最終部第2話「黄昏は呼んでいるか」

 蛮族に占領された空中都市タージ。そこには星雪を完全に停止させるための魔法装置があるという。


 星雪による世界への影響を完全に止めるため、一行は再び黒い月の裏側を目指すことになる。


 聖戦士の末裔たるパルフェタ=ムールと”翠星の弓”キルキナエが揃っているため、飛空艇さえあればタージに辿り着くことは出来そうだが、状況に関する情報があまりにも足りない。


 一行は地方横断鉄道に乗車し、ラージャハ帝国からキングスレイ鉄鋼共和国へ向かうことになった。キングスレイの鉄道卿レイルロード、”マナタイトの魔女”キルケー=ランカスターの助力を受ける必要があると考えたためだ。


 ドーデン地方では、ブルライト地方と違い未だ星雪が降り続いている。鉄道の運行にも支障が生じており、予定の倍近い旅程を必要とするまでになっていた。魔動機術はともかくとして、屋外での魔法の使用はもはや発動すら覚束ない。


 グランドターミナル駅に降り立つと、すぐに賞金首を貼りだした掲示板が目に付いた。

 そこには、”金瞳の魔女”スノウ=フェリアの似顔絵と、彼女を討ち取ったものには莫大な報酬を約束する文面が書かれていた。


 キルケー=ランカスターは1年ぶりに会う”星月巡り”一行から星雪の情報を得る。彼女は対価としてドーデン地方の現況を説明した。


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「なるほど、地方ごとに調整弁があるのかい…今からタビットのコミュニティを洗って魔法装置の場所を突き止めるのは、すぐには難しいけれど、進めていくしかないわね」

「それでタージに行けば、大元から止められる可能性が高い、か」

「でも、イオが死んだ今、単にタージに行っても蛮族に袋叩きにされるだけ…ちょっと、あまり睨まないでおくれよ。あなた達の責任にするつもりはないわ」

「ああ、あの賞金首かい?」

「キングスレイの国家プロジェクトとして進めた以上、円滑な国家運営のためには議会が責任を免れるには誰かしらに犠牲になってもらわないと」

「先月訪問してきたランドールのエルヴィン王は、あの魔女の飛空艇を奪ってタージに行くとか、豪語してたわね…」

“マナタイトの魔女”キルケー=ランカスター

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 キングスレイ鉄鋼共和国保有の飛空艇を使用することは、現在の状況では議会の承認が下りないようだ。キルケーは個人で1隻のみ飛空艇を持つが、よほどの勝算がなければその船を危険に晒すことは出来ないという。


 先月ドーデン地方に現れた”勇者王”エルヴィン=クドリチュカは、数名の手下を引き連れて各国を回り、「当代一の魔動機士として著名な”金瞳の魔女”が、その正体は蛮族に通じていたレブナントで、世界を蛮族のものにするために人々を謀り、空中都市タージを明け渡した」という真偽織り交じった真実ものがたりを喧伝しているようであった。


 悪の魔女討つべしとの声を各地から挙げ、徐々に復旧しつつあった冒険者ギルドの情報ネットワークも利用しながら、”最後の聖戦士”オルエン=ルーチェの行方を追う作戦だ。


 キルケーは魔女討伐そのものにはそれほど積極的ではないが、オルエンの持つ飛空艇”逆十字リ=クロス号”が、タージを占領する蛮族との今後の外交に重要になるという認識ではエルヴィンと一致していた。


 そして、会談中に状況の変化が起こる。慌てふためく役人が、キルケーの下に重要な情報を運んできた。


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「たったいま、蛮族から書面による要求があったわ。4か月以内に首都キングスフォールを蛮族に明け渡し、人間は退去すべし。さもなくば冒険者ギルドの本部を滅ぼした対地巨大魔動砲を発射し、首都を灰燼に帰す。……ですって。署名者はアスタローシェ。”しろがねの姫”ね」

「ふん……政治は素人ね。これだから蛮族は」

「まず事実として、あれから1年。タージを占領した蛮族どもは、どこの街も攻撃しなかった」

「管理者として登録されていたイオーレ=ナゼルがいないから、全ての機能を使えるわけではないのでしょう」

「巨大魔動砲は発射実績が2回。奈落の壁の向こう側と、冒険者ギルドの本部。あいつらにとって一番邪魔なところに撃てばいいものを、1度は人のいない場所に撃って、それっきり」

