第36話 ペンキの量は右に、面積は上に

 前に出ると、やっぱりドキドキしている。

ちょっと怖い。

そう思いながら、みんなを見た。

多くの子が、優しい目をして俺を見ている。

笑顔の子もいる。

「偉いぞ、翔平!」

と声をかけてくれたのは、本間君だ。

俺の発表を温かく聞こうとしてくれているようだ。

怖さに負けず、発表してみようと思ってよかった。

みんなを信用してよかったと思った。

 すると、急に強気になってしまった。

にっこり笑顔になり、

「俺はさあ、ペンキが右に増えたじゃん。」

と言ってみんなを見た。

みんなは頷いている。

よし!通じていると感じた。

「塗れたへいは、1,2と上に行ったでしょ。

だから、また上に3,4と行くと思ったんだ。」

そう言って、みんなを見た。

口をへの字に曲げて頷いている子もいる。

「修平君は、そう考えたんだ。」

と弓子さんは呟いてくれた。

みんなの様子から、俺のやり方はわかってくれたけど、みんなとは違うようだ。

これからどうなるんだろうと思った時、先生が、

「ペンキの増える方向とへいの塗れる面積が増える方向が違うということだね。」

とまとめた。

その上で、首をかしげている稲森さんを指名して、

「修平さんのわかった?」

と聞き、頷くのを確認した。

「みんなもいい?」

と全員に確認してから、

「稲森さんは、どんな図が良いと思ったの?」

と問いかけた。

稲森さんが出てこようとした時、

「修平さんは、席で稲森さんの発表を聴こう。」

と着席を勧めてくれた。

俺は、何か、ほっとしながら席に着いた。

稲森さんの発表が始まった。

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