第12話

〈場所は不明〉

〈時間も不明〉


俺は暗闇の中で起きた。

最後に経験したのが圧倒的な戦争の暗闇だから当たり前かもしれないが、せめて手の見える所で起きたかった。

窮屈な体制で動けない。首が変な角度で曲がっていて、変な圧力もかかっている。足の感覚がない。多分頭の上でぶらぶらしてるんだろう。

俺は箱の中に詰め込まれている。雑に。

やっと身体の痛みを感じ始めてきた。さっきから一秒ごとに弱い振動が箱を打撃している。揺れる度に頭痛が酷くなり、瞼を固く閉じなければならない。

ロボットは何処かへと歩いているようだ。

一時、目的地についたのかと思うぐらいに何も起こらなかったが、再び動き出した。だが、それもまた短く、動きは止まった。

今度は違う感じの移動が始まった。

最初は気付かない程度の遅い動きだったが、気付いた時にいつから動いているのか分からなくて怖かった。

そしたら突然の強い加速。

飛行機に乗った事はないが、多分それだ。

トイレに行きたい。

案外、痛みより心地悪さの方がきつい事をその時知った。

まだまだ続く。

水を飲みたい。

耐えられずおしっこを漏らした。

少し楽になる。

この箱の中に閉じ込められて、時間の乏しい進み具合に呆れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る