第三部

第三部第1話「楽園の東より」

 ========


 夢を見ていた。不思議な夢だ。


 白い後光の射す円卓の広間に、10数名の男女が集まり議論を交わしている。中心となっているのは、輝く鎧に身を包んだ男性と、魔術師風のローブを着こなす男性の2名だ。


「くどい!君達の言うことは確かに正論だ。だが、その正論とやらが人々を救ってくれるのだろうか。愛すべき者たちが、助けを求めている。彼らを見捨てることなど、あって良いはずがない!」

「そう、我々も五千年前の”最初の戦い”の時はそう思っていた。だが、当時と今とでは状況が違う。人々は、我々が見守り庇護するだけの…1万年の夢を見るだけの存在で、本当に良いのだろうか」

「我々は所詮、はじまりの剣の意思と呪いから逃れることは出来まい。それで仕方ないと思う。あとは、その中で精一杯生きるのみだ」

「どうしても行くというのか…ライフォス」

「例え後世の彼らに背負わせることになったとしても、今は地上でもがく人々を助けたい」


 白いトーガを纏った青年が、立ち上がった。

「我が兄弟が地上に降りる決断をした。キルヒアの言うように、我々が正しき道にあるのかはわからぬ。だが地上で戦う人々を護り、世界の歪みを退ける意思ある剣の子は、我と共に前へ!」


 円卓に座る人々のうち、半数ほどが立ち上がったのが見える。

「諸君らの義侠に感謝する。残った皆々も、我らが去りし後の世を、どうか見守り給え!」


 円卓の主たちは消えるように去っていった。最後に残ったのは、魔術師風の男の直ぐ傍にいた、道化服の男性のみ。


 彼が、ゆっくりとこちらを向いた。


「やあ、見苦しいところをお見せしたね」

「君たちはこれから、僕らの後始末をして欲しい。えっ、何を勝手に?」

「そうだよね、そう思うよ。でも僕たちは自分勝手だからさ、君たちに頼む他ないんだ」

「具体的には、とりあえず僕らが使っていた神器を回収して欲しい」

「……たとえ、それを扱うにふさわしい後継者がいたとしても。奪い取ってでも、殺してでも、だ」

「それが、多くの怒りと悲しみを生むのはわかっている。だが、これは君たちにしかできないことなんだ」

「頼んだよ!」


 そうして君たちは、夢から覚める。ところで、あの道化服の男はどこか見覚えがあったような…


 ―セッション内描写より

 ==============


 目が覚めるとそこは、野外に急ごしらえで作られた鉄格子牢屋の中のようであった。


 周囲には蛮族がうろつき回っており、どうやらここは蛮族の戦陣のようだ。


 タージを脱出し、砲撃の余波で小型艇が墜落してからの記憶がない。


 牢屋の中にいるのはマリア、セルゲイ、バル、サフランの4人だけで、他の”星月巡り”のメンバーがどうなったのかもわからない。牢の見張りをしていたゴブリンが、慌ててどこかに報告に向かうのを目にした。


 程なくして、この軍団の長らしきバジリスクがやってきた。


「ヒャハハ、俺様はツイてるなぁ。お前らのこと、色んな奴らが捜していたからな」

「お前たち、タージに辿り着いた冒険者どもだろう?俺様は”橄欖石の”ラドンってモンだ」

「で……お前ら、この2か月もの間、どこへ行っていたんだ?」


 どうやら、タージを脱出してから2か月もの月日が経っていたようだ。もっとも、記憶がないといったことを話しても信じてもらえるようには思えなかった。


「チッ、訳がワカランな…まあいい、明日から一人ずつゆっくり可愛がってやるから、楽しみにしておくんだな!」


 拷問をちらつかせてラドンは去る。全員、後ろ手に縛られており脱出は難しい。思わぬ状況に途方に暮れていたが、翌日早朝に状況の変化が起こる。


 蛮族のキャンプを襲撃してきた者たちがいた。


 飛竜に乗った騎兵が数騎、上空から爆弾グレネードを投下し、陣地を爆撃している。下級の蛮族は右往左往し、戦場は攪乱状態にあった。


 竜騎兵のうち一騎が、一行が捕らえられている牢屋目掛けて混乱の隙に降下してきた。


 ======

「我々は”勇者王”エルヴィンの指揮下にある竜騎兵団です。主の命で、あなた達を探していました。私の竜には一人だけ乗せられます。あなた達の中にリーダーがいれば、一人は確実に助けられます。選べますか?」

