第8話 家庭教師と技術
こんにちはトラウです。
「トラウ、何をぼーっとしてるんだ。早く打ち込んでこい。上手くならんぞ。」
どうしてこうなった?それは3時間前に遡る。
♢
「今日からでしたよね。家庭教師になってくれる方が来るのは。」
「ああ、今日来るようにお願いしたはずだ。楽しみか?」
「はい、剣術は今まで見たことがありませんから。」
「彼の練習は厳しいぞ。まだ5歳だからそこまで厳しい練習はしないと思うが、覚悟しておけよ。」
「はい、心して臨みます。」
そんな会話をしていると、屋敷の前に人が一人来たのが見えた。
「来たようだ。迎えに行こう。」
「分かりました、父上。」
「今日から貴方の剣術と魔術の指導を行う、メイスだ。よろしく頼む。」
そこに居たのは、白髪の眼鏡をかけた、スーツが似合いそうな感じのクールなイケメンだった。
「トラウです。こちらこそよろしくお願いします。」
「じゃあ、早速トラウの指導に入ってもらいたい。メイス、頼んだ。」
「ああ、わかっている。他でもないお前の頼みだ。無碍にする訳にはいかない。」
そういうことで、早速屋敷の訓練所で、指導が始まった。
「まずは貴方の剣筋を見る。できる限りの力を尽してやってみてくれ。」
と言い、木刀をこちらに寄越してきた。できる限りの力と言われたので、魔力を纏い、全知の書庫からトレースした動き通りに体を操る。
「ふむ。剣筋は完璧なようだ。ただ、剣に覇気がない。実戦経験がないってことがダイレクトに伝わってくるな。よし、1回私と打ち合うことにしよう。」
などと言ってきた。
「貴方、」
「あ、トラウで結構です。貴方の方が年上なんですから。」
「そうか。ならそうさせてもらおう。私のこともメイスと読んでくれて構わない。」
「では、メイス先生と呼ばせていただきます。」
「そうか。なら早速打ち合いだ。私はここから1歩も動かん。この砂時計の砂が落ちきる前に一刀でも当ててみろ。因みにこの砂時計は10分だ。」
といい、ポケットから砂時計を出してきた。
「いやいや、なんで急に打ち合いなんですか?!」
「お前に足りないのは実戦経験だ。なら1番手っ取り早く経験を積むには打ち合いが1番だろう?因みに、魔法の使用はなしだぞ。だが、スキルの使用は認めよう。」
あながち言ってることは間違っていないだろう。
「しかし、それで国内で十指に入る剣士と打ち合いは厳しいでしょう!」
ステータスを覗き見ると、
名前:メイス・フォン・アルマス 年齢:27 性別:男
job:魔剣士 Lv:36 加護:武神
HP:831
MP:1350
魔法属性:火,無,音
STR:692
DEF:675
INT:575
RES:575
DEX:354
AGI:370
スキル:剣術 魔力操作 魔力感知 指揮 魔闘技 見切り 礼儀作法
だった。レベル高いな。さすがは元騎士。魔闘技ってのは何だろう。
魔闘技…魔力を使い全身を強化するスキル。
何という簡潔な説明。よくわからんが、先生に授業をしてもらっていれば、何時か分かるかな。それにしても、一刀入れてみろって、どんな無茶振りだよ。まずAGIが7倍以上な時点で無理でしょ。見切りなんていう回避に使えそうなスキルもあるし。魔法を使ってもいいのであれば、まだやりようはあっただろうが。仕方が無いので不意をつくつもりで少し歩いて近寄って、普通に木刀を振ると見せ掛けて、投げつける。
「ふむ。考えてみたようだが、これでは私には当たらんぞ。」
やっぱり当たり前かのように弾き、こちらに木刀を投げ返してくる。
「さあ、次はどうする?考えろ。」
と言われたので、1つ気になったことを聞いてみる。
「魔法の使用はダメなんですよね?」
「うむ。」
「じゃあ魔力は使っていいんですか?」
「おお、そこに目をつけるか。いいだろう。使ってみろ。」
許可が出たので魔力を使う。魔力纏を発動することで、身体能力を強化する。これでも当てれる気はしないが。
「ふむ。そう使うのか…。」
先生が何か言っているが、一旦無視。これで当てられなかったら、無理矢理体を動かして、不意をついて攻撃してみよう。
「行きます。」
魔力で強化したおかげで、1歩で、先生との距離を詰められる。後ろに回って木刀を振り抜く。
「おお、かなり早くなったな。だが、遅い。」
「元々これで当てれるとは思ってません!」
魔力纏から魔力操身に切り替え。木刀まで魔力で、包んで、自分の限界を超えた速度で無理矢理振る。
「おお、更に早くなるのか。」
先生が何か言ってるが無視して連撃を叩き込み続ける。
「残念だったな。それでもまだ遅いな。」
と言って、先生は全てはじき返す。
一旦距離を取るために後ろに下がる。何か当てる方法はないのか。
「トラウ、何をぼーっとしてるんだ。早く打ち込んでこい。上手くならんぞ。」
と言って冒頭部分に戻る。
そんなことを言われていると、砂時計の砂が落ちきってしまった。
「残念だったな。時間切れだ。そういえば、トラウ、何か気づかないか?」
と言われ首を捻ると、先生は
「うーん、わかってなかったのか。」
と言い、話を続けた。
「実は私は魔力を使って身体能力を常に向上させていた。気づかなかったか。魔闘技というのだが。」
あ、出た魔闘技!早々にスキルの説明いただけます。
「魔力を纏っている感じはしませんでしだが、どうやったんですか?」
質問すると、
「実は、魔力を身体の中で練り、血液に載せるイメージで、全身の隅々まで巡らせてのだ。」
そう言われたので、より注意深く魔力感知をしてみる。すると、言われた通りに先生の身体の全体に魔力が行き渡っているのがわかった。
「これが私が強さの所以だったりする。あとは、ステータスの差だな。ちなみに、見切りっていうスキルも持っているが、今回は使っていない。あれは殺気を感知して避けれるスキルだからな、今回は使えていないぞ。」
などとカミングアウトした。
「そんなの僕に教えていいんですか?」
「もちろんだとも。その為に私がここにいる。トラウには、私を超える剣士になってもらいたいのだ。それに、なにより奴の頼みだしな。」
父上の事だろうが、先生は父上とどんな関係なんだろうか。
「先生は父上とどんな関係なんですか?」
気がついた時には聞いてしまっていた。
「実は、私は彼の弟なのだ。なんてのは冗談だが、ほんとは学校の級友でな。私が騎士団を追い出された時、面倒を見てくれたのだよ。だから恩返しとしても、トラウには全力で指導しているのだ。」
そんな過去があったのか。などと考えている。すると、先生から
「それよりも、私が教えた全身強化法試してみろ。慣れればそれだけで、今の2~3倍はつよくなれる。」
と言われたので、試してみる事にしよう。
「コツは、魔力を感じ、それを心臓に送り込むイメージで、魔力を練ることだな。」
言われた通りにし、集中する。
すると、全身に一気に力が着いたかのような感覚になる。しかも、さっき、身体を無理矢理魔力操身で動かした反動である、筋肉の痛みも引いていった。
これは驚いた。身体能力だけでなく、自己治癒力までもが強化されているのがわかる。
「それが私の弟子の証だと思え。絶対に忘れるなよ。」
と念を押された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます