第5話

 翌日、次行くまでの準備が始まった。朝のロビーで集まり、即時解散。私はトーマと行動することになった。とりあえず衣類などは宿において置き私たちは田舎町の商店街へ行くことになった。


 商店街は案外