第31話 (ジュディではなく)俺の配下

 このままだと、いよいよ俺はロリコンだという噂が信憑性を帯びてしまう。


「もう手遅れですよ」

「これはな、ハンデだよ」


 ジュディの言葉は当然無視して、俺は思い浮かんだ言い訳を述べる。

 今とっさに考えたにしては、なかなかいいだろう。


「ッッ! ふざけてんのか!」


 ガーライルは怒るが、問題ない。


 結界は手間をかけたおかげで、ちゃんと機能するようだ。

 それだけ確かめてから、俺はガーライルに向き直る。


「よし、来いよ」

 相手のレベルを見たい、ということもあり、先手は譲る。

 狙い通りぶち切れた相手は、重そうなハンマーを振り回して襲いかかってきた。

 身体強化バージョンの俺より筋力はあるようだが、俊敏性など他の点ではだいたい勝っている。


 俺は余裕を持って攻撃を避け続ける。

 かすりもしないことに苛立ったか、ガーライルの攻撃はさらに大振りになる。

 ――仮にも親父の配下なら、もうちょい強いはずなんだがな。

 

 まだ手の内を隠している可能性を考えて、簡単には攻撃に移らない。

 が、いつまでも経っても状況が変わらない。


「チッ、ちょこまかと」

爆発エクスプロージョン

 やべっ。

 強さミスった。


 轟音が響き、煙が晴れた頃にはガーライルの体は跡形もなく消え去っていた。

 魔力反応もないから、逃げたわけでもない。


 ……殺しちまったか?

 俺がビビったその時――


「死ねぇぇぇえええぇぇぇぇえぇぇ!」

 背後に魔力反応が生じた。


 咄嗟に反応し、跳んで避ける。

 俺の体があった場所を、ハンマーが通り過ぎていった。

 直撃したら骨の一つくらい折れていたかもしれない。

 危なかった。

 

「な、これを避けるだと!?」


 ガーライルがやけに驚いた顔でこちらを見る。

 あれくらいは俺だって避けられる。

 魔力が反応しちゃっているのだから。


「お前今死んでたよな?」

「フ、フン、聞いて驚け! 我は不死身なのだ!」


 なるほど、”不死身”のガーライルとは、比喩ではなく本当にそうだったらしい。

 そういう特性を持っているのであれば、多少弱くても、親父に認められておかしくない。

 そして、俺にとってもありがたい。


「じゃあ手加減しなくていいな。爆発エクスプロージョン

「復活!」

爆発エクスプロージョン

「ふ、ふ――

爆発エクスプロージョン

「……――

爆発エクスプロージョン


 次に煙が晴れたとき、ガーライルは土下座していた。


「それもなにかの作戦か?」

「参りました!」

 

 いくらなんでも弱すぎではないだろうか。

 先程までの大口はどこに行ったのか。


「不死身なんだろ? 諦めずにかかってきたら傷くらいはつけられるんじゃないか?」

 

 なぜ敵を励ましているのだろう、と思わなくもないが、しかしこのまま終わってはあまりにあっけなさすぎる。


「実は五分で十回までしか死ねないのです」


 なるほど、制限があったらしい。

 たしかに無制限に生き返れたら、パワーバランスが崩壊するか。

 魔界四将軍あたりを基準にして考えると、どうも判断がおかしくなる。


「じゃあ俺の配下になる、と」

「はっ! 強ければ何でもいいのです!」


 魔王城にすらなかなかいないシンプルすぎる考え方だな。

 速攻で裏切ってミシェルとかにつかれそうだ。

 まあ、ジュディに取られないだけまだマシか。


 俺は周囲を見回して騎士を見つけ、手招きした。


「こいつは騎士団ででも鍛えておいてくれ。ガーライル、騎士団のやつらに迷惑かけるなよ!」

「はっ!」


 忠誠心のほどは不明だが、とりあえず俺の配下が一人手に入った。

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