嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。

なつめ猫

第1話 女子高生なのに、いきなりの嫁入りですか!?

「君には、うちで働いてもらう」


 唐突に、自宅に訪ねてきた目の前に立っている男性は告げてきた。

 見た目は、どこのヤクザ? と、思えてしまうほどの威圧感のある大きな風体。

 目は鋭く――、何人もの女性を拐かしてきたのかと思えるほど目つきが悪い。


「えっと……」


 唐突の事に、私は言葉が出ない。

 何せ、高校から帰ってきて家に入ったら家の中のモノは一切なくて――、まるで夜逃げをした状態になっていたから。

 何が起きたのか分からない状況で頭がフリーズしてしまうのは仕方ないと思う。

 

 ――でも、それは致命的であった。

 何せ、目の前の男が部屋に押し入ってきたばかりが華の女子高生――、来年からは3学年になる私に仕事を強要してきたのだから。


「君に拒否権はない。分かったな? 宮内(みやうち) 莉緒(りお)」

「無理です」


 辛うじて私は拒絶することができた。


「君の父親にも許可を得ている」


 私が素直に従わない事に業を煮やしたのか、今度は私の父親が承諾しているという事まで言い出してくる。

 たしかに! 私の父親は、お酒が好きで! 賭け事も好きで! 借金もしてしまう程、酷い親だけど――、……うん、よくよく考えて見てもいい所がまったく無い親だけど! それでも一応は私の親だし! 子供を売るような親には……、売るような親じゃ……、親じゃないよね?


 思わず自問自答していたら自信が無くなってきたよ……。


「いくらなんでも! 実の父親が、娘を売るような真似をする訳がないです!」

「これを見ても、それを言えるか?」

「――え?」


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