ミミックの退屈は極限に達していた


 なんせ、宝箱に擬態するだけの日々だ


 あんまり退屈だったので、彼はネズミを観察するようになった


 ネズミは不思議な生き物だ


 まるっとした不気味な瞳、薄汚れた二本のヒゲ


 ボロボロの体毛からは、腐ったコケの匂いがする


 なのに、ちょこまか動き回ってヒゲをぴくぴく震わせる姿は、どことなく愛嬌があった


 熱心に観察しているうちに、彼はネズミに愛着を持った


 今にして思えば、それがよくなかったんだろうなぁ


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る