ホントのチート「バイナリエディット」で、異世界は超イージーモード

寝る犬

イントロダクション「女神の部屋(る~るる、るるる、る~るる♪)」

「はい。と言うわけで、あなたは死んだわけですけど」


 自称女神は、売れない芸人のように軽~い口調で衝撃の事実を告げた。

 緑っぽいというか水色っぽいというか、変な色の神殿的なとこ。

 日本の一般家庭に育った俺には無縁そうな場所だった。

 まぁ少なくとも、俺んちの近所ではないわな。


「じゃ、あれか? チートやるから異世界救ってこい的な?」


「そうそう、最近の子は話が早くていいですねぇ~」


 女神がにこにこと手続きを進めようとする。

 俺は腕を組んで、女神をにらんだ。


「で、何個?」


「はい?」


「チート何個?」


「えっ? 普通1個……」


「やぁだぁ~! 5~6個くれなきゃいかねぇ~」


 とりあえず言っとくだけタダなので、吹っ掛けるだけ吹っ掛けてみた。

 我ながら「5~6個」とか強欲だ(笑)


「えぇ~? それはちょっと強欲すぎ……」


「やだやだやだやだぁ~!」


 バタバタと手足を振り回して暴れてみる。

 我ながらみっともない。

 しばらく耳を押さえていた女神は、俺があきらめないとみると、スマホのようなものを取り出して誰かと話を始めた。

 いったん切り、別なところへ。また切って別なところへ。

 関係各所に連絡を入れていたようだが、スマホ的なもののスイッチを切ると、ふぅっと汗を拭いて、こそこそっと話した。


「ないしょで……。ないしょで2個あげます。ほんとほかの人に言っちゃダメですよ?」


「2個かぁ~。3個にならん?」


「2個だって特例中の特例ですよ?! サービスでマジックアイテムも付けますから」


「う~ん……しゃあねぇな。好きなの選んでいい?」


「あ、はい。もちろんです。聖剣ですか? 最強魔法ですか?」


「いや、そんなもんより全ステータス見放題スキルと、バイナリエディット能力をくれ」


「バイナリ?」


「世界データの変更能力だよ」


 女神は言葉の意味が分かってない。

 それでも何とか説明して、概要は理解してもらえたようだった。


「ダメダメ! ダメですそんなの! 最悪世界が破滅するじゃないですか!」


「い~じゃん! どうせ俺が助けに行かなかったら滅ぶ世界だろ!」


「え~、だって~」


「じゃ、いかねぇ!」


「ふぇぇぇ~」


 こうして、世界中の全パラメータを見放題に見られる能力と、バイナリデータを直接エディットできる能力をせしめた俺は、ワクワクしながら異世界へと旅立つことになった。

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