第15話 サメ狩り3


 おのれ!

 海を泳ぐ俺は悔しさで歯噛みする。

 元々泳ぐのは苦手だったが、皆より遅すぎる。

 今の俺は日本代表の競泳選手と同程度だろう。

 やはり最近怠け過ぎたか。



 ならせめて討伐数では負けない!

 俺は前方に見えてきたサメの魚群を見据える。

 たかがサメ如き、この天才の敵ではない!

 4mほどのサメがこちらに気付き、突進してくる。



 バカめ! 動きが単調すぎるぞ。

 俺はサメの動きを見切り、紙一重で突進を回避し、すれ違いざまにナイフをお見舞いする。

 オリハルコン製ナイフの切れ味は抜群で、豆腐のようにサメを捌く。

 切れ味が良すぎて逆に怖いくらいだ。



 俺に切られたサメは血を撒き散らして暴れ狂う。

 わざと止めを刺さず、大出血させたのだ。

 サメは血に敏感で、苦し気に暴れるものを狙う習性がある。

 その習性を利用し、サメに向こうから来てもらうのだ。



 予想通り、瀕死のサメに他のサメが群がる。

 死にかけで暴れるサメに食いついた瞬間、俺は背後から飛びかかり、手早く解体していく。

 俺のナイフが煌めく度に、致命傷を受けたサメが暴れ狂い、他のサメに喰われる。

 そしてそのサメを俺が襲う。

 これの繰り返しだ。



 俺はみんなに比べれば、身体能力が低い。

 毒島みたいに岩を素手で砕けないし、服部みたいに分身の術も使えない。

 だが俺にはこの天才的な頭脳がある!

 足りない身体能力は頭脳でカバーだ。

 俺は黙々とサメを狩り続けた。





 ちょうど20匹目を狩り終えた時、周囲を見るとサメはほとんどいなくなっていた。

 クラスの皆も順調に狩り続けているようで、

 海の底の方にサメの死体が山のように積まれている。

 サメ愛好家の人が見たら卒倒しそうな光景だ。



 小物は全て倒せたようだ。

 メガロドンもどきはどうなったのか。

 俺は海面へと浮上する。

 2分ほど息を止められるが、さすがの俺も無呼吸運動は40秒が限界だ。

 そろそろ酸素を吸いたい。



 海面へと顔を出して、大きく息をする。

 呼吸を整えて周囲を見渡すが、メガロドンもどきは見当たらない。

 その時だった。


「リーダー!」


「服部か」



 後ろに伊賀と甲賀を連れた服部が水面を歩いて近づいてきた。

 たしか水蜘蛛の術というもので、水面を歩けるらしい。

 分身の術といい、いつ見ても不思議だ。

 どういう原理なのか、この天才でも分からん。



「リーダー。浦島の狩りはもう終わったみたいだ」


「さすが浦島だ。それで怪我人は?」


「誰もいないぞ。今、毒島たちがお化けサメを陸に引っ張ってる。

 どうせだし昼御飯はサメにしたいらしい」



 今日の昼飯はサメ料理か。

 でもサメを使った料理ってカマボコとフカヒレ位しか知らないな。

 念のため、他の食材も調達していくか。

 浜辺でご飯、楽しみだな。

 これでシュリ達が水着を着てくれたら最高なんだが……。

 まぁ、それは後で考えよう。

 まだ水着を作成していないのだ。

 ビキニ水着が完成したらぜひ着てもらうとしよう!



「よし、じゃあ引き上げようか!

 俺は海中のみんなを呼んでくる。適当に食えそうな物を調達していくから、服部たちははぐれた仲間がいないかチェックしてくれ」


「了解」



 そういうと俺は海中に戻り、仲間たちに帰還のハンドサインをして見せ、陸へと引き上げていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る