1日目 爆発オチなんてサイテー

 かくしてElite:Dangerousをインストールし、チュートリアルもクリアして、キャラクリの時間となった。


 sidewinderという宇宙船も貰った。いわゆる初期艦で、白く艶に欠ける色合いと三角形の艦影から、一部から「はんぺん」の愛称で親しまれているそうな。

 宇宙船には艦種名の他に個別名を付けられる為、「UNEBI」と命名。

 旧日本海軍の防護巡洋艦畝傍うねびに由来するもので、マニア以外には無名な艦だが、中々に癖の強い逸話を持つ艦なので是非一度調べてみて頂きたい。


 そんなこんなでオープンワールドに乗り出した私。


 メッセージを確認すると、 CMDRの互助会的な存在(だと私は思ってる)であるパイロット連合(pilots federation)からのメッセージが届いていて、Google翻訳との格闘の末に、地区パスポート(原語はdistrict permit)なるものを貰ったらしい事を知る。


 いや審査ザルすぎない? Google様無しじゃ文章も読めない人間に何渡してるの? 現にそのパスポートで何が出来るかわからなかったし。


 まあそれはさておき、エリデン世界においても先立つものは必要不可欠である。金を稼ごうと、まずはチュートリアルミッションとして隣の星系までデータを届けに行き、その届け先で幾つかデータ配達のミッションを受ける。


 装備が貧弱でろくに貨物も積めない初心者にとって、戦闘の必要がなく貨物スペースも使わないデータ配達はありがたいミッションだ。


 順調にデータを届けていた私だが、最後の一カ所に届けに行くにあたり、私はとんでもないミスを犯してしまう。


 太陽系を飛び出すスペースオペラに必要不可欠な技術と言えば超光速航行技術である。

 本作においてはFlame Shift Drive、通称FSDがそれに該当するのだが、FSDには2つの機能がある。


 星系間の移動に使用するハイパースペースジャンプと、星系内の移動に使用する超光速巡航である。

 はじめたばかりでそんな違いもわからずフィーリングで運用していた私は事もあろうに、「星系間の移動に超光速巡航」を使用した。当然とんでもない時間がかかるが、星系間の距離が比較的近く、頑張れば行けそうな距離だった為か私が疑問を抱くことはなかった。「ジャンプとクルーズじゃ演出が違うだろ!」とかいうツッコミは勘弁して頂きたい。日付を跨いでいて疲れていたのだ。


 その結果何が起こったか。


 燃料が尽きた。


 このゲーム、燃料弾薬の概念があり、それらの管理が生死を分ける場合がままある。



 特に、とある探検家CMDRが、銀河外縁の周囲に何も無い場所で燃料不足に陥り立ち往生した一件は有名だ。


 実はこういった遭難事案の救助にあたるCMDR集団が存在し、現に先述の銀河外縁での遭難事件も、有名な救助チームであるThe Fule RatsがCMDR5名、燃料2576トン、ドローン632機を投入し、スペースブラックバック作戦こと「Operation:Beyond The Dark Edge」を敢行。600時間に及ぶ一大作戦の末に救出に成功しており、今なお語り草となっている。


 しかし、生命維持装置を動かす分の燃料が残っていたあちらと違い、こちらは燃料は完全にゼロで、余命がそうないであろうことは明白だった。


 そして何より英語の成績が散々な私が英語で救助を求めるなど到底不可能に思えた。



 絶体絶命の状況だが、私は慌てることなどなかった。


 燃料が危険領域に達しはじめた頃からタブレットで対処法を探していたのだ。



 私は悟りに至った菩薩のような心持ちで向かって右側のパネルを開き、各機能の制御を行うshipsタブを選んだ。

 そこの1番下のボタンにカーソルを合わせスペースボタンを押す。


 確認を取るウィンドウが表示されるもこれを承諾。

 ヒートゲージが上昇し、オーバーヒートを告げる警告音声が鳴ったのを確認し、私はオーガニックスマイルを浮かべる。


 ひょっとすると、この艦の名前の由来となった防護巡洋艦畝傍も、このような最期を遂げたのではなかろうか? 流石にないか。


 私のアバターは、艦共々爆発して果てた。



 爆発オチなんてサイテー!

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