第12話 姫宮さんとデート!5

 ケーキを食べたあと、僕と姫宮さんはゆっくり公園を歩いていた。

 公園歩くのってめちゃくちゃ気持ちいいよね!


「公園歩くの気持ちいいね〜!」


「それは同感です。先ほどは少し食べ過ぎてしまいましたから。」


「姫宮さんって結構食いしん坊だよね!!」


「なっ!きょ、今日はたまたまです!」


「へ〜、たまたまなんだ〜!」


 僕はニヤニヤしながら言い返す。


「そ、そうです!」


「じゃあ、そういうことにしといてあげるよ!」


「なんですかその顔は!ニヤニヤするのやめなさい!!」


 そんな感じで楽しく会話しながら、歩いたあと、ちょうどよさげなベンチがあったので座ることにした。


「ああ!今日はなんて幸せな日なんだ!」


「そ、そんなにですか?」


「そんなにだよ!!僕の人生でダントツで1番幸せな日だよ!!」


「そ、そうですか。」


 姫宮さんは顔を赤くして俯いてしまった。その反応を見て、かわいいと思ったが、なかなかに攻めたことを言ってしまったことに気づいた僕も顔が赤くなってしまった。


「照れるくらいなら言わないでください。」


 僕の顔が赤くなっていることに気づいた姫宮さんが言った。


「て、照れてないし!だ、だって僕は決めたんだから!バカみたいって言われても変なやつって言われてもポジティブなことしか言わないって!」


「そういえばそうですね。あなたはいつも本当にいつもバカすぎるほどポジティブですもんね。正直、聞いてみたかったんです。あなたがどうしてそんなにポジティブなのか。」


 姫宮さんが真剣な顔で聞いてきた。正直、あまりおもしろくない話だから言いたくないけど、ここでふざけるのは違うな。仕方ない、話すか。


「つまんないし、おもしろくないけどいいの?」


 姫宮さんはうなずく。


「じゃあ、話すよ。まあよくある話なんだけど、僕、小学校の頃、いじめられてたんだ。1人だけ涼真っていう友達はいたんだけど、小3からクラスがバラバラになっちゃって。僕はその頃、地味で大人しくて暗いやつだったから、標的にされたんだろうね。涼真っていう学校の人気者と仲が良かったし。別にいじめもそこまで酷くないよ?無視されたり、上履きとか隠されたり、私物をゴミ箱に捨てられたりとか。そんなよくあるいじめだよ。その時に僕はいじめっ子たちに聞いてみたんだ。『どうして僕にひどいことするの?』って。そしたらさ、『ひどい?お前が地味で暗くてつまんねえから俺らがいじって面白くしてやってるんだろうが!』ってニヤニヤしながら言われたよ。多分ここが多くの人と僕との決定的な違いだろうけど、僕はここで、『ああ、そういうふうに考えれるんだ!』って思ったんだ。物事は捉え方次第で180度変わる。それならさ、全部ポジティブに受け入れてやろうって思ったんだよ。そこからいじめも笑顔で受けてたら、気味悪がって終わったんだ。そこからだね、僕がポジティブバカになったのは。大体は気持ち悪がられるけどね!今みたいに!でもそりゃあたまにはマイナス思考も働くけどさ、僕みたいにイケメンでもないし、スポーツもできないし、勉強もできないやつは、頑張ることでしかなにかを掴めないんだよね。だからさ、僕はずっとポジティブバカでいるって決めたんだ!」


 姫宮さんはずっと真剣に僕の話を聞いてくれた。本当に優しい人だ。


「ごめんね!変な話しちゃって!そろそろ帰ろうか!」


「いえ、私が聞いたことなので。そうですね。そろそろ暗くなってきますしね。」


 公園から出て、僕は姫宮さんを家まで送ることにした。


 姫宮さんの家に向かって歩いていると、姫宮さんはなにか考えているのか、無言になってしまった。


 や、やばい!やっぱりあんな話するじゃなかった!もっと明るい話しなきゃ!もうすぐ終わりなんだよデート!!もっとアピールしなきゃ!がんばらなきゃ!!


「う、うわー!!今日のデートめちゃくちゃ楽しかったなぁーー!!姫宮さんはどうだった?楽しかった?」


 ちょ、ちょっと強引に話を振りすぎたか?姫宮さんは僕の質問を聞いて少し考えている。や、やばい。これで全然つまらなかったですって言われたらどうしよう!さすがの僕もちょっとへこむなぁ〜。いや、最悪な想定はしておこう!なに言われても僕は絶対あきらめないんだからね!


「そうですね。私も今日はとても楽しかったです!」


 姫宮さんの笑顔、初めて見たかもしれない。いつも無表情だったけど、最近は怒った顔だったり、照れた顔も見れるようになってきたのだ。

 満面の笑みではないが、ふふっと笑ったような姫宮さんの笑顔。

 どんな表情の姫宮さんも大好きだったが、この笑顔はやばすぎる。


 姫宮さんの笑顔が見れるならなんでもしたい、そう思うような笑顔だった。


 この瞬間、僕は姫宮さんにまた惚れてしまったと言える。一目惚れしたから、これは二目惚れというわけだ。本当に姫宮さんが好きだ!大好きだ!そんな気持ちが溢れてくる。この気持ちを姫宮さんに伝えたい。


 そんなことを考えていると、姫宮さんの家の近くに着いてしまった。


「今日はありがとうございました。先ほども言いましたが、私も楽しかったです。」


 言うなら今しかない。不良たちか姫宮さんを助けた時に好きとか言ったし、日々の態度からもうバレバレだと思うけど、そういえばちゃんと姫宮さんに告白したことってなかったかもな。言わなきゃ。


 考えているうちに、姫宮さんは、家のほうへ向かおうとしていた。やばい!早く言わないと!


「待って姫宮さん!」


 僕は姫宮さんの手を掴む。そして姫宮さんは振り向く。ああ、僕はこの人がとんでもなく大好きなんだ。


「姫宮さん、好きです!大好きです!僕と付き合ってください!!」


 なんの変哲もないストレートな告白。とっさに僕の口から出てきたのはそんな言葉だった。


 姫宮さんは、少しだけ固まったあと、ボンッと音が聞こえるてくるほど、急に顔を赤くした。


「か、かかか、考えさせてください。」


 そう言って姫宮さんは、めちゃくちゃ猛スピードのダッシュで帰っていった。


 ちょっと待て。今、なんて言った?か、考えさせてくださいって言ったか?


 やばいてーーーーーーーーーーーー!!!!

 めちゃくちゃ余裕で振られると思ってましたよ!!か、考えさせてくださいってあの感じ、もうほぼオッケーなんちゃいまっか!!!!

 おいおい!!どうすんの!どうすんの!

どうすんの貴志!!


 よし、もう今日の僕にはキャパオーバーだ。すぐ帰って風呂入ってご飯食べて寝て、明日の僕に任せよう。うん、そうしよう!


 そんなうまくいくわけがなく、貴志は今日、一睡もできずに考えまくる夜を過ごすのであった。

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