事実は小説よりも奇なり。

央鈴

第1話 有限であるからこそ

 膝上三センチメートル。駅前塾の窓から一望できる公園の噴水広場で、数人の女子高生たちが裸足で水を蹴飛ばしては、しぶきをキラキラと輝かせている。かかとを踏み崩されたローファーと、無造作に脱がされたままの紺色のソックス。素足に滴る水滴が、通りすがりの大人たちの視線を否応に奪う。


 女子高生の日常。青く無邪気な自由で無敵な女子高生。その光景はまるで世界がうら若き少女たちを中心に回っているかのように見えた。あどけなさ残る可愛らしさと、大人になれば消えてしまう溌剌としたきらめきは、有限であるからこその儚さが魅力なのだろう。


 現実に生きる、酸いも甘いも知る冷めきった大人たちは、二度と戻らない、かつての青春を少女達に馳せてはそうして惹かれていくのだ。取り戻せない過去を謳歌する彼女らに嫉妬しながら、憧れを抱き続けて──。

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