第18話 外科医じゃねぇっての

 ピンクのナースの群れに囲まれて通路の奥へグイグイ進んでいく3人。

「ウハハ~、悪くねぇシチュエーションなんだけどな~」

 ウキウキとした足取りから見てブッシは楽しそうである。

「バカ…罠に決まってんだろ…」

 ドライブは隙を見て抜け出そうとしている。

「ドライブ、よしとけ…こりゃ無理だ」

 レーダーはすでに諦めていた。

 罠にハマる=『死』ではないはずだ。

(殺すつもりなら、とっくに殺されている)

 事の真相を探りるために、この病院に来ているのだ、向こうから招いてくれるならウェルカムという考え方も出来る。

 レーダーは大人しく従い、病院の奥へ促されるまま歩を進めていた。

 その間もブッシの「ウヘヘ~」というスケベさが漏れたような笑い声は無機質で暗い廊下に反響してた。

 暗く白いだけの廊下の突き当り、壁と同化したような白いドアがシュンッと横に開閉するとナースが左右にズラッと並び入れと一斉に手で促す。

「いよいよ、罠の入口ってことだな…」

 中に入ると、殺風景な部屋。

 窓も無い、器具の無い手術室のような感じ。

「閉じ込められた…か?」

 ドライブがボソリと呟く。

 入ってきたはずのドアすら無くなっていたのだ。

「何でもアリなんだな、この世界は」

 レーダーがポケットから煙草を取り出す。

「何でもアリなら、出ることだってできるんじゃないの?」

 ブッシが壁に手を付け、思い切り押してみる。

「俺達が何でもアリなんじゃねぇ、何でもアリの連中がいる世界ってことだ」

 レーダーが煙草の煙を上に吐き出す。

 カランッ…

 空間の裂け目から投げ込まれたように床に銀のトレーが転がった。

「なんだコレ」

 ブッシが拾い上げ、表情が強張った。

「目玉を乗せていけ…だとさ」

 トレーをレーダーに放り投げるブッシ。

 浅いトレーの底に黒いマジックで書かれている。

「よせよ、俺に目玉をくり抜けってパスしてるようじゃねぇか」

 カランッ…

 ドライブの足元に2つめのトレーが転がった。

「コチラは…耳を置いていけだそうだ」

 トレーを拾い上げたドライブがフッと笑う。

「目…耳…後は、なんだろうな?」

 ブッシが他人事のようにレーダーに尋ねた。

 カランッ…

 部屋の中央にトレーが落ちてきた。

「自分で確認してみるんだなブッシ」

 レーダーが顎で拾えとブッシに促した。

 渋々、トレーを拾い上げるブッシ。

「なんだって?」

 ドライブがブッシに尋ねる。

「うん…このトレーじゃ無理がある」

「なんのことだ?」

 ドライブがブッシからトレーを取り上げる。

「なるほど…乗らねぇわな」

 ドライブがレーダーに見せ付けるようにトレーを前に差し出した。


『GIVE ME YOUR BRAIN』


「ブッシのなら…あるいは?」

 レーダーが苦笑してブッシを見た。

「どういう意味だよ‼」

 カシャンッ…

 壁からガシャガシャと手術道具が次々と零れ落ちる。


(おいおい…俺は外科医じゃねぇっての)

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