勇者と呼ばれる男の幼馴染達を気がつけば寝取ってしまった話……いや誤解なんですけどね(汗)

沙坐麻騎

第1話 勇者の幼馴染を助ける




 この世にはリアルでも「勇者」と呼ばれるアイタタな奴がいるもんだ。



「おい、サキ。勇者がまた『三美神』を引き入れてウハウハやってるぜ~」


 とある昼休みにて。

 親友の火野ひの良毅りょうきが皮肉を込めてボヤいた。


 サキと呼ばれる俺こと、神西かみにし 幸之さきゆきはチラリと教室の一番後ろの窓側席で賑わっている集団に視線を置いた。



 クラスいや学年内でカースト上位とされる遊井ゆうい 勇哉ゆうやだ。

 見た目は爽やか系のイケメンで成績優秀、スポーツ万能、おまけに両親が大きな病院を経営している金持ちで超高スペックな男だ。

 教師受けも良く、優秀な生徒の模範とされ「なんちゃらの代表」みたいな感じで演台に立たされることもある。


 そんな奴を人は『勇者』と呼んでいた。

 ほとんど名前から来ているけどな。


 俺は直接喋ったことはないが、正直、勇者こいつの性格は好きじゃない。

 なんつーか口調こそ紳士ぶって丁寧だが、常に鼻にかけ自分より劣っている奴を見下したような態度が度々見られる。

 また女遊びも激しいのも超有名だ。

 大抵、告ってきた女子はその場で美味しく頂いているらしい。


 んで周りにいる、同じような爽やか男子達もサッカー部やバスケ部のエースとかが揃うカースト上位グループであり、勇者のおこぼれを頂戴しているようだ。


 そんな連中に靡く女子達も、これまた可愛い子が多い。



 ――中でも一際目立つ学校内でカースト最上位と誉れ高い『三美神』の女子達がいた。



 一人は、


 南野みなみの 愛紗あいしゃ

 長い亜麻色の髪にハーフアップ。色白でアイドルと間違えられるほどの美少女。

 成績もよくスタイル抜群。おまけに性格も優しい正真正銘学園のアイドル的存在。

 噂によると中二に遊井と初体験済みらしい。



 もう一人は、


 東雲しののめ 麗花れいか

 すらりとした高身長で黒く長い艶髪と眼鏡を掛けた知的美人の生徒会長。おまけに巨乳。

 秀才と言われつつも、普段から真面目で塩対応ぶりから「塩姫」と呼ばれている。

 中三の頃、遊井と一時付き合っていたと言われている。



 最後の一人は、


 北条ほくじょう 詩音しおん

 金髪に染めたサイドテールのコギャル風でハーフらしい。華奢で小柄なスレンダーな体形。

 常にふわふわとして軽く如何にも遊んでいるっぽい。

 現に遊井のセフレとらしいのだ。



 彼女達『三美神』は、なんでも勇者こと遊井と幼馴染の関係らしく、幼稚園から仲がいいとの話だ。

 あの野郎、どこまで恵まれていやがるんだ……まったく。

 

 そんな遊井を中心としたグループは、チャラくてデカい声で笑いながら何やら話している。

 恋バナやら、教師の悪口やら、どこの店が美味しいやら、放課後どこ行くとかそんなコミュ力が高そうな内容だ。


 興味はないが嫌でも聞こえてしまう。


 勿論、俺達のような下位の存在は村人モブであり、連中からは視界にも入れてもらえない空気エアーだ。

 別にどうでもいいけどな。



 ……でも男なら一度くらい。


 ああいう美少女達に囲まれてみたいもんだ。

 

 なーんてな(笑)






