異世界帰りの賢者ですが、何故か猫に!にゃんでなにゃー

ぽてたん

第1章

転移の間再び

  真っ暗な闇の中から1本の光が伸びてきて目の前が明るく輝き、だんだん頭の中の靄が晴れるように覚醒していき目が覚める。3年前に召喚された時と同じように空間にフワフワ浮いているような感じで、どこか足元がおぼつかない気がする。


 そこで最初に見えた景色は……


 全面がピンクの部屋の真ん中に置かれたソファーに沈み込むように座っている丸々と太った豚だった……


 ソファーの周りには見たことがあるコタツがあり、その周りにはいろいろな本が横積みになっている。さらに見たことがあるテレビ台一式が置いてあった。


「なんだこりゃああああああ!!」


 思わず叫んだ!


「う~ん…… ふぁぁぁ……」


 ソファーの上の物体が動いた。ゆっくり起き上がって、トロ~ンとした目でこちらを見てくる。


「あれ?? もしかしてトラちゃん?」


「……」


「ええええぇぇぇ~!! なんで帰ってきてるの?」


 やっぱり……


 ソファーの上にいたのは……


 3年半前に初めて会ったときにはスレンダーな体型で、ブルーのロングがよく似合う美しく可愛らしい女性だったが、今ではその面影もない、丸々太った駄女神アルメエルだった。


「ええぇぇじゃないだろ!!なんでって魔王の討伐が終わったからすぐに戻ってきたんだよ!大体なんでここに俺の部屋の私物があるんだ? しかもそのソファー召喚されるすぐ前に届いたばかりでまだ開けてもいなかった新品のはずなんだが?」


「えへへっ! ちょっとトラちゃんが向こうに行っている間だけだと思って借りちゃった」


「ちょっとじゃねぇだろ! まぁいいからさっさと新しい体に戻してくれ。ちゃんと行く前の約束通り魔法も使えて、アイテムボックスもそのまま使えるようにしてくれよな?」


 駄女神アルメエル 通称駄メルにそう言うと、すぅ~っと駄メルは目を逸しやがった……


 ジーッと目を見ると明らかに目が泳いでいる。こいつ何か隠してるな?


「どうした? 何か隠してるだろ?」


「えっと……戻す体がないんだよね…… こんなに早く戻って来ると思わなかったからまだ作ってないんだよなぁ……テヘペロ!!」


 テヘペロは可愛げのある女の子がしなければ、破壊力は0なんだよ!


「テヘペロじゃねぇし!!その戻す体が無かったら俺はどうなるんだ?」


「精神体のままだと後二時間くらいで消えて無くなっちゃいますね。こんな事ならトリアム用の体を残しておけば良かったかな?残念ながらあの体はこっちに戻る時に消滅するようにしちゃったから……」


「もしかして俺はトリアムにも戻れなくて、日本へも戻れない?」


「ご名答!!」


「ご名答じゃねぇよ! どうしてくれるんだ? お願いされて異世界に送り込まれて苦労して帰ってくれば戻れないとか……」


「このままだと消滅してしまうので、とりあえず仮の体で過ごしてもらってから、ちゃんと体を作り直すってことでどうかな?」


「どうかな?って他に選択肢は無いのか?」


「消滅するか仮の体で過ごすかの二者択一ですね!」


 そんなの選択肢じゃねぇだろー!!


「仮ってもしかして女性の体とかじゃないだろうな?」


「安心してちょうだい! 性別は今まで通りの男の子だから! 消滅しちゃったらどうしようもないから、もう仮の体に移しちゃうね!」

 駄メルが手を上げると意識が遠退いていく…… 男の子って言っていたな? もしかしてランドセルを背負って小学校に通わないといけないなんてことはないよな? 高校生位だと一人暮らしでもおかしくないし、楽しいかもしれないな……


 俺はそんな淡い期待をしていた………

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