第7話 持つべきものは友達

「よーるやーるやっふぉっふぉいやっふぉっふぉいやっふぉっふぉい!」


 僕は適当にハイジのオープニングの冒頭のよくわからない部分だけエンドレスリピートで歌いながらスキップして登校していた。

 もう察しただろう。

 僕はものすごく機嫌がいいのだ!!


 世界がカラフルに見えちゃうんだよ!

 この世界ってこんなに美しかったのですね!!あ〜もう最高だ!!


 どうして僕がこんなに機嫌がいいかって?

 姫宮さんとのデートが決まったからでーーーーーーーーーーーーす!!!!

 今週の日曜日でーーす!!

 LINEで決めちゃったもんね!!だって僕、姫宮さんのLINE持ってるもんね!!昨日交換したもんね!!嘘じゃないもんね!!夢じゃないもんね!!えっ、ちょっと待って、夢じゃないのよな?一応スマホ見て確認しておくか。ほーーーーら!!夢じゃないもんね!!現実だもんね!!


 昨日、姫宮さんと連絡先交換した後の夜に「日曜とかどう?٩( ᐛ )و」って送ったら、「大丈夫です。」って返ってきたもんね!!

 日曜の12時に駅前で集合だもんね!!


 いや〜、これが勝ち組って言うんですかね?なんていうか、心の余裕?そういうのが出てきちゃったというか、大人の余裕的な!!


 そんなわけで僕はご機嫌なのです!!


 あっ、涼真と咲良ちゃんだ!仲良く手を繋いで登校してる!いつもなら知らないふりして、「ちょっとすみません」って言いながら、2人の真ん中を通るけど、どうしてそんな醜いことをしていたのか今の僕にはわからないよ。


「やあ涼真!今日もダンディーでイケてるね!咲良ちゃんも、プリティーソーキュートだね!」


 僕が満面な笑みでそういうと、2人は固まってしまった。


「おいおいどうしたんだボーイアンドガール!もしかして、僕が眩しすぎたのかな?」


 すると2人とも現実に戻ってきた。


「お、おい貴志、なんなんだそのテンション。めちゃくちゃ気持ち悪いぞ。」


「貴志くん、どうしたの?頭打った?大丈夫?精神科行かなくていい?」


「Hahaha!!君たちはジョークがうまいね!ただ少し世界の美しさに気付いただけさ。」


「これは重症だ。ほんとに何があったんだ貴志!また姫宮さん絡みか?」


「貴志くん!つらくて現実逃避したいなら私たちに相談してよ!!友達でしょ?」


 咲良ちゃん、結構辛辣だな。まあ、それも今の僕にとっちゃオールオッケーだけど!仕方ない。この2人には教えてやるか。


「仕方ない。親愛なる2人には教えてやろう。実は、今週の日曜日に姫宮さんとデートすることになりました!!!」


「貴志」「貴志くん」


「どうだ!!びっくりしただろ?」


「つらかったんだな。そこまで現実逃避するなんて。ごめんな、気づいてやれなくて。」


「貴志くん、大丈夫!私たちがついてるよ!!一緒に現実に戻ってこよ!!」


 2人は泣き出しそうになりながらそんなことを言ってきた。どうして信じてくれないんだ!!ほんとなんだ!!嘘じゃないんだ!!僕はいったいどう思われているんだ!!

 その後、肩をポンポンされたり、頭を撫でられたり、励ましの言葉をめちゃくちゃくれたが、僕の潔白を表明し続け、これまでの姫宮さんとの出来事を話したり、最後にはLINEのトークを見せることでやっと信じてもらえた。まだ7割ぐらいしか信じてないらしいが。どうして僕には全く信用がないんだ!

 それを聴くと2人はそろって、


「「バカだから」」


と答えてきやがった!!僕はバカじゃない!ポジティブで、まっすぐなだけなんだ!!


 すると、涼真がいきなり


「ていうか貴志、お前、デートいけるような服持ってんのか?」


「あっ」


 やばいどうしようどうしよう。僕、休日とか家から出ないから、わけのわからないTシャツと短パンくらいしか持ってないや!そしてセンスは中学で止まってるからオールドクロ。終わった。


「神は僕を見放したのですね。終わった。」


 世界がカラフル?なんだそれ?世界は白黒でしょ?わーいモノクロの世界だ〜。


「たくしょうがねえな貴志は。咲良は土曜日空いてるよな?」


「うん!空いてるよ!」


「貴志!俺と咲良と一緒に土曜日、服買いに行くぞ!選んでやる!」


 涼真が爽やかにそう言ってきた。やっぱり持つべきものは友達だな!!


「あじがど〜!!!!」


 僕が大号泣しながらそういうと2人は笑いながら、「いいよいいよ」と言ってくれた。

 なんていい友達を持ったんだ僕は!これでデートに対する憂いはなしだ!!あとはデートプランを練りまくって、本番だ!!

 がんばるぞーー!!おーー!!!

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