第4話 魔王があらわれた

-闘技場

≪イベントクエストの難易度を選んでください≫

≪→☆(かんたん) ☆☆(ふつう) ☆☆☆(むずかしい)≫


「うーん、とりあえず星1からやっていくか」

タローは割と慎重な性格である。その性格が功を奏し、大きな失敗は少ない方だ。(女性関係を除き)

そんなこんなで星1から始めたタローたちであったが、案の定勝ち続けて初期選択肢にない星4まで軽々たどり着いた。

「これって星の最高はどれくらいなんだろ?」

そう思い、タローは手元のケータイ(現実)に目をやった。ケータイで開いた攻略サイトによると、星の最高は8らしい。イベントの経過により、時期に増えてくとか。

「じゃあ、星8を目指してやってきますか」



-2時間後

タローは二度のコンティニューを経て、星7のボス戦まで行った。かなりの難易度で、課金などをしないとノーコン(コンティニューなし)では厳しいという印象だった。

「ちょっと“ドンドン”の方が使いにくいんだよなぁ。ばっかりで、使ってくれないし」


星7のボスは“魔王ベリエル”。サラクエⅨに出てくるモンスターである。Ⅸにおいて最初の魔王ということもあり、かなりの強敵と名高い。

タローがやったことのないタイトルのボスなので、手探りなところもある。しかし、ここでもタローは持ち前の慎重さから、攻略サイトを読み漁り知識を補充しておいた。とはいえ、イベント開始から1日しか経ってなかったために、有力な情報は“5パーティ連合のレイド戦”であることだけだった。ここでタローはⅨの攻略情報を活用することにした。



≪魔王ベリエルがあらわれた≫

ステージは変わらず、闘技場だった。けれども、他のパーティの姿がちらほらと見える。前情報通りのレイド戦だった。。パーティは自分たちを入れて、“6つ”。一つのパーティは“1人”だけ。人数に関しては情報と違いがあったが、多いにこしたことがない。


≪タローはハイブリザをとなえた≫

ベリエルの弱点である氷属性の魔法“ブリザ”。その上位魔法である“ハイブリザ“は、氷柱を作りだし相手を貫くというもの。案の定、ベリエルに大ダメージを与えた。


≪ドンドンのこうげき≫

ドンドンは炎之剣フレイムブレイドを勢いよく振り下ろした。無意味ではないが、至って普通のダメージが出ただけだった。


≪ベリエルはハイトルネをとなえた≫

風属性の上位魔法である“ハイトルネ”は当たり一面を竜巻の群れで一掃した。タローたちはもちろん、のメンバーまでもダメージを負うほどの威力。


≪ダイジニは“ミナヒルラ”をとなえた≫

全体への回復魔法。体力が少なめなタローにとってはありがたい魔法だった。これで、次のターンも攻撃に専念出来る。



このような形で数ターンの経過があった後、事件が起こった。

それは───


≪ベリエルのこうげき≫

≪〜に9999のダメージ≫

≪〜はたおれた≫

「即死攻撃?そんなこと、今までなかったのに」

サラクエにおけるHPの最大値が9999であるため、この値のダメージは即死と同じ意味を持つ。

≪2回行動≫

≪ベリエルのこうげき≫

≪…に9999のダメージ≫

≪…はたおれた≫

「二人もやられたか、これは防御魔法で守備力を上げないと」


≪2回行動≫

≪ベリエルのこうげき≫

「え、、、2回行動をまた⁉︎」

しかもその矛先は、タロー自身に向けられている。

「これはやられる、、、」

≪タローに───


ここでテキストが止まった。目の前には初日に見た、あの神父。神父はベリエルの拳をその大きなハンマーで受け止める。

≪ ───はタローをかばった≫

神父の姿は綺麗に消えてしまった。

「かばってくれるなんて、優しい人もいるもんだなぁ」

しかし、消えたところから再び神父の姿が現れた。


「聖書には記憶セーブデータを、この身体には楽園教会が宿る」

(これはムービー?)

「たとえ私が息絶えようとも、すぐに蘇ることが出来るのだ。さぁ、葬ってやろう」

神父は天使ような微笑みから、滅多打ちのようにハンマーでボコ殴りにした。そこから、一度きっちり立たせて、フルスイングの一撃を浴びせたのだ。

「───ご愁傷様でした♡」


タロー含めた冒険者の前には、神々しくも恐ろしい神父さまの姿と“STAGE CLEAR”の文字が輝いていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る