第15話 勘弁してくれよ

 俺が声がしてきた方を見ると、ちょうど一人の女性がヘリコプターから姿を現していた。


 年齢は二十歳くらい。タキシードを着てその上にマントを羽織り、白の手袋を付けた右手にはステッキを持っていて、頭にはシルクハットを被っているまるで手品師のような格好をした金髪の女性だった。


 服装はともかく、顔立ちはモデルみたいに整っておりアルテー達にも負けておらず、更に言えば彼女の体型はタキシードの上からの分かるくらい出るところが出ており、かなりの巨乳なのが分かる。


 ……というか何で手品師?


 俺が手品師の格好をした女性の姿に首を傾げていると、当の本人が若干頬を赤くしながら苦笑を浮かべて話しかけてきた。


「裸エプロンばかりのハーレムか……。ここまで欲望丸出しの艦獄ダンジョンシップは珍しいですね」


「違っ!? 誤か……!」


 手品師の格好をした女性の言葉に思わず「誤解だ」と叫びそうになった俺だったが、最後まで言うことはできなかった。


 確かに裸エプロンを自分から進んで着たのはアルテー達だが、俺がそれを喜んでこの一年で色々楽しんだのは否定しようのない事実だ。……うん。欲望丸出しと言われても仕方がないな。


「あ、あの……? 珍しいってことは、少ないけど似たような艦獄があるってことですか?」


「……ええ、まあ、そうですね。女性を艦獄長ダンジョンマスターの力で部下にして、ハーレムを築いた男の人って結構いますよ。私も以前、部下にした女性達を裸にして鎖で繋いだ首輪を付けていた艦獄長の人を見たことがありますから……」


 俺の質問に手品師の格好をした女性は少し恥ずかしそうな表情をして答えてくれた。


 裸の女性達を鎖で繋ぐかぁ……。艦獄長の力で女性を絶対服従の部下にしてハーレムを築くっていうのは昔からネットでよく話題になっていたし、俺も実際にハーレムを築いたけど、本当にそんなことをしている人がいると聞くと少し驚くな……。


「そ、そうですか……。それで貴女は一体誰ですか?」


「ああ。すみません、自己紹介が遅れました。私は天雪あまゆき姫柰ひめなと言いまして『攻略者』をしています」


「………!?」


 頭を下げて丁寧に自己紹介をしてくれた手品師の格好をした女性、天雪さんの口から「攻略者」という単語が出たのを聞いて俺は絶句した。


 攻略者というのは文字通り艦獄を攻略して艦獄長が守る魔宝を手に入れようとする者達のことだ。雹庫県にやって来ている異世界の住人達は元々はこの魔宝を求める攻略者で、昔は攻略者によるテロ活動の一歩手前の攻略が頻繁に行われていたらしい。


 今では攻略者には特別な免許が必要で、魔宝を手に入れる手段も主に交渉、実力行使は犯罪を犯した艦獄長にのみという法律ができている。しかしだからといって安心はできない。


 艦獄長管理局の白部さんと一緒にやって来たということは、この天雪さんは俺がもし抵抗をした際の保険ということ。そして「攻略者」と名乗った以上は、戦いに来たとは思えない手品師の格好をしていても俺達と戦えるだけの実力があるはずだ。


 元の世界に帰ってきてすぐに攻略者の相手なんて勘弁してくれよ。

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