マーベリクス! 〜問題児たちが男女混合バスケで全国優勝するまでの話〜

榊原 計

第1話 集められし問題児たち①



片田舎までとは行かないが、田んぼに囲まれた地に建っている私立桜坂おうさか高校。

名前にもある通り校門までの一本道は坂になっており、両脇には桜の木が並んでいる。

少子高齢化も相まって年々生徒の数は減少し、現在全校生徒の数は200人ほど。

かつては1000人以上いたことを考えると5分の1にまでなり、使われない空き教室が目立っていた。


そして、ここは桜坂高校の生徒会室。


「このままでは、やっぱり……」


生徒会長を務める3年の桜庭さくらば京子きょうこはとある書類を見て、険しい表情を浮かべた。


「なんとか、しなければならないわね」







桜坂高校の体育館。

放課後のこの時間は本来、バレー部が活動しているのだが今日はいない。

この静寂な体育館に男女合わせて5人の生徒が集められていた。


「何で俺らはこんなところに呼び出されたんだ?」


ゲーム機片手に周りを見渡しているのは鳥塚とりつか隼人はやと


「鳥塚、お前はホントいつもゲームしてるよな」


隼人に話しかけた大柄で体格のいい男は武田たけだ徹二てつじ


「そういうキミこそなんでバレーボール持ってるんだい?」


そう言いながら髪の毛を櫛で整えている好青年風なイケメン速水はやみ康太こうた


「なんであたしがあんたたちみたいな問題児たちと一緒に呼ばれなきゃならないのかしら」


そう愚痴るのはポニテールで女性の中でも長身でスタイルの良いクールビューティな高坂こうさかかなえ


「………」


今のところ一度も口を開いておらず、女性の中でも低身長で幼い顔立ちで見た目小学生な姫宮ひめみや小春こはる


「俺からすれば高坂も問題児だけどな」


隼人はゲームしながらボソッと言い放った。


「そうなだねぇ」


「たしかにテストで点数取ればいいんだろって授業も出ないし、行事にも参加しないあたり問題児だわな」


他男2人も追随した。


「学校でゲームしたり、色んな女子に手を出したり、なぜかバレーボールで気絶者を出した人たちに比べればマシだわ。それに行事は強制参加じゃないもの」


「……友達がいないんだな」


「鳥塚、あんたに言われたくないわよ」


「ボクもその辺りをつっこまれたくはないかな」


「ハッハッハ、オレはダチ多いぞ!」


そして、静寂が訪れた。


ガラガラガラ


体育館の扉を開けて現れたのは生徒会長の桜庭京子だ。


「揃ってるようね。全員集まってるようで何よりだわ」


「仕方なくだ。生徒会長ともあろうお方が脅すのは良くないんじゃないか?」


隼人は京子に呆れた視線を送った。


「それはあなたが問題児だから脅されるようなことになるんです。このことは他の皆さんにも言えることですけどね」


それぞれ生徒会長から目線を外す。


「さて、皆さんはどうして呼ばれたのか知りたいですよね?」


「前置きはいいですから、本題を」


「分かりました。鳥塚君の言う通り、早速本題に入りましょう」


一呼吸置いて、京子は言った。


「この学校を守るためにバスケをしてもらいます」


5人はほぼ同時に首を傾げた。

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