第15話 10月2日 ③

 太陽が落ち、車のまわりは何処までも続く渋滞で車のライトが道の果てまで等間隔で列を作っていた。池谷さんとの通話を切ると、横にいた原口さんが。


「どうだ?」


「ダメです。東京駅は2キロ圏内が封鎖されてて、東京駅には近づけないです。ただ、地下が手薄になっているみたいで、御茶ノ水から線路に沿って歩いたらもしかしたらってとこみたいです。それか原口さんが行けばもしかしたらいけるかもって。」


「俺は一週間前に定年だぞそんなに警察は馬鹿じゃねえよ。それより御茶ノ水までだと封鎖って事は皇居の西側から行かなくちゃならんな。」


「はい、でもそっちの方も渋滞してるみたいで。池谷さんは歩いたほうがいいんじゃ無いかって。」と言うと、後ろの座席から東山が身を乗り出して「ダメですよ。」と言ったあと壁にもたれ掛け俯く彼女の方をチラッと見た。


「美香ちゃんがこんな状態でそんな距離歩けませんよ。」と言うと、市川美香がゆっくりと身体を出し、「大丈夫、それより裕太君を助けて。」


「野上裕太は無事なのか?」と聞くと彼女はコクリと首を縦に振り「多分。」と言った。


「だがな、助けてって、その野上裕太が、あの爆発を起こしたんだろ。俺たちが行ってどうにかなるのかよ。」と原口さんが言うと、東山が「裕太くんは、誰かに操られているみたいなんですよ。」


「操られてるって洗脳かなんかか?」


「それは、わからないですけど。でも美香ちゃんが今こんな状態なのは裕太くんと無意識下で交信してるからみたいなんです。」と彼女の代わりに東山が言う。


「どういうことですか?」と聞くと、市川美香再び話し始める。


「多分、裕太くんがみんなを操ってる。でも、いつもの裕太くんはそんな事する人じゃ無い。」


「でもよう、前の施設から出てからはみんな顔を合わせて無いんだろ、嬢ちゃんはそんなことまでわかるのかい。」と原口さんがバックミラー越しに彼女を見ると彼女は首を縦に振った。


「多分私はみんなの中でも結構能力は高いと思う。いっつもみんなのことが何となくわかってたから。それと裕太君は私よりも強い。」


「ならそれが本当だとして、誰が何の為にその野上裕太って奴を操るんだ。」


「分からない。でも今年に入って、何回か同じような感覚になった。」


「同じような感覚って?」と俺が聴く。


「頭の中のに何かヌメっとしたした感覚そのものが入り込んでくる感じ、私の中の全てを覗いて私を塗り替えようとする感じ。」


「塗り替える感じ?」と聞くと。


「うん今日も朝からそんな感じだった。」


「その前はいつその感覚になったか覚えてるかい?」と聞くと彼女は少し考えた後。


「9月の最初の方だったと思う。確か雨が降ってた。」と言われたので、スマホを取り出し9月の神戸の天気を調べると、九月前半に神戸で雨が降ったのは九日から十一日までの3日間だけだった。


「それって、九日かい?」


「はっきり覚えてないけど、確かその日から何日か雨が降ってたと思う。」と聞くと東山が、こちらを見た。


「緒方さん、その日って。」と言うので私は頷いた。


「八王子の事件。」と言った後、市原美香の方を向いて「片山敏雄君のことは知ってる

 ?」と聞くと彼女は縦にうなずく。


「今はどうなってるかわかる?」と聞くと首を横にふる。


「九月くらいから敏雄君の感じがしなくなった。」と言うので足元に置いてあったバックから手帳を取り出した続けて「橋本勘助君は?」と聞いた。


「前は感じてたけど今は分からない。」と言う。


「感じなくなった時も気分が悪くなったの?」


「あんまり覚えてないけどそのぐらいにもあったと思う。」と言った後原口さんが。


「なら、本当に野上裕太がみんなを操ってたのかよ?」


「時期はあってます。」


「でその野上裕太も誰かに操られてるってのか?」


「彼女が言う通りなら。」


「じゃあ、そいつは誰なんだろうな。」


「わかりません。ただ、裕太君に話を聴ければ何か分かるかもしれません。」


「どっちにしろ、今はその野上って奴に合わないかんのか。だがなあ俺たちだけでそいつを止めることが出来るのか、あんな事起こす奴を。」と原口さんがいうと、市川美香が「私が説得してみたい。裕太君多分相当力使っててこのままだと体が持たないと思う。」と言った後私が「それに警察に捕まったら、黒幕の事も聞けなくなるし、そのままこの事件が国に揉み消されるかもしれないです。」と言う。


