いのが来たから誘ったって」

少年は続ける。
さっき聞いたんだ、と付け加えながら、綾崎さんの方を見ながら微笑んだ。
そして僕も綾崎さんの方を見た。


「そうだったのか」

僕は笑った。

犯人はすぐそばにいた。

事件とはそういうものだ。

「そこまでは言ってないわよ!部長は盛るくせがあるからね」
綾崎さんが顔を赤くしながら言う。
そこまでは言っていないみたいだけど、どこまで言ったのだろうか。

少なからず僕の話はしていてくれたらしい。


「部長?」

僕が聞き返す。
この日本一のeスポーツクラブの部長が彼だということだった。
普通の好青年で言われなければそういう人だとはわからなそうだった。


「そう、ぼくが部長の神城さとるだよ、よろしく」
神城くんはそういって握手を求めてきた。

僕も、手を出して軽く握って微笑んだ。

握手をしなれている感じだった。スポーツしていると対戦後に握手したりするからそういう感じで慣れているのだろうか。


「よろしくおねがいします!」
僕は言う。
あくまで、見学に来てみただけだけど、みんながどういうゲームで成績を残しているのかとても興味があった。日本一のプレイヤーが何を考えて、どんな練習をしているのか、見たり聞いたりできるだけでも楽しそうだ。


「じゃあ、早速だからいまeスポーツクラブが取り組んでる、ゲームをやろうか」
部長の神城くんはそう言って、ゲームのコントローラーを僕に渡した。
僕がやったことのあるゲームならいいけど、といいながらあたりを見回した。

やっているゲームのヒントがあるかもしれないと思いながら。


「なんていうゲームなんですか?」
僕は聞いた。
渡されたコントローラーは家庭用ゲーム機のものだった。

誰でもできる一般的なゲームなのかもしれない。


「これだよ!」
神城くんは画面を指差していった。

それは、世界で1,000万本以上売れている大人気ソフトだった。

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