第37話 魔王なのにナンパができないはずがない 4

「オリヴィアさん!」


 俺の呼びかけに、オリヴィアさんは振り返った。

 緊張するが、彼女の微笑みに励まされるように口を開く。


「よろしければ、お茶でもどうですか?」


 初めてよりだいぶマシになった俺の誘いに、しかしオリヴィアさんは困った表情で首を傾げた。


「ごめんなさい、子供が待っているので」


 子供がいる、だと!?

 

「あ、ああ、それなら全然……」


 返事は口が動くままに任せて、俺はぼんやりと考えていた。


 子供がいるってことは旦那もいるってことだよな。

 結婚してたのか…………。

 いつ地下書庫に行っても優しく迎えてくれるから、勝手に一人暮らしだと思いこんでいたが、そんな証拠はない。

 

 それに、彼女ほどの美人なら夫の一人や二人いてもおかしくない、というかいて当然だろう。


 俺は打ちのめされて、ナンパを続ける気力がなくなった。

 そもそも魔王なのになんでナンパなんかしてるんだ。

 ただ、こんな時間に帰っても、ジュディに馬鹿にされるだけ。

 

 仕方なく俺は、立て看板を召喚して、地面に突き刺してその脇で眠りに落ちた。




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