「緒方さん、まずは野上君を助けることが先決です。」


「そうだな、嬢ちゃんが言うことを信じるんなら、先に俺たちで見つけねえとな。とりあえず、御茶ノ水だ。」と言うと、原口さんは裏道の方へハンドルを切った。



***



 社主が会議室から出て行った後室内は静まり返っていて、その張り詰めた空気を壊したのはさっきまで社主が座ってた席の横に座って居た、背が高く小太りの主筆だった。


「ありゃ、なんか言われたな。」と呆れたように言うと主筆以外の全員が一様に吹き出すように笑いだし、それを見回した彼は周りを諫めるように「不謹慎だぞ、時間がもったいないからそろそろ始めよう。」と言いながらまるメガネを掛けた。


「誰か、今回の事件についての情報はあるか。まず田中。」と言われた田中は胸ポケットから安っぽい透明なボールペン新聞と毎朝新聞と書かれた縦開きのメモ帳を取り出した、読み上げ始めると、周りの人間はペンを使って話すことを皆各々のメモ用紙に殴り書きし始めた。


「今のところ、めぼしい情報が不自然なほど情報が出てきてなくて、ただ、たまたま警察無線が混線してたのを聞いた人が、g事案と言っているのを聞いたそうです。」


「g事案。」


「はい、それと警視庁術科センターから人員輸送用のトラックと立川の訓練所からヘリが共に東京駅に入ったそうです。」


「サットか?」


「もしくはシット。」


「テロか・・・。目ぼしい、グループから犯行声明は?」


「今のところどこからも出てません。」


「被害者の数は分かったか。」


「辺りの大きな病院に何人か張り込ませてますがなったく中の様子がわかりません。ただ車の入り方からして最低でも死傷者100人は軽く超えそうです。」


「多いな。他には?」


「いくつかありますが、どれも裏付けかできてません。」


「わかった。それじゃあ政治部は。」と言われ喋り始めたのはネクタイを崩しシャツの一番上のボタンを外し、長袖をぐしゃぐしゃに捲った50代くらいの細身の伊藤と言う男だった。


「はい。警察がこの後7時ごろに会見を開くそうです。後、口の緩い議員の何人かにあたってはいるんですけど、誰もかれも、この件になると口をつぐみます、しかも警察族の野党議員まで。もしかしたら今回のはテロじゃ無いかもしれませんよ。」


「テロじゃなきゃ何だ。」


「それはまだわかりませんが、先月あたりから防衛省界隈で変な動きがあるみたいで。」


「もったえぶるな。」


「ここ二週間ほど防衛省と厚生省の間で何かの責任の押し付けあいしてるみたいで、詳しいことはまだ分からないんですが厚生大臣と防衛大臣の総理との面会が七月の2倍になってます。ただ、今回の事件と直接関係が有るか分からないのでひとまず、今回の事件と政府の関係を重点的に野党にあたってみます。」と言っているのを聞いて田中が私の方を見たので目で軽く頷いて「ちょっといいですか。」軽く手をあげた。


「雲村、なんか有るのか?」


「今の話なんですけど、もしかしたら今うちで追ってる件と関係が有りそうで。」


「今追ってる件?」


「5年前の事件と関係ありまして。」と私が言うと主筆はメガネを外した。


「5年前?」


「スーパーソルジャーの。」


「子供達か。」


「はい、その子供達が原因で全国で事件が起きてるみたいなんですよ。」


「事件?」


「今のところ火事とか水難事故、交通事故なんですが。」


「バラバラだな。」


「ただどの事件でも当時の子供が中心にいるんです。それに絡んで前の厚生大臣の汚職疑惑が浮き上がって来たんでそっちの方を田中に頼んだところです。」


「そんなの聞いてないぞ。」


「最初、田中に圧力がかかったので。」


「八王子か?」


「はい。」と主筆が聞くと深く椅子に座り少しの間中を見て少し考えた後、口を開いた。


「会議の後雲村、田中、伊藤はここに残れ、この問題は危険だ、今回の非常時にこの話を記事にするには時期がよく無い。国民の不安感を煽りすぎる。今は今回の事件に集中しよう。ここにいる全員この話は他言無用で頼む。」と言うと、主筆は別のものに質問を振り会議を進めた。



