第22話 本当に主従関係は逆転していないのか 2

 楽しそうに話していたジュディが、唇を尖らせて俺の方を向く。


「なんですかコミュ障さん」

「…………………………」

 

 泣いていいかな。

 人の傷口を抉ることが本当に上手いし好きなやつだ……。


「冗談ですよ、ちょっとコミュニケーションが苦手な魔王さん。まったく、冗談を真面目に受け取ってそんなに傷つかないでほしいですね」

「俺としては、笑えない冗談は言わないでほしいですね」


 そもそも彼女、召喚されてきたときに面白くない冗談は言わないと言ってなかったけな。


「私が笑えればいいんですよ」

 

 今の(俺の心が)凍りつくジョークのどこが笑えたんだろう。


「だって、コミュ障の魔王とか面白いじゃないですか。コ、コミュ障の魔王なんて……プフッ」

「こいつ一番人が気にしてることをあげつらって笑いやがった! 人格最悪だな……」

「私は魔王城にふさわしくあろうと努力しているんですよ。魔王といったら悪の代名詞でしょう?」

「それならもうちょい魔王を敬わない?」

「ああ言えばこういう男ですね。取って代わってやりましょうか」

「俺が悪かったからやめてくれ」


 魔王の冠はあちらにあるから、万に一つの間違いがないとは言い切れない。

 というか、今日の配下たちの様子を見ると反乱が革命になる確率は2分の1くらいありそうだ。

 ほんと俺なんで年の差十六倍の少女に心を惑わせちゃったんだろう。


「ほら、案内してくださいよ」


 自分が話し込んでたくせに、と思わなくもないが、俺は黙って従う。


「ほら、入れよ」

「この門、魔法で開かないんですか?」


 俺が門を押し開けたのを見て、ジュディが首を傾げる。

 魔王の部屋が、魔法で自動的に開くと色々困ると思うんだよな。


「たしかにそれはそうですね。じゃあ私が出入りするときは……」

「俺に任せな! いつでも開けてやっからよ」

「わあ、ありがとうございます」


 俺の部屋だからいつでも開けられても困るんだけどなあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る