「これは、魔動砲の発射にも何らかの制限があり、発射回数に制限があることが確実ね」

「そして、この頭の悪い砲艦外交。これは、理由はわからないけど『1度だけ魔動砲が撃てるようになった』とみて間違いないでしょう」

「2回以上撃てるのなら、こんな脅迫状を出す前に、どこか適当な小国家を滅ぼす方が効果が高いもの」

「そんな状態で、実現可能性の極めて低い要求を出してきた。ここから、『一度だけタージの魔動砲が撃てるようになった影響で、蛮族の指導層に何らかの政治的混乱が起こっている』という予想が可能ね」

「切り札とはね、最後まで取っておくという意図が露見した瞬間に、切り札ではなくなるものよ」

 ―”マナタイトの魔女”キルケー=ランカスター

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 わずか1枚の書状から、蛮族連合の足並みに乱れが生じていることを察知したキルケーは、ただちにオルエン=ルーチェへの接触を決意。"星月巡り"一行に、エルヴィン達よりも先に彼女の行き場所を突き止め、可能であれば懐柔または排除、それが無理であればせめて蛮族の政治的混乱の詳細な情報を入手してくることを依頼した。


 "終末の巨人"との戦いでオルエンが奈落の魔域に追放されたことを知ったキルケーは、巨人がスフバールからブルライトに転移した期間が1ヵ月ほどであったことから、まだ世界に戻ってきてさほど時間が経っていないと予測。

 オルエンの飛空艇を整備するための秘密ドックが、"埋もれた都市"サステイルの巨大遺跡の奥にあるという情報を開示した。これは、サステイル利権をキングスレイにもたらした褒美として、キルケーが建設を指示したものだ。


“星月巡り”一行は”埋もれた都市”サステイルへと向かった。情報に敏い者は既に、賞金首のスノウ=フェリアの居場所に関して、この遺跡の可能性が高いことを知っているのであろう。周囲には何組かの賞金稼ぎが出入りしていた。


 キルケーは秘密ドックの場所を正確に把握し伝えていたため、彼女の情報に従い他のグループに先んじて遺跡の奥深くへと進んでいく。


 はたして、”最後の聖戦士”オルエン=ルーチェは奈落の魔域から脱出後、飛空艇を回収してこの秘密ドックへ帰還しており、”星月巡り”一行は先んじて彼女と会談の時間を持つことに成功する。


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「おや、来客ね……しばらく」

「今更、何か用かしら。ハルーラを倒した恩を売りに来たのなら、必要ないわ」

“最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ

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“星月巡り”一行は、まずタージにおける彼女の凶行の理由を尋ねた。

 オルエンの真の目的は、巨人との戦いの折に確信した通り”聖女”ハルーラの解放であった。封印されていた巨人をもう一度現世に戻すためには、”忘れられた都市”タージの再起動が必要であった。


 300年前の《大破局》の折に、彼女は蛮族王ムーレイズと会談の場を持ち、蛮族が「最後のはじまりの剣イグニスを用いて、魔神王と戦う意思がある」ことを確認していた。魔神王と戦うためには奈落の壁の向こう側に行く必要があるため、オルエンは「巨人を倒す副産物として」再起動するタージを、蛮族に明け渡すことは当初から決めていた。


 聖戦士として戦っていた400年以上前、彼女はライフォスと「自分たちが守ったこの世界を在り残すこと」を約束しており、その約束を果たすためには蛮族が一定の勢力圏を維持し、はじまりの剣とその意味を伝える必要があると判断していたのだ。


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「人間には人間の事情があることは判っているわ」

「だけど、私のような端境にあるものナイトメアには、人間も蛮族も、さほど変わらないように見える」

「守護する剣と、根本的な思想が違い、互いに相容れないものであったとしても」

「それははじまりの剣の意思であって、私自身の意思ではないわ」

「私はいつだって、私の敵は私が決めると、誓ってきたから」

 ―“最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ

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 現在の状況が自身の目的を果たすために副次的に起こったものとしつつも、オルエンは最後のはじまりの剣を魔神王と戦うために用いるつもりが蛮族にあることも相まって、どちらかと言えば蛮族寄りの意見を示していた。