「鉄格子の隙間から、縛めだけでも解いてくれ。脱出のポイントさえ示してもらえれば、俺たち4人で独自に脱出し、あんた達に合流できる」

「ここは蛮族のキャンプの真ん中です。丸腰に見えますが、可能ですか?」

「大丈夫だ。タビットの魔術師サフランは、自由になれば自分で発動体を生み出せるクリエイト・デバイス

「それに俺は、素手でも強いグラップラーだ

 ―竜騎兵とバルの会話より

 =======



 牢の鍵は竜騎兵が魔動機術ノッカー・ボムで解除し、一行は脱出した。混乱する蛮族たちの中でも、彼らの脱出を見咎めた者が戦いを挑んでくるが、バルの拳とサフランの魔法ファイア・ボールに沈められていった。


 脱出に成功した一行。指定された合流ポイントに行くと、そこにいたのは仲間のシアン=ノウフェイスと、堂々とした態度の壮年の男性であった。


 竜騎兵団を指揮し蛮族の拠点を襲撃したのは、”勇者王”エルヴィン=クドリチュカなる人物であった。かつて《大破局》を終結させた勇者エルヴィンの生まれ変わりを名乗る彼は、腹心の竜騎兵団長”天翔ける流星”トゥーマ=ゼイルと共に、彼らにこの数か月に世界で起こったことを掻い摘んで話す。


“星月巡り”一行がタージを脱出した後、記憶のない約2ヶ月の間に起こったことは、


 タージからの巨大魔導砲による対地砲撃によって冒険者ギルド本部は壊滅。

 奈落の壁の傍から、地を割るように巨大機動兵器”終末の巨人”が現れ、近郊にあった”悪徳の都”ヴァイスシティが一か月を待たずして壊滅。

“終末の巨人”を倒すため出撃したキングスレイ鉄鋼共和国の飛空艇団は全滅。


 という世界的危機であった。


 タージ探索はキングスレイ鉄鋼共和国による国家プロジェクトだったこともあり、探索チームに参加した後に行方不明になっていた”星月巡り”一行の消息は様々な勢力が探っていた。

 そこでランドール地方の新興国家の長であるエルヴィンが、「世界で唯一の、統制された竜騎兵の集団」の索敵能力を活かして、彼ら全員を探し当てることに成功したのであった。


 竜騎兵の騎獣の背に同乗し、彼らは蛮族の勢力圏を脱出。エルヴィンの居城へと帰還した。


「俺の陣営も人が増えてきた。そろそろここも手狭でね、新しい根城を探しているところだよ」


“勇者王”はかつて《大破局》を終結させた勇者の名を騙っているだけで生まれ変わりでも何でもないが、底知れぬ器を持つ傑物であろうことは感じられた。彼の元には在野の優秀な人間が数多く仕えており、エルヴィンはランドール地方の平定、引いては全大陸の統一国家樹立という夢を臆面もなく語った上で、”星月巡り”一行にも自分に力を貸すよう要請する。


 =====

「俺は、また面白い時代が来たと思うがね。この世界は随分長い間、魔法が支配してきた。はじまりは剣が創り出した世界ソード・ワールドだというのにな」

「こうしてまた、剣によって成り上がれる乱世が来たことに、ワクワクするね」

「俺の竜騎兵団は、この大陸唯一にして最強の兵科だ。時流に乗れば、大陸の統一だって不可能じゃないさ」

 ー”勇者王”エルヴィン=クドリチュカ

 =====


 窮地を救われた恩人からの申し出ではあったが、”星月巡り”一行はこの要請をやんわりと辞退した。中でも心根の優しいマリア=エイヴァリーは、自分たちの行動のせいでタージが蛮族の手に落ち、巨人とやらの跳梁で世界の危機を招いていることを気に病んでいた。


