第3話

 


 着いたのは、葛飾区の、とあるぼろアパートの前。探知機、205号室を表示。


 トントン


 ドアをノック。


 ギーッ


 ドアを開けたのは、少し寂しげな表情の女の子。


「……オンブズゥーマンさん?」


「たちかに、わたくちが、かの有名なオンブズゥーマンなのら~」


「早く、入って」


 女の子、オンブズゥーマンの腕を引っ張る。


 ギーッ


 部屋には女の子の母親らしき女が寝ている。


「……お母ちゃん、病気なの。けど、お金がないから、病院に行けないの。どうしたらいいかわからなくて、オンブズゥーマンさんのうわさを聞いて、助けてほしくて……」


「ふむふむ。心配はご無用。これ、輪ゴムよぅ」


 金太郎ヘアのてっぺんを輪ゴムで結んで、ちょっとオシャレしたオンブズゥーマン、ダジャレを言って、輪ゴムを指差す。


「……え?」


「ウッホン! ではでは、わたくちの赤ちゃんにおんぶちて」


 マントを脱ぐ。


「エッ!」


「いいからいいから、早く早く」


 オンブズゥーマンにおんぶされた、哺乳瓶をくわえた人形に抱きつく女の子。親亀の背中に子亀を乗せて~、と言った具合だ。


 ウエストポーチから出した安全ベルトで、抱えた母親と女の子を固定すると、、オンブズゥーマン、マントをはおる。そして、窓から飛び立った。


 シュワッチ!


「わ~、飛んでるぅ」


 女の子、つぶらな瞳を輝かせる。今回は女の子からのほっぺにチュッ! がなかったので、仕方なく、星のまばたきにウインクするオンブズゥーマン。




 30秒で救急病院に到着。


「わぁ~、オンブズゥーマンだわ~」


 ナースたちの歓声と共に熱い吐息。


「イエ~イ」


 女の子を降ろしたオンブズゥーマン、いつものように、親指を立ててウインクできめる。


 母親を診察室に運んだオンブズゥーマン、ウエストポーチからキャッシュカードを出す。


「お母さんの治療費は、これを使うのら~。暗証番号は、コソコソ……」


 意外にも金持ちのオンブズゥーマン。


「ありがと~。オンブズゥーマンさん、大好き。チュッ!」


 女の子、オンブズゥーマンのおてもやんほっぺにキス。けど、女の子は口紅をつけてないので、キスマークは期待できない。ん~、残念!


「イエ~イ」


 オンブズゥーマン、いつものポーズできめる。


「……また、会ってくれる?」


「いつでもオッケーなのら~」


「アッ! オンブズゥーマンだッ!」


 オンブズゥーマンを見て感激した松葉杖のマッチョ、松葉杖を放り投げて走ってくる。


「あんれまぁ! オンブズゥーマンかい?」


 点滴を手にしたおじいちゃん、点滴と共に駆け寄る。ナースたちは憧憬の眼差しで、オンブズゥーマンにうっとり。


「では、さらばじゃ」


 いつものポーズでカッコつけたオンブズゥーマン、振り向きざま、自動ドアにおてもやんほっぺをぶつける。


「アッ! いててて」


 けど、オンブズゥーマンのほっぺたは赤いので、衝撃のほどは目立たない。ん~、ラッキー~!


 シュワッチ!


 照れ隠しのように、あわてて飛び立つオンブズゥーマン。一同、空を見上げ、手を振る。




 ♪

 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン


 人形おんぶした

 オンブズゥーマン


 デブっちょウーマン

 ウーマンパワー


 オンブズゥーマン

 ワンダーウーマン


 ちゃうちゃうオンブズゥーマン


 悪人倒し

 善人守る


 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン


 ぼくらのヒロイン

 わてらのログイン


 ちゃうちゃうヒロイン


 オンブズゥーマン

 オンブズゥーマン




 今日もまた、日本だけの夜空に、オンブズゥーマンのテーマ曲が響き渡るのら~。




「ウッサーーーイッ! 今、何時だと思ってんだッ!」


 区民からの苦情により、ウエストポーチに入ったテープレコーダーの音量を下げるオンブズゥーマン。意外と謙虚なのら~。




 ピカッ! ピカッ!


 [助けて探知機]が悲鳴をキャッチ。


『ウウウ~、ワン! クンクン……。(オンブジュゥーマン、タチュケテ)』


 子犬の悲しい声をキャッチ。


「よっしゃ、待っててワン!」

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