3.食事


 アルシア3号の乗員5人は、本社からのメッセージに困惑している。 


 航法士のレナが口を開く、

 「多分いつもの操縦に不慣れな乗員による操作ミスか、機械トラブルでしょう。」


 「いや、一度に4隻はおかしい。」


 「船長、念のためにもう一度、船の設備を点検します。」


 「そうだな、よろしく頼む。」


 機関士サムが席を離れる。彼の本当に丁寧に仕事をするので、誰もが信頼している。


 操縦士のヨウコと医師のジョンは黙っていたが、心配しているのは、表情からわかる。


 「とにかく、もう4隻も消えているのだから、他人事ではないはずだ。全員、細心の注意をはらうように。」


 「了解。」


 これまでにない嫌な予感がする。乗員たちは、無言で持ち場に戻った。




 やがて昼食の時間になった。各自好きなメニューを選ぶ。船内では少量ながら、野菜と昆虫が栽培されていて、1週間に2回ほど、これを食べる権利が得られる。  


 また、食べる日は事前に決まっていて、互いに被らないようになっている。例えば、船長と操縦士が同じ日に船内で栽培された野菜を食べると言ったことはない。


 なぜ制限するかというと、単に貴重だからと、全員が一度に食中毒にかかるのを防ぐためである。


 今日はレナがとれたての野菜をサラダにしてを美味しそうに食べている。



 他の者は、一般的な宇宙食を食べるが、最近の宇宙食はかなり美味しいので、不満はない。 


 面白いのは、楽しいことが好きで、甘い物を沢山食べていそうなレナがほぼ野菜と果物(ただし、新鮮な物ではなく、加工されたものが多い。これはしょうがない。)中心の健康的なメニューをほとんど毎日続けていて、一番体調管理に気を付けていそうな、というより、皆の健康を管理する立場であるはずのジョンがステーキやら揚げたアイスクリームやらを好んで食べていることだ。


 雑談の天才のレナがいるので、食卓は大いに盛り上がる。


 食事を摂りながら、他愛もない話をしていると、今日のことが嘘のように思えてくる。船長は太陽系に着くまでこんな風景がずっと続けばいいと心から願った。









 アルシア3号はいつもと変わらず、ワープ空間の中を進んでいる。今のところ、変わった点はない。今は自動操縦なので、乗員は設備が正常に稼働しているか監視するだけである。夕食の準備が着々と進められ、船内照明が白色からオレンジ色に変わる。



 しかし、その時、ディスプレイに13番イオンエンジンの不調を知らせる表示が出る。けたたましい警報音がブリッジに響く。

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