 エルヴィンは申し出を断られたことに憤慨、落胆したが、救出の交換条件としてひとつの任務を改めて一行に申し渡す。


「ランドールの玄関口、ハルシカ商協国のマティアーシュ評議長から、俺の竜騎兵団を頼りたい旨の連絡を受けている」

「だが、俺は出来ればこの話は断りたいと思っていてね…いま、”終末の巨人”はコルガナ地方から南下していて、ハルシカがルートに入る可能性がある。竜騎兵団に迎撃を依頼してくると踏んでいてな」

「巨人と戦う気がないのかって?もちろんその通りだ。竜騎兵は現状8騎しかない、貴重な俺の切り札だ。キングスレイの飛空艇団でも全滅するような化け物相手に、損耗させる気はないんだよ」

「俺の名代として竜騎兵団長のトゥーマと一緒にハルシカに行き、無茶な依頼をされるようなら上手く断っておいてくれ。お前らが出来そうな内容の依頼であれば、報酬を取ってこなしても構わんぜ。金払いは間違いないはずだ。内容によっては、悪くない話だろ?」


 こうして救出の恩を返す意味合いもあり、”星月巡り”一行は、竜騎兵トゥーマと共にハルシカに赴くことになった。


 ====

「私たちがこのような世界にしてしまったことに、思うところはないのですか?」

「別に…あなた達じゃなくても、誰かが同じことをしたかもしれないでしょう。『自分が別の行動をしていたら、もっと良い結果になったんじゃないか』と考えるのは、ある意味傲慢ではないですか」

 -セッション内、マリアとトゥーマの会話より

 ====


 といったやり取りから、彼は”星月巡り”に責任はないという考えを示す一方で、英雄の行動が全てを解決することには否定的でもあった。


 ハルシカ商協国の付近に到着したが、城塞都市ハルシカの周囲には大規模な難民キャンプの一帯が広がっていた。彼らは崩壊したヴァイスシティから遠路逃げ出してきた者たちだという。ハルシカは彼らを受け入れる態勢を見せないため、こうしたコミュニティが出来ているようだ。


 ====

「ハルシカは何故、彼らを受け入れないのですか?」

「それはそうでしょう。まず間違いなく蛮族や、もっとおぞましい者が人に化けて入り込むのが明らかだ。守りの剣は蛮族やアンデッドといった穢れた者を遠ざけてくれますが、人の目に見えない恐怖まで中和してはくれない。ましてや、巨人が自分たちを踏み潰すんじゃないかって状況では」

「長とは人が信じあえる社会を構築するのが役割なのに…ハーヴェスや、ユーシズではそう見えていましたから」

「それは、たまたま彼らが優秀なだけですよ。ましてやこのランドールは、蛮族もデーモンも多い」

 ―セッション内、マリアとトゥーマの会話より

 ====


 一方、難民キャンプを通り抜ける間、バルやセルゲイは妙な視線を感じていた。冒険者などこの状況では珍しくもないはずだが、どうもマリアが何らかの注目を受けているように思える。


 =======

「巫女さま、今日はお話してくれないの?あれ?」

「ねえねえお兄ちゃん、”巫女”って、誰のこと?」

「いつも色んなお話をしているエルフのお姉さん…あれー、似てるけど違うや」

「セルゲイ、こいつはどうにも妙だぞ」

「マリアに良く似たエルフの"巫女"ねえ…」

 ―セッション内、サフラン、バル、セルゲイの会話より

 =======


 エルヴィンの名代として、”星月巡り”一行は城塞都市ハルシカ内に招き入れられ、評議長マティアーシュと面会する。


 嫌な予感がしたためマリアとサフランは外し、セルゲイ、バル、トゥーマの3人での会談となった。


 ハルシカ商協国は、”終末の巨人”が自分たちを襲撃した折には城塞を活かした籠城戦を計画していた。しかし、現状難民キャンプが周囲を囲むように展開しており、物資の物流に支障をきたしている。彼らの一部が輸送中の物資に襲撃をかけ、強奪しているのだ。


 この状況を解決するために、マティアーシュ評議長が『竜騎兵団に依頼したいこと』とは難民キャンプの離散と鎮圧であった。それはつまり、直接的な表現としては難民の虐殺ということだ。マティアーシュは引き換えに莫大な報酬を用意している。


