第11話 ジェイソンなら良かったのに…

 カラカラカラカラ…

 金属バットを石の床で擦りながらオニィが、ゆっくりと近づいてくる。

「あのニタニタ笑いを止めてやりたいぜ」

 ブッシが構えをとる。

「じゃあ…任せたぜ」

 親指をグッと突き立ててドライブが1歩後ろへ下がる。

「あぁ…やれるものならな、出番だぜ‼ ウチのバーサーカー‼」

 2階のJCに親指をグッと突き立てるブッシ。

(バーサーカー…狂戦士って、敵味方関係ないから『狂』なんだよな~、強いだけなら『強戦士』…)

 チラッとJCを見るレーダー

「フーッ…フーッ…」

 オニィを睨み荒ぶる呼吸、飛び掛かりたいのを無理やり押さえつけているようなJCの顔。

「さて…アイツの登場が凶となるか…あるいは興と変わるか…」

(血祭りか…喧嘩祭りか)


「ブッシ、ドライブ、俺は奥へ行く、お前等JCには、やられるなよ‼ 任せたぜ」

 レーダーが奥の部屋へ走っていく。

「おいおい‼ 何を任されたんだおい‼」

 ブッシが2階へ向かって叫ぶ。

「つまりアレだ…安全な場所で見守れってことだ」

 ドライブが受付を指さす。

 コクリと頷くブッシ。

 そそくさと、受付のデスクに身を隠す2名。

「不利だな…」

 ブッシが戦力を分析する。

「あぁ、バットに素手だからな」

 ドライブが同意する。

「だが~、パワーアップアイテムがある」

「なんだ?」

「コレだ‼」

 しっかりと打ち返されて転がった赤い『ロード・クロサイト』をドライブに見せる。

「呆れたぜ…そんな余裕、よくあったな」

「俺は調達係だぜ、必要な物は揃えるさ」

「必要なのか?ソレ?」

 疑心的なドライブ

「俺には、解る…コレはパワーアップアイテムだ‼」

 そういうブッシに根拠は、もちろんない。

(絵画にはめ込んだほうがいいと思うんだけどな~)

「アァァァァッァーーーー‼」

 ドライブの心に湧きたつ不安を悲鳴にも似たJCの咆哮が打ち消した。

 2階からオニィに飛び込むように手すりを蹴って頭から突っ込むJC。

「アレだもん…バーサーカーってやつは…ホントに…」

 ブッシが天を仰ぐ。


 奥へ進んだレーダー、気になっているのは館内に響いた声の主だ。

(俺達のほかに誰かいる…)

 というか居てくれ…霊的なナニカより実体のある方が対処しやすいからだ。

 例えるなら日本のホラーと海外のホラーの違いだ。

 対峙した場合、貞子よりジェイソンの方が勝ち目があるような気がする…そういうことだ。


「こっちだよ…アッチの水は苦いよ…」

 T字の右手から少女が手招きする。

「コッチの水は甘いよ…」

 左手からも少女が手招きする。


 赤い美術館に似つかわしくない幼い少女。

(双子だよな…絶対そうに決まっている)


「ソッチのみ~ずは…に~がいよーーーー‼」

 キャハハハ…

 狂ったように左右から叫ぶ少女達。


(ジェイソンなら良かったのに…)

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