***




 御茶ノ水に到着したのは8時を過ぎた頃だった。


 その頃にはもう車の渋滞は解消していて、車は少なくなったが街中の通行人はいつも通りいて、鉄道の駅の周りやタクシー乗り場には交通手段がなく帰ることが出来ない人達が、最後尾が見えないほど長い列になって並んでいた。


 車で地下鉄の御茶ノ水駅周辺を走り、どうにか侵入出来ないか確認するがどの出口にも制服を着た景観が貼り付いていてたので再び池谷さんに連絡を取ると、封鎖圏内に住んでいる人は検問で本人確認してから入っていて、検問がないところはどこも通行止めされてるとの事だった。


「今、いろんな所の防犯カメラを見てんですけど、どこも封鎖されてます。どうします、やっぱり地下ですか。」


「そうしたいんですけど、どの入り口にも警官が貼り付いてて。」


「そうですか、一応御茶ノ水駅と淡路町駅のカメラはなんとかしとくんで。行くときに連絡ください。」


「わかりました。」


「ああ、あと東京駅に向かうなら携帯は緒方さんのスパイ携帯だけってってください。それ以外のは多分gpsで全員居場所がバレると思います。」


「わかりました。」と会話した後通話を切った。


 一旦車を湯島聖堂の近くに止め、原口さんが話し始めた。


「で、どうする?」


「どの通路も封鎖されてるみたいです。」


「だが全部ってこたーないだろ。路地裏とか探せば。」


「原口さん、探してる暇ないかも。」と言われ後部座席を見ると、市原美香がさっきよりも衰弱したようすで顔色が白くなり額に汗をかいていて、東山がハンカチで汗を拭いてやっていると彼女がさっきよりもしんどそうな声で「まだ大丈夫、でも皆んなの気配が少なくなってる。」と言った。


「少なくなってるって。野上ってのは大丈夫なのか?」と原口さんが聞くと彼女はうなずき「でも、人が減った分私がきついかも。」と聞くと原口さんは「やっぱり、地下で行くか。」と言った。


「どうするんですか、あの警官は。」


「東京駅はお前ら3人でいけ、警官は俺がなんとかするから。」と言うと東山が座席の間から身体を出し心配そうな顔で原口さんを見て「危ない事はダメですよ。若くないんだから。」


「なんだよ、心配してくれんのか。」


「当たり前じゃないですか、定年退職した元刑事が捕まったなんて記事書きたくないですから。」


「大丈夫、ちょっと声掛けるだけだ。少し遅れるからお前ら先に行っててくれ、後から追い付くから。」と言われた東山は原口さんのじっと見て「分かりました。」と言って後ろの席に戻った。

 

 池谷さんに地下から行くと連絡した後、全員が車に携帯を置いてそとんいでた。


 丸の内線の御茶ノ水駅は入り口が道路を挟んで向かい合わせに地下へ繋がる入り口があり池袋方面の入口はシャッターが閉められており荻窪方面の入り口には立ち入り禁止と書いてあるテープが貼られにその前に制服を着た警官が一人立っていた。  


 私と原口さん、東山、市原は近くにある大学の門の死角から入り口の方を見ていると、原口さんがおもむろに駅の方に歩いて行き、警察官に話しかけると警官は持っていた手持の無線機で何かを話した後原口さんを連れて、駅の中に降りて行った。


 しばらく待った後、信号待ちで人通が少なくなるのを見計らいながら素早く駅の中に入っていった。


 階段を降りきると構内には電気がついていたが誰も居なかったので慎重に事務所から見えないように改札へ向かうと事務所の方に人の気配があるのを感じながら体をちじめ窓口がある改札を通りプラットホームから線路に降りた。


 明るい駅から暗い線路の方を見ると、等間隔で長細いライトが点っているが先が曲がっている為か奥を見通すことが出来ないためとても不気味に思た。



***



 会議が終わり主筆、社会部の田中、政治部の伊藤と俺だけが会議室にの残っていた。我々3人は主筆が喋りだすのを待っていたが、主筆は何かを考えているのか椅子に深く座り眉間に深いしわを作りながら目をつむったまま数十秒の静寂が続いた。