 難民は約1000人。トゥーマは、”星月巡り”が依頼に協力するのなら良し、しないのであれば、国元から増援の竜騎兵を呼んで実行するつもりだという。


 =====

「呼ぶのに時間はかかりますが竜騎兵数騎なら空から爆弾グレネードを落とせば安全に可能な仕事です。そりゃあ道義的に良い手だとは言いませんが、他人の選択にどうこう物申すほど偉いつもりもありませんしね。別に…あなた達にまで手を汚せとまでは言いませんよ」

“天翔ける流星”トゥーマ=ゼイル

 ======


 一行は合流して善後策を検討する。マティアーシュ評議長の計画も、竜騎兵トゥーマの実行も、説得などによって思いとどまらせるのは困難なように思える。

 難民たちが物資を城塞内に入れるまで邪魔しないのであれば、虐殺を止められる可能性がある。

 が、サフランとマリアのキャンプ調査の印象では、自分たちを受け入れないハルシカに対して難民たちは相当な不満を溜めており、とても言うことを聞きそうには思えない。


 キャンプで噂になる”マリアに似たエルフの巫女”とやらは、慈善活動のように難民たちに施しを与えて信用を得る一方、彼らの不満を煽りハルシカとの争いの火種を撒くアジテーターとして活動している様子であった。


 様々な策を協議したが、最終的に「マリアが”巫女”の振りをして、難民たちにハルシカ側との融和や協力を呼びかけることで難民を落ち着かせ、為政者側に虐殺を抑制させる」という方針となった。


 ======

「”巫女”は私の生き別れの姉の可能性があります。姉さんは、私よりずっと優秀な人だった。対抗されて勝ち目はあるでしょうか…」

「そんな心配はするだけ無駄だ。お前が出来なきゃもっと酷い結果になるだけさ。やれるやれないじゃない、お前がやるしかないんだよ」

 ―マリアとセルゲイの会話より

 =======


“星月巡り”一行は仕掛けを整える。難民キャンプに炊き出しを提供しつつ、事前の聞き込みで入手していた情報をもとにマリアを”巫女”に変装させた。


 マリアは難民たちに、落ち着きを取り戻し来るべき状況に皆で協力しよう、不満を持つのは理解するが、とはいえハルシカと敵対することは却って自分たちを苦しめる、と演説し、民衆の慰撫に努める。


 この演説は民衆を煽るアジテーターの犯人を誘き寄せる策も兼ねており、その策は成功した。マリア達の元にもう一人の巫女が姿を現した。


 アジテーターの正体は、はたして生き別れたはずのマリアの姉、ヘラであった。

 

 しかしヘラはマリアのことを覚えていない様子であった。


 ========

「ん、お前は誰だ。マリア?知らないな…」

「ほう、クエルヴの災いとはお前たちのことか。シモンも何度か世話になったようだ」

「我々は人に救いを、地に平穏を与えているのさ…魔神とはお前たち神の走狗が言う悪魔などではない。この世界に必然として存在する装置のようなものだ」

「破滅が目の前に迫ろうとも、目の前の現実を受けいれず利己的な保身に走る愚かな人ども。世界の平衡を保つことを忘れ神々の狗として義務を果たさぬ者には、世界の罰が下るだろう!」

