爆破予告

第22話 爆破予告

「ここもだめかあ~…」


 市民プールの入り口には大きく、「立ち入り禁止」の文字が並んでいる。

 わたしとヨッシーはプールバッグを下ろし、へたり込んでしまった。


 街中の遊び場が封鎖されてから1週間だ。わたしたちは封鎖されていない遊び場を街中探し回っていた。


 お母さんやお父さんの話を盗み聞きしたところ、最近いろんな施設や場所に「爆破予告」の手紙が届いているらしい。しかも、それは〇月〇日〇時というものではなく、「近々」とか「1週間以内に」といったあいまいなものばかりで、時には「気が向いたら」「ぼちぼち」などふざけたものも混じっているという。


 しかし、「爆破予告」がきているからには、どこの施設もお休みにして警察による厳重警備をしかないといけないようで、近頃はどこに行っても「臨時休館」だとか「立ち入り禁止」の文字が並んでいる。


 近所の公園、ゲームセンター、少し遠くの公園、図書館…わたしとヨッシーの敗北記録に市民プールが追加されたことでわたしたちは相当腹をたてていた。


 こんな事件、MAMが解決するしかない!


 意気込んで塾に向かうと、塾の入り口にも目を疑う張り紙が貼ってあった。

『爆破予告により、当分お休みです。居残りもありません。』


 まさか塾も爆破予告を受けたっていうのか?でもそれなら、MAMの『居残り』で解決すればいいのに、なんで居残りもダメなんだろう。


 わたしとヨッシーがそんなことについてしゃべっていると、張り紙の張ってある扉がガラと少しだけ開いた。

「あ、ダイチくん!」

 わたしがそういうと、ダイチくんは人差し指を立て、しーっというジェスチャーをした後、きょろきょろと周りにだれもいない事を確認してからわたしたちを中に入れた。


「ふー…、お休みって書いてあるのに生徒を入れているのを見られたら他の生徒に示しがつかんからな。」


「ねえ、ダイチくん、居残りもなしってどういうこと!?」


「待て待て、2人を中に入れたのはそのことなんだ。」


 そういうとダイチくんはわたしたちに座るように促した。


「今街中で話題になってる爆破予告なんだが、ボスが言うには、今回の件は大きな事件でもあるし、警察内でどうにかするそうだ。まあ、つまり俺たちは手を出すなってことだな。」


「そんな…。」ヨッシーがつぶやく。


「だって、みんなせっかくの夏休みなのに遊ぶ場所もないんだよ?それに塾までお休みになっちゃって…。わたしたちでどうにかしようよ!」


 わたしが興奮して立ち上がる。


「でも、まだ俺たちは子どもなんだ。それに俺たちMAMが犯人を追ってるって知ったらどうなる?塾を爆破するだけじゃすまないかもしれない…。だから・・・」


 わたしとヨッシーがきっとダイチくんをにらみつけた時、ダイチくんは、にかっと笑ってこういった。

「ばれないようにやろう…!」


 ダイチくんは机の上にあった2台のスマホを私とヨッシーにそれぞれ渡した。

「これは、前に言ってたスマホ型トランシーバーだ。近くにいて、急ぎの用だったら、このボタンを押して話すだけで、電波が受信できる範囲にいるMAM社員には全部声が聞こえる。そして、MAM社員同士なら電話もメールもチャットもできるようになっている。そう、両方の機能を併せ持っている名付けて”スマホーバー”だ!」


 塾に静寂が広がった。ダイチくんのネーミングセンスって…ときっとわたしとヨッシーは同じことを思っていたが、ダイチくんはそんなことを気にせずに、それぞれの”スマホーバー”に「がんばったで章」というシールを張った。


 そして家族にばれるといけないから、塾でもらったスマホのおもちゃの景品ということにしとけ、と言った。


 うんとうなずき、わたしはダイチくんの「ばれないようにやろう…!」という言葉を思い出していた。今までのように表立ってみんなであつまることはできないけど、絶対にこの事件を解決してやる。

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