 そしておもむろにメガネを外し眉間を親指と人差し指げもにながら。


「雲村、お前のとこはいつから取材してた?」


「9月10日の八王子の事件があった次の日です。」


「どうりで最近ネタの掘り下げが浅いと思ったら。…で誰が追ってる?」


「うちの緒方と社会部の東山です。」


「東山って捜索願いでてただろ。」


「身を隠してたのをなり行きで見つけたんで一緒にやってもらいました。」と言ったら再び主筆は黙り込んだ。後田中に向かって。


「お前はいつから知ってた?」


「最初の頃に雲村から。」と言った後主筆は再び私の方を見て。


「この後はどうするつもりだったんだ?」


「先に汚職疑惑を記事にして外堀を埋めた後こっちのを出そうと。黙ってた事は謝りませんよ。」


「わかっとる。」


「主筆、今回の件に圧力をかけて来たのって内調ですか?」


「ああ。」と主筆が言った後、伊藤が。


「内調って内閣情報調査室か?危ないな。」


「ああ、で色々調べたら5年前の子供たちが最近になっていきなり能力に目覚めて暴走した後、昏睡状態のまま病院から行方不明になってる。」


「政府が連れ去ってるって事か?5年前の子供達はそんな能力なかっただろ。」


「ああ、ただ居なくなったときに、どの事件でも怪しい奴らが居たって情報もある。」と言った後主筆が口を開いた。


「雲村、この件を調査してるのは政府は知ってるのか?」


「はい、今回の調査では前回の提供者からも情報を引っ張ってきてるんですけど、緒方が会った時にどこかの実行部隊が突入して来て接触して来たそうです。」と言うと伊藤が「それも内調?」と聴く。


「多分な、全員スーツの男でリーダーだけ若い女だっららしい。緒方が言うにはおっとりした丸の内OL風らしい。」と言うと、伊藤は「ったく、ふざけてやがる。」と吐き捨てた。


「一先ず3人とも、さっき社主が言ってた事もあるから、この件は記事にしてしっかり追求していくが、如何せん今は時期が悪い。緒方いつ頃記事に出来そうだ。」


「連載で記事にしようと思えば明日からでも行けますただ、後二週間もあれば確実な記事にできると思います。」


「他がスクープ狙ってる痕跡は?」


「どうとも言えませんけど、こんなネタ相当調査してないと、どこの新聞も記事にできませんよ。ただ汚職は調べればなんとかわかりそうなんで。」


「そうか、なら明日から汚職の記事を出そう。今回の事件が落ちついたら子供達の記事も出す。そうだな、二週間後だ、社会部と政治部はきついと思うが人を割けるなら調査報道班と連絡し合って取材してくれ。くれぐれも他の会社に情報が漏れないように。」と言って会議は終わった。


 自分のオフィスに帰って来てスマホを確認すると緒方と東山から連絡が来ていたので二人と原口さんに連絡すると全て電源が入ってなかったのでタバコに火を付けながら池谷に通話をした。


「雲村さんみんな心配してましたよ。」


「会議しててな。すまん、なんかあったか?」


「緒方さんたちと市原美香が今東京駅に向かってるんです。」


「何、今どこだ?」と話しながら驚きで口に加えたていたタバコを床に落としてしまい、屈んで拾いながら。


「さっき御茶ノ水から丸の内線の線路から東京駅に向かったんでもうすぐ大手町駅に着くと思います。」


「なんでそんなとこにいるんだよ、今封鎖されてるはずだろ。」


「しょうがないですよ。市原美香が野上裕太は東京駅にいるって言ってるんですから。しかも、もしかしたら追ってた事件の一つかもって。」


「確実か?」


「いやまだ確実とは、ただTwitterでバズってる動画を見る限りだともしかしたら。」と言われ目の前に置いてあるノートパソコンで東京駅、爆破と検索するが会議の間前まで見ることが出来た動画は、検索結果のどこにも見当たらなかった。


「その動画って駅舎で炎の中に人が写ってるやつだろ。」


「はい。」


「今ネットで探してるんだが何処にも無いんだ。もしかしたら削除されてるかもしれないからもし保存してたら送ってくれないか?」


「いいですけど、そう言うのって新聞社でも保存とかしてるんじゃないんですか?」


「オフィスから出てくのが面倒だからな。」


「太りますよ。」


「うるせえ。」


「今そっちの携帯に送ったんで確認して下さい。」と池谷が言うとすぐにスマホの画面にメールの受信画面が映り、受診一件と表示がされた。


「おお、きた。それよりなあ緒方たちは今大丈夫か全く電話に出ないんだ。」


「GPSで追跡されたくないんで、みんな今携帯持ってないんですよ。」


「じゃあ。どうやって連絡取るんだよ?」


「緒方さんがスパイ携帯を持ってます。ただあの携帯の解析が終わってなくて電話番号が分かんないんで向こうからの連絡待ちです。多分もう直ぐ淡路町に着くんですぐ電話かかってくると思いますよ。」


