第7話札束の攻防

ある日の夜、俺は凄いのを見ていた。


「うっ~」


里美がパソコンの前で唸っている


「……。」


俺はどうすればいい、見守るだけか


「ぐぬぬぬぬ……。」


里美の唸りはおさまらなかった



「なぁマリン、里美は何していると思う?」


俺は隣に立っている褐色ドールのマリンに聞いた


「何って……オークションやろ?」

「オークション、だよな、やっぱり」


俺はパソコンの前でなにやらぶつくさ言いながらマウスをクリックする里美を見た


「……違う……違う。」


なんか思い詰めてない?気のせい?


「なんか迫力あるよな……」

「そらミズハの服買うっていきこんでたしな、なんか用意できんかったって嘆いてたやん」

「ああ~」


何だかそんな話があったような気がする


「ネットで買うのか~」


時代だな~と思いつつパソコンの画面を見る

パソコンの画面には10000の数字とドレスの写真が写る


「一万……高くね?」

「そうか?そんなもんやろ?」

「人形の服が一万……」


人間の服の方が安いぞ、ユニクロとかGUとか


「これ開始値段だよな……?」

「そやで」

「じゃあ一万以上に……?」


俺は寒気がした。一体いくらくらいになるんだ?

ってかそんな高い服を俺に着せるつもりなのか


「う、動けねー」

「そもそもドールそんな動かんやろ~」


マリンが突っ込んでくる


「いや、そうだけど」


里美は俺たちがコソコソ話をしている間もパソコンの前で唸っている


「落ちろ落ちろ落ちろ……。」


なんかヤバい、雰囲気的に


「里美、思い詰めてね?」

「そら気合いの入りようやな」

「そっ、そうか」


そこまでして俺にドレスを?

デザインとか色とか見たのだがなんか今の服とあんまり変わらないような気もするのだが……


「あっ!!」


里美が声をあげる、高値更新されたらしい


「うぐ~」


里美はすかさず金額をつり上げる


「……よし!!」


画面には『貴方が最高入札者です』とでる


「里美本気だな……。」

「まぁどーしても着せたいんちゃう?」


終了時間が刻々と迫る、残り5分のところで状況が変わった


「嘘……。」


里美は驚愕した。つい先程まで11000円くらいだった金額が50500円まで上がっていたからだ


「これくらい……!」


里美は51000と入力する、しかし


「嘘」


画面には『他の方が貴方より高値をつけました』とでる


「……!」


こうなったら競り合いだ、里美は躊躇いなく値段をつり上げる


「まだ……まだ……まだ!!」


金額が10万を越える、里美は怯まない


「まだ……まだ……まだ!!」


12……14……18……!


「そろそろきつい……」


でも里美はどうしても欲しかった

このドレスはドール業界では有名な人が作っていて品質は保証済み、デザインもミズハに合う、色も好みだ


「どうしても着せたい!でもお金……」


金額が25万を越えていた。里美以外にも狙う人は多いということか


「うぐっ……。」


これで最後の入札になるだろう

里美は祈りを込めて金額を打ち込む


「……。」


画面には『貴方が最高入札者です』の文字

しかし油断はできない、残り時間3分


「……。」


残り2分


「……。」


残り1分


「勝った……?」


安堵した瞬間

『貴方より高値をつけました』

文字が出た、里美は崩れ落ちる


「ごめん……ミズハ」


そのままオークションは終了

最終価格250250円


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ~」


里美はパソコンの前でへこんでいた


「凄かったな~皆金持ちやな~」


マリンがゆるーく言う


「いや!25万越えとかヤバいって!!」


俺は焦った。ドールオーナーってこんな金額出せちゃうの?ヤバいヤバい


「どうすんやろな、里美」

「いや、25万の服なんて怖くて着れないし」

「そうか、むしろ着てみたいとかないんか?」


ある意味着てみてはみたい、でも緊張する


「俺は落札できなくてよかったって思ってる……。ごめんな、里美。」

「まぁドールそれぞれやな」


里美の方を見る、まだ落ち込んでる

そんなにいい服なのか?


「……よ~し!」


急に里美が立ち上がった


「なんだなんだ!?」


俺はビビった


「こうなったら直接買うわ!!」


里美、急遽ドールイベント参加決定!

転んでもただでは起きないのだ

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