 ”星月巡り”一行は、人族を守護するはじまりの剣、前回の魔神王との戦いで失われたルミエルの復活を目指す者もいると訴えたが、魔神王との戦いで剣が砕けた瞬間を自身で目撃しているオルエンは、その復活の計画を無謀なものだと断じ、人族との論理で誅するのであれば、自分には戦う用意があるとした。


 だが、”星月巡り”一行の中でも、特に神官のルーヴは彼女と説得をもって相対したいと考えていた。


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「少なくともルーヴ達は、戦いたいわけじゃないんです」

「アルショニアで初めて会った時、オルエンさんは言ってました。『神官プリーストの関係者とは仲良くできない』って」

「神様にまつわる、たくさんの、信念にそぐわないものを見てきたからだと思います」

「巨人との戦いのとき『あなたと友達になりたい』と、ルーヴは言いました。それは、私が神官プリーストだからというだけで嫌われていたのが、納得出来なかったからです」

「人が人を理解できず、争い合う理由は、本当に色々あって、難しいです」

「人は言葉で理解し合うより、大きな力で言うことを聞かせる方が簡単で、楽だからだと思います」

「それでもどうか、信じてください。ルーヴたちは、あなたと戦うために来たのではないんだ、と」

「あなたの言葉をもっと知りたいし、ルーヴ達の言葉が届いてほしい…!」

 ―ルーヴ=デルタ=ヴォランティス

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 一行は蛮族がキングスレイに実現不可能な要求をしていることから、何らかの混乱が起こっている予測をオルエンに説明し、蛮族もいずれタージのコントロールが不可能になり魔神王との戦いに用いるどころではなくなる可能性が高い、と説得した。


 タージの管理者のルールをオルエンに確認したところ、イオーレ=ナゼルが死亡した結果、しかるべき手続きを踏めば新たな管理者を登録できるということであった。そして、蛮族はイオーレ=ナゼルが死亡していることをまだ知らないはずだ、という情報を受けた。


 一行は、この状況から取りうる最善の策として、オルエン自身が新たなタージの管理者となり、人族にも蛮族にも与さないよう再封印するという提案を出した。

 オルエンはその考えに一定の理解を示したが、人族のコミュニティはその結論を受け入れないだろうとして、エルヴィン王一行との対峙を示唆する。


 オルエンを巡る方針の合意形成が取れたところで、”星月巡り”一行に次いでその場に現れたのは、ランドールの”勇者王”エルヴィン=クドリチュカ達であった。そのメンバーの中にはハーヴェスで別れたきりの”白銀の戦乙女”クリスも含まれていた。エルヴィンは、「ルミエルを復活させる」という目的に賛同した仲間と共に迷宮とガーディアンを突破して、オルエンの持つ飛空艇・逆十字リ=クロス号を奪うためにやってきたのだ。


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「ルミエルの復活は無理だって言いたいんだろう?」

「確かに、俺も成し遂げる確信があるわけじゃない。希望を捨てなければいつか叶うなんて口では言っているが、この世界の運命とやらが、そんなに甘くないこともわかっているつもりだ」

「だがな、それでも俺は王なんだ。少なくとも俺のことを信じる奴くらいは、守ってやらないとな」

「そこの魔女が言うように、この世界が人族にとって既に都合の悪い黄昏の世界であっても」

「人は寄り集まって生きていかざるを得ない。例え創造主であっても、既に人の生き方は変えられないのさ!」

「その、人の怨念が矛先を求めている。世界の敵を倒す勇者の物語ってやつをな」

「今、生きるのが辛いのは、『誰かが悪い』から…心の弱い人間ほど、そんな『真実の物語』ってやつを求めがちだ。今、こうしてお前を追い詰めたのは、か弱い人間の怨念だ」

「だが、弱い人間に生きる価値も守る価値も認めないのは、人の社会足りえないと思っている」

「俺は俺の看板を下ろすつもりはない。やるというなら、相手になるぜ…!」

 ―”勇者王”エルヴィン=クドリチュカ

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 エルヴィンは、ルミエルを復活させるのは無理だという説得にも、「はじまりの剣を失った人族には希望となる目的が必要だ」と自分の主張を下げようとはしない。

 タージや終末の巨人に社会が蹂躙されたことの責任をオルエンや蛮族に被せることで、人の社会は団結を保つことが出来ると考えているため、オルエンの討伐を取りやめようともしない。