「なら緒方から連絡が来たらこっちに連絡する様に伝えてくれ。」と言ったあと通話を終え

机の上の電話で主筆に内線を飛ばした。




***




 真っ暗なトンネルに等間隔で灯る明かりを頼りに数分歩くと、思ったよりもすぐに目当ての大手町駅の光が見えて来たので後ろから付いて来ているはずの二人を見ると、市原美香はさっきと変わらず辛そうだで東山が腕を支えながら歩いていたので私も少し戻り手を貸しながら駅の手前の影に隠れた。


 息を潜めプラットホームの方から聞こえてくる音に耳をそばだてると遠くからコツコツと靴の踵が地面を鳴らす音が聴こえた。


 二人の方を向き闇の中に微かに浮かび上がる二人の顔を見て動かないようにと目で合図を送りながら音が遠くに消えて行くのを確認するとポケットから携帯を取り出し池谷」さんに連絡する。


 コールが2回鳴ったあと受話器の向こうからといつも通りあっけらかんとした話し方で池谷さんが出た。


「もしもし、どうかしました?」というので今の状況を伝え駅のカメラを使って誘導してもらうように伝えると「了解。」と言ったあと受話器の奥からキーボードが鳴る音が聴こえ、その間、池谷さんは話を続けた。


「あ、そうだ、さっき雲村さんから電話が来てこっちに電話してくれって言ってましたよ。」


「連絡ついたんですか?」


「はい、会議してたみたいです。」


「怒ってました?」



「驚いてましたけど怒ってはいないと思いますよ。」と言ったあと奥から聞こえるキーボードの音がやみ「緒方さん、ゴメンなさいどうも大手町は地上への出口が全部閉められちゃったみたいで、そのまま東京駅まで地下道を通って下さい。」


「えっ、さっきまでは空いてたんですか?」


「はい、ちょうどそっちが地下に入る時には開いてたんですけど今確認すると閉まってて。とにかくまだホームに警官がいるんで気をつけて駅を抜けて下さい。後、今東京駅の監視カメラを見てるんですけど地下のカメラは写ってるんですけど地上は何処のカメラも動いてません。地下も非常灯以外ほとんど明かりがなくて全く状況はわかりません、さっき丸ビルのカメラをハッキングして、駅も見てるんですけど真っ暗です。途中で警察と会うと厄介なんで注意して行って下さい。」


「警察居るんですか?」


「いるにいるんですけど丸ビルの間の広い道で、随分遠くに装甲車とかトラックが停めてあります。タクシー乗り場にもパトカーが何台か居るんですけどそっちのは全く動いてないです。何台かはパトランプが割れたのもあるんで何かあったのかも知れません。」


「なんかって?」


「爆発とかですかね?どっちみち最初の爆発が起きてから新しい情報はないから何が起きてるかわからないです。」


「わかりました。」と言いい通和を切った。


 班長に連絡をしようと携帯の時計見ると画面の時計が9時12分と表示していて、呼び出し音が一回鳴っただけで直ぐに出た。


「緒方か?今何処にいる?」と言う班長からいつのより真面目な声をがしていた。


「ちょうど大手町に入る途中でこのまま地下を通って東京駅に行きます。」


「そっちは誰がいるんだ?」


「今は東山とさっき言った市原美香が一緒です。」


「そうか、そっちは今危ないから警察に見つかるなよ。」


「了解。」


「ああ、あとな明日の朝刊の一面に場所を取っとくから午前1時までに雑感記事を書け。」


「俺がですか?」


「ああ、今唯一うちの記者で現場にいるのがお前だけだ。今から構成と主筆に話してくるから貼ってでも原稿上げろ。いいな。」


「わかりました。」


「あとな、俺たちの追ってる事件を記事にする許可を取った。」


「本当ですか?」


「ああ、しっかり取材して来い。」班長の声には少し気合が入っていたので釣られて少し声が大きくなって「わかりました。絶対にあげます。」と答えた。


 通話が終わり市原美香の身体を支える東山に記事になると伝えると、彼女は一瞬、驚いたような信じられ無いような微妙な顔をした。


「本当ですか。」


「ああ、キャップが主筆に許可とったって。これから忙しくなるぞ。」と言った後状況を理解したのか東山は少し嬉しそうな顔をしたのを見た市原美香は状況が理解できないようで少し戸惑っていた。

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