 放課後。



「なぁ、リョウ。今日どこに行く?」


「悪りぃ、サキ! 俺、今日は千夏と帰る約束してんだ!」


「ええ~っ、マジかよぉ。まぁ、しゃーないわ、また今度なぁ」


 そう、俺の唯一の親友である良毅には、名取なとり 千夏ちなつというショートカットの可愛い彼女がいる。


 良毅も割とイケメンの茶髪で割とモテる方だがドライな性格であり、なぜか俺と気が合う間柄である。

 けど彼女一筋であり、そのラブラブぶりには俺も入る余地はない。そんな隠れリア充なのだ。


 一方、俺はというと黒髪で何の特徴もない男。成績も普通でスポーツも何が得意ってわけじゃない。

 なので、遊井みたいな奴からモブ扱いされても否定はできないだろう。



 っというわけで、一人で帰宅することとなった。




 帰り道にて――



「いいじゃねぇか、コラァ!」


「嫌、離してください!」


 南野さんが空き地に連れ込まれ、複数の不良にナンパされているところを遭遇する。


 隣には例の遊井がおり、どうやら一緒に帰宅していたと思われた。


 なかなか強面で強引なヤンキー達のようで、南野さんは瞳に涙を浮かべて必死に拒んでいるようだ。


 俺は他の生徒同様に、このまま見て見ぬフリをするべきだと思いながらも、泣きそうになっている彼女から目が離せず立ち止まり身を隠した。




「あ、あのぅ……」


 遊井がヤンキーに声を掛けている。


 おっ? ここは勇者らしく、お姫様を凶悪モンスターから守るのか?


「なんだぁ、テメェは!? モンクあんのかぁ!?」


「……愛紗。俺、用事あるから、また明日な」


「え!? 嘘、勇くん!?」



 ザザザ……。


 ――勇者は逃げ出した。



 マ、マジかよぉ!?

 あの野郎、本当に南野さん置き去りにして逃げやがったぞぉ!


 どうする!? このままじゃ彼女が……。


 しゃーない。

 いっちょ、俺が助けるか。


 俺は悠然と現場へと足を運ぶ。



 そう――。



 何を隠そう、俺は誰とも喧嘩したことがない。

 つーか、暴力反対の平和主義者だ。



 んじゃ、なんでこんな「俺って実は――」的に出たのかっていうと特に意味はない。

 しいて言うなら、南野さんを助けるため自分を奮い立たせ、それっぽくイキってみただけだ。


 だが勝算はないわけじゃない。

 腕力が駄目なら頭を使えばいい。


「――お巡りさ~ん! こっちですぅ! 女の子が襲われてます! 早く来てぇぇぇつ!!!」


 俺は片手にスマホを握り締め、連中から死角側に向けて手大きく振る。

さも警察に通報したフリをして見せた。


「なんだぁ、あいつ!? まさかサツにチクったのか!?」


「ヤベェ! おい、逃げるぞぉぉぉっ!」


 ヤンキー達は一目散に逃げて行った。



 ふぅ……思った以上に大成功だ。


「良かったね、南野さん。それじゃ――」


 俺はニッコリ笑って背を向ける。


「待って! 貴方は……どこかで?」


 やっぱカースト最上位クラスの『三美神』様じゃ、俺の名前なんか覚えているわけねぇか。


 まぁ、別にいいや。


「遊井君と同じクラスの神西だよ。警察呼んだの嘘だから、早く立ち去った方がいいよ」


「……神西くん」


 呆然と立ち尽くし彼女を背に、俺は自宅へと戻った。


 人助けをした優越感にちょっぴり浸りながら。






__________________

《あとがき》

 お読みいただきありがとうございます。

 この作品は小説家になろうで掲載し、一週間以上日間ランキング1位をキープした唯一の出世作のような作品です(笑)

 以前と違った展開やお話の流れとなっているのも特徴です。

 今の所はカクヨム様のみの掲載なので、どうか☆とフォロー等で応援頂けるとテンション上げて、より更新も頑張れます(#^^#)


 ちなみに別作品『ヴィランの黒騎士~勇者に婚約者達を奪われた虚弱王子の俺は魔族に改造され最強の黒騎士となる。そして最愛の義妹を英雄として影で導きながら復讐を開始する。』も更新中なので、こちらも応援のほどお願いいたします。


 自分のモットーは「載せたら完結するまで頑張る」ことであり、作品の濫造はしない主義なので、どうかご安心を(^^)/


 また今後も、未公開作品や過去作品も少しずつ載せていきたいと思っております。


 今後とも応援のほどよろしくお願いいたします<(_ _)>


 

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