 彼には、たとえこの世界が人にとって都合の悪い黄昏の世界であっても、周囲の人々を守らなくて良い理由にはならないという確たる信念があった。


 だが、一行の説得に心が揺れる者もいた。


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「エルヴィン王、あなたはきっと正しいです。正しいと認められるものなんでしょう」

「でも、そうして次々と『世界の敵』を創り上げて打ち倒していく人の世界の未来は、果たして続いていくのでしょうか!?」

「私もかつて、救いたい人を救うために、罪のない人を殺してきました!世界の問題を、個人の責任に被せて!」

「そうして戦っていく内に、自分が醜くなっていく気がして…!」

 ―”白銀の戦乙女”クリス

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 "星月巡り"とエルヴィン王のそれぞれの一行は互いの立場を理解しながら話し合いを続けるも、戦いによってどちらの道を選び取るか決める、という方法をとるしかないという結論となった。


====ボス戦闘====

”勇者王”エルヴィン=クドリチュカ

“天翔ける流星”トゥーマ=ゼイル

“三星剣”アスカ=スリースターズ

“白銀の戦乙女”クリスティーナ=コーサル


 ※クリスは戦闘開始直後に戦線から離脱

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 エルヴィンは優れた武勇を誇る戦士であったが、”星月巡り”一行の実力も高く、戦いは一進一退の末、エルヴィンに膝を付かせることに成功する。



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「やれやれ、あれだけ啖呵切っておいてこれか。恰好悪いねぇ…」

「まあいい、約束は果たす。お前たちがタージを封印するために空に上がることを認めよう。俺たちはそれが上手く行くことを前提で動くとするよ」

「そうだな…一つ頼みがある」

こいつクリスを、お前らと一緒に空に連れて行ってやれないか」

「役に立つかはわからないが、彼女にはその権利があると思うんだよな」

 ―”勇者王”エルヴィン=クドリチュカ

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 戦いを経て、戦前の取り決め通りエルヴィン一行は引き下がった。


 魔女を討伐しようと迫る他のグループと接触して面倒ごとになる前に、ただちにタージに向かって飛空艇を起動する準備を整える。


“星月巡り”一行と、”最後の聖戦士”オルエン、”白銀の戦乙女”クリスは共に、黒い月の向こう側・空中都市タージへ足を踏み入れることになる。


 雲路の果てにあるものは最後の希望か、それとも…



 次回へ続く。



【今回の登場人物】

 セッション参加キャラクター

 ルーヴ=デルタ=ヴォランティス(プリースト11)

 マリア=エイヴァリー(フェンサー12)

 ライエル=クラージュ(ファイター11)

 パルフェタ=ムール(フェアリーテイマー11)




“最後の聖戦士”オルエン=ルーチェ 

 種族:ナイトメア 性別:女性 年齢:444歳


 第三部最終話「星雪の降る日」以来の登場。

 420年前、世界のルールによって生み出された魔神王と戦い、世界を救った聖戦士たちの最後の生き残り。

 魔神王を倒して100年ほどで《大破局》が起こり、タージと終末の巨人が封印された後に、かつての仲間・”聖女”ハルーラが巨人制御システムに取り込まれたことを知り、彼女を解放するために長い雌伏の時を経て、歴史の陰で暗躍してきた。

 聖戦士のひとり”勇者”ライフォスとは「この世界を在り残す」ことを約束していた。《大破局》を経て蛮族が魔神王と戦う意思があることを確認し、蛮族の王・ムーレイズと通じ、協力関係を結ぶ。

 その後は黒い噂の絶えない冒険者として活動する傍ら、"終末の巨人"の封印解除の鍵となる”忘れられた都市”タージを再起動させるため、蛮族の陣営に様々な情報を流し、便宜を図っていた。

“金瞳の魔女”スノウ=フェリアと名乗り、戦争を引き起こしてまで”埋もれた都市”サステイルの発掘に関わったのは、飛空艇を入手しタージに自分の権限で辿り着く必要があったため。

 自らと人族の社会にあらゆる犠牲を強いながらも、ハルーラを妄執から解放するという目的を達成した彼女であったが、その代償として人族の社会から世界の敵として追われることになる。

 空中都市タージの存在は人族・蛮族のどちらにも与するべきではなく、自身が新たな管理者として蛮族からタージを奪回し、再度封印するべきという"星月巡り"一行の説得に理解を示し、いっとき協力関係を結ぶことになった。