 ―”魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリー

 =========


 ヘラは《コール・デーモン》の魔法で強力な魔神を召喚し、一行と対決する。


 ====ボス戦闘====

 ”魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリー

 ゴードベル


 以下、ヘラが《コール・デーモン》の魔法で順に召喚

 ルンゼマーゼ

 ケルベロス

 マハティガ

 ============


 混乱の極みの中、周囲の難民に阻まれヘラの元にはなかなか辿り着けない。

 彼女は魔法で次々と強力なデーモンを召喚する。

 ”星月巡り”一行だけでは抑えきれないデーモンが力なき難民に襲い掛かろうとするが、それを阻止して魔神と戦う者が助けに入った。


 ==========

 セッション内描写より


 白いクロークを深く被った小柄な人影が、魔神と人々の間に割って入る。腰から下げた片手用の朽ちたメイスを取り出すと、彼女は凛とした調子でこう言った。


「定められし力を解き放て。汝は”曙光の槌クラウストルム”、世界に、秩序をもたらすものなり!」


 そしてクロークの下から現れたのは、まだ少女と言っていい、短い金髪に細い唇が印象的な女性だ。


 いや、あなた達は彼女を知っている。知っているが、2年以上前に出会ったあの頃の彼女は、まだ力なき村娘だったはずだ。


「”星月巡り”の皆さん、本当にお久しぶりです。今度は、私があなた方を助ける番です!」

 ―”白銀の戦乙女”クリス

 ==========


 かつて星月巡りに助けられた隠れ里の村娘・クリスが、聖戦士の神器クラウストルムを携えて参戦。さらにヘラはマリアが重ねた説得により、精神のバランスを崩した様子を見せながら《エスケープ》の魔法で撤退。


 残った魔神は合流した竜騎兵トゥーマと共に討ち取った。


 難民の不穏分子を取り除いたことでハルシカ側への交渉材料が出来、一触即発の状況を緩和することが出来た。


 さらに、ハルシカへ向かっていたと思われた”終末の巨人”は何故か針路を変え、東のウルシラ地方に向かったことが、増援に来た竜騎兵の偵察でわかった。


 クリスはこれを、聖戦士の神器の継承者であれば、オーブレイが造った機動兵器の安全装置が働くのではないかと推察した。


「もしかすると、巨人は聖戦士の武器の継承者とは戦えないのかもしれません。オーブレイが造り出した兵器です、安全装置のようなものがあるのかも…」


 ウルシラ地方を救うため、一行はクリスと共にアヴァルフ妖精連邦へと向かうことにする。そこはパルフェタ=ムールの故郷であり、聖戦士のひとり"弓使い"ダリオンが手に取った”翠星の弓”キルキナエがあるはずだ。”終末の巨人”に対抗出来るかもしれない。


 果たして聖戦士ならば終末の巨人を止められるのか。希望と不安が交錯する中、一行は東へと向かう。


 次回へ続く。



【今回の登場人物】

 セッション参加キャラクター

 マリア=エイヴァリー(フェアリーテイマー8)

 バル=カソス(グラップラー9)

 セルゲイ=ゲラシモア(アルケミスト9)

 サフラン(ソーサラー9)




“白金の戦乙女”クリスティーナ=コーサル 

 種族:人間 性別:女性 年齢:16歳


 愛称クリス。第一部第2話「緋色の魔の手」で初登場。

 かつてタージの起動キーを守り伝えていた隠れ里の村長の孫で、聖戦士のひとり"白騎士"ティダンの末裔。隠れ里はアスタローシェによって滅ぼされたが、星月巡り一行に救出された彼女はハーヴェスのレイラ=シャイターン伯爵夫人の下に保護され、戦士及び魔術師としての英才教育を受けていた。約1年後、数人の仲間と共に自分の祖先が使っていた伝説の神器”曙光の槌”クラウストルムを探索する冒険に旅立ち、神器を入手しその力を引き出すことに成功している。

 レイラの許可を得て期限を定めながら諸国の視察をしており、かつて世界を救った聖戦士の末裔として、世界の危機に立ち向かう覚悟を固めている。

 力なき村娘であった頃の自分の命を救ってくれた”星月巡り”の一行に強い恩義を感じており、ハーヴェス帰国までの間、同行することを申し出た。

 なお、彼女によれば出国との入れ違いで、タージを脱出したシン=シャイターン伯爵と記憶を失ったイオーレ=ナゼルの2名がハーヴェス王国に帰り着いたらしい。




“勇者王”エルヴィン=クドリチュカ(※公式NPC)

 種族:人間 性別:男性 年齢:41歳


 ランドール地方にある鮮血海に浮かぶ小島を根城とする、まだ名前すらない新興国の王。《大破局》を終結させた伝説の勇者の生まれ変わりを名乗り、ランドール地方の平定と、その先にある大陸の統一を目指している。

 彼は勇者エルヴィンの生まれ変わりなどではなく、単に名を僭称しているだけではある。だがそのカリスマと実力と野心は本物であり、大陸最強の兵科”竜騎兵団”を力の源泉としつつ、戦乱の世でチャンスを掴まんと邁進している。

