第26話

居間のソファーに座りながら、二人の母親がお茶を楽しんでいる。


「赤ちゃんって本当によく寝ますよね。うちの子、夜泣きもなくて寝てばかりなんですよ?」

「あら、ソリュドは夜泣きしますわ。兄弟でも違うものなのですね」

「夜泣き!ぜひお手伝いさせてください。よく話には聞くのですけど体験したことがなくて。大変だって皆口を揃えて言いますもんね」

「あら、では後でカデフェイルに頼むといいですわ。私はお乳をあげたら、また眠ってしまいますもの」

「まぁ、ミア様は母乳が出るんですね…私はあんまり出なくて…出産経験の近い還俗した神官女に頼んで乳母になってもらっていたんです」

「では、母乳は私に任せてくださいな」


サリィミアとデイトリンの会話を聞きながら、カデフェイルはソリュドのオムツを手早く替えた。

すっきりしたようで、彼はご満悦だ。手を伸ばして笑っている。その手を軽く握ったり緩めたりと遊びに付き合う。

その横でルウジェはくぅくぅ寝ている。確かに寝ている時間が長い。

そっくりな赤子でも随分と性格が異なるようだ。


「のんびりした子だから、なかなかお乳も飲まなくて心配で。早く大きくなってくれればいいのに」

「あら、可愛らしい時期なんてあっという間に終わるそうよ? 今のうちに赤ちゃんのいる生活を楽しんだほうがいいってアドバイスされましたわ」

「今はそんな余裕全くないですけど…世の中のお母さんって本当に大変ですよね」


お茶を飲んでいたデイトリンがはあっと深いため息をついた。

サリィミアがテーブルに置かれたポットから茶を足そうとして手を止める。


「アナタ、お茶のお代わりをお願いしますね」

「わかった。もうすぐ夕飯だからあまり飲み過ぎないようにな」

「今日の夕御飯はなんですの?」

「あー、市場で魚が安かったからムニエルにでもしようかと」


買い出しに出た時に、魚売りに勧められて買い込んできた。安くて量があるので家計に優しい。


「わぁ、ムニエルおいしいですよね、ポテトもつけてくださいませ!」


デイトリンはポテトが大好きだ。肉でも同じことを言う。茹でたじゃが芋に少し乾燥ハーブを混ぜて油で焼き付ければ完成だ。


「わかった、わかった。だから、あまり飲み過ぎないようにな。今お代わりを持ってくるから」


カデフェイルは台所に向かいながら、何かが違うと考える。

きっとあの邪神もこんな日常生活を自分に与えたい訳ではないはずだ。


そうだろう?!

そうだと、言ってくれ!


確かめるためにも執筆しようと固く心に誓うのだった。




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