“星月巡り”一行と共に自らの飛空艇逆十字リ・クロス号に搭乗し、再び空中都市タージへと向かうことになる。



“マナタイトの魔女”キルケー=ランカスター (※公式NPC)

 種族:人間 性別:女性 年齢:50歳


 第二部最終話「遥か雲路の果て」以来の登場。

 キングスレイ鉄鋼共和国を代表する政治家の集合体、鉄道卿レイルロードのひとり。冒険者グループ”星月巡り”や聖戦士の末裔イオーレ=ナゼルを利用しながら、空中都市タージの利権を手に入れるべく暗躍していた。

 国家プロジェクトとして推進したタージ探索が失敗に終わり、自らの政治的ダメージを軽減するために”金瞳の魔女”スノウことオルエンの裏切りを公表し、飛空艇の入手を目指していた”勇者王”エルヴィンと政治的取引を元に世論誘導プロパガンダを行っていた。

 しかし、首都キングスフォールに届いた蛮族による砲艦外交の報せを一見し、蛮族の政治的混乱を予測すると、今度はエルヴィンを出し抜いてオルエンに接触しようとする生粋の政治センスの持ち主。

 過去にオルエンからもたらされた”埋もれた都市”サステイルの発掘事業利権と引き換えに、彼女の飛空艇を整備するための秘密ドックを建設する事業を行っており、その情報を”星月巡り”一行に流すことでオルエンと一行が早期に話し合いの場を持つための助けとなった。



“勇者王”エルヴィン=クドリチュカ (※公式NPC)

 種族:人間 性別:男性 年齢:45歳


 前回「シュプールに花束を」に引き続き登場。

 ランドール地方にある、まだ名前のない国の王。ランドール地方の平定、大陸統一の野心を持ち、やや利己主義で独善的なきらいはあるが、一方で一国の王として自らに従う者を守る気概と、人間の社会を維持するために自ら道を示し戦う実力とカリスマを持つ傑物。

 タージを蛮族に奪われたことの責任の所在と怨念の矛先を、タージ探索を主導していたキングスレイ鉄鋼共和国から逸らさせることを狙いに、”金瞳の魔女”スノウ=フェリアを人族の裏切者として喧伝し、彼女を討伐するためパーティーを組んで”埋もれた都市”サステイルに乗り込んできた。

 タージを蛮族から奪還して、自らの大陸統一の覇業と人族の平和を守るために利用する意思があり、オルエンの力と知識を利用してタージを再封印しようとする”星月巡り”一行と利害の対立が不可避となり、対決する。



“白銀の戦乙女”クリスティーナ=コーサル 

 種族:人間 性別:女性 年齢:16歳


 第三部第5話「メビウスをなぞる」以来の登場。

 聖戦士ティダンの末裔で”曙光の槌”クラウストルムの継承者。ハーヴェス内乱を終結させるために、タージに帰還する鍵だったはずのイオーレ=ナゼルの殺害に関与し、投獄されていた。

 ハーヴェス国王ヴァイスによる超法規的恩赦を経て”勇者王”エルヴィンに登用され、共にはじまりの剣ルミエルを復活させるための活動に参加していた。

 ルミエルの復活という題目には協力的であったが、”星月巡り”一行との戦いの折、「人族の社会を安定させるために個人を犠牲にする」やり方が、かつて自分のとった忌まわしき方法と同じだと気付かされ、自己嫌悪に陥った。一行へのかつての恩義もあったか、戦うのを止め、静観に回る。

 戦いの後はエルヴィンの推薦により、オルエンと共にタージに向かう一行に同行することになる。自らを取り巻いてきた様々な悲劇から、精神的に不安定になっている様子があり、心配されているが…





【次回予告】


 楽園に見放された人々は祈りを捧げる。


 自分たちを捨てた剣に代わる力に。空に輝く太陽の如き遺産に。


 たとえその力が、自らを煉獄の炎で焼こうとも。


 楽園を手に入れた運命の子は祈りを戴く。


 自分たちを虐げた月の種族の遺産にて。小さき地平の黎明と共に。


 たとえその力が、黄昏の闇に覆われることに気付かずとも。


 紛い物の絶望の光を、闇に塗れた希望は覆いつくせるのか。


 しろがねの姫は、天に在りて刃砥ぐ。


 ソード・ワールドRPG最終部第3話「偽りの太陽に祈りを」








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