 タージを脱出して蛮族に捕らわれていた”星月巡り”一行を救出し、自らの覇道に力を貸すよう要請した。拒否はされたが、この崩壊しつつある世界で、図らずもその状況を作ってしまった当事者達は役割を心得るべきだと説く。



“天翔ける流星”トゥーマ=ゼイル 

 種族:人間 性別:男性 年齢:25歳


 ランドール地方を中心に勢力を伸ばす”勇者王”エルヴィンの腹心にして、エルヴィンの力の源泉である大陸唯一の竜騎兵団の団長。かつては冒険者であったがエルヴィンに登用された。一見は線細く礼儀正しい青年。丁寧な物腰ではあるが、どこか厭世的な雰囲気をまとう。

 ハルシカ国から難民キャンプを襲撃して難民を虐殺するという依頼を請けており、実行に移そうとしていたが、マリア達のはたらきにより、汚れ仕事に手を染めずに済んだ。

 彼が騎乗する飛竜シャミィは、かつて魔神王と戦った聖戦士のひとり”竜騎士”ノヴァの愛竜、"竜姫の牙"カルフの子供。カルフを通してノヴァの取り巻きと人間との間に争いがあったこと、それを厭うカルフは”天空の槍”グングニルと共に人間の前から姿を消したことを知っている。


“魔王の巫女”ヘラ=エイヴァリー 

 種族:エルフ 性別:女性 年齢:106歳


 人里離れた宗教コミュニティで育てられた、マリア=エイヴァリーの姉。

《大破局》の折に魔神に味方した人間、”魔王”ゼガンの知識と経験を継いでいるとされ、魔神を「世界を正常に戻すための機構」とし、人間を「世界を維持する義務を放棄した神々の狗」と蔑んでいる。

 終末の巨人の跳梁によって発生したヴァイスシティの難民の不満と不安を演説によって煽っていたが、容姿の良く似たマリアの真摯な演説により民衆の混乱を中和される。魔神を召喚し難民を皆殺しにしようとするが、マリアが説得したところ精神に変調をきたし、《エスケープ》の魔法で撤退する。

 マリアの記憶の中では、自分の前では優しい姉で、マリアは魔法の基礎を彼女から学んでいる。精神が不安定になったのは、マリアに何らかの原因があるようだが…


 "終末の巨人"


 聖戦士のひとり”賢者”オーブレイがタージと共に作り上げた巨大機動兵器。

 魔導機文明で製作されたコロッサスの中でも群を抜いて巨大かつ強力で、戦略兵器として特化している。

 タージと並ぶ、オーブレイの最大の遺産の一つであり、魔神王との戦いで活躍。その後の世代は蛮族の制圧のために使用したようであった。

 《大破局》を終結させるために封印されるが、タージの再起動と共に復活。

 自律的に破壊を振り撒くように行動しており、近郊にあった悪徳の都ヴァイスシティを壊滅させ、コルガナ地方からランドール地方へと南下していった。

 対空、対地共に恐るべき制圧能力を有し、キングスレイ鉄鋼共和国の航空戦力である飛空艇団を全滅させ、勇者王エルヴィンの抱える竜騎兵団でも絶対に勝てないと言わしめている。

 ハルシカ商協国へのルートを通っていたが何故か外れ、東のウルシラ地方へと向かっている。”白銀の戦乙女”クリスは、オーブレイが創ったものである以上、タージには継承者しか入れないことと同様、巨人には神器の継承者は襲えないなどの何らかの安全装置があるのではないかと推測している。




【次回予告】

 世界を救った英雄のその後を、誰が顧みたというのか。


 世界を救うための力は、世界の敵に対してのみ振るわれると、誰が信じたのか。


 世界の地均しを進める巨人に対抗するため訪れたのは、


 聖戦士の末裔が護る国、アヴァルフ妖精諸王国連邦。


 そこで彼らが目にするものは、不都合な伝説と歪んだ闇。


 太陽の影に隠れるかのように故郷を追われた陰月の姫は、自らの運命を裁くことが出来るのか。


 心せよ。闇は光を呑み込むが、影は常に光と共にあらん。


 ソード・ワールドRPG第三部第2話「白日と青月」


 冒険者達よ、剣の加護は汝と共に。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る