――逢魔が時に迷う――

響平きょうへいまでそんなこと言うし……。こんなことになるなんて聞いてないよ」


 渋沢の意見へ肯定するような俺の言葉に、戸波は脱力した様子で肩を落とした。


 一週間前、渋沢の思いつきで隣県にある山へハイキングに行こうという話になり、俺と戸波は特に深く考えることもせずに同意を示した。


 全員、高校時代は陸上をやっていて体力だけには自信があったし、今回訪れたこの山もそれほど険しいわけでもないごく普通の山。


 春先になれば、山菜目当てに足を運ぶ人も多いし、夏場にはキャンプや俺たちのような素人登山をする者だって普通にいると聞いている。


 だからこそ、日帰りのハイキング気分でこうしてやってきたわけだったのだが、何故か途中で道を見失い、見覚えのない場所をさまよい歩く羽目となってしまった。


「今さらそんなこと言っても仕方ないだろ。ひとまず、もう少し歩いて休めそうな場所を探そうぜ。それで運良く道に出られれば儲けもんだし、電波くらいは戻るかもしれないだろ?」

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