言葉よりも、さきに……

男は旅立つ前に、女のところへやってきた。いつもは二つの雪見だいふくを一つだけもって。

分け合いたかった。でも、それには言葉が足りなくて……体から始まってしまった幼馴染の恋。恋というには二人の関係は近すぎた。近すぎて遠い、二人の距離。


男は最後に、女に自分を刻み込みにやってきたのか。雪見だいふくのようなまろい乳房をもみしだき、女の肌に傷跡を刻みに。

いやそうではない、体温の低い己の体に雪をもとかす女の熱を刻み込むためにやって来たのだ。離れていても、忘れないように。

離れた事でわかる、欠けていたもの。その空洞を埋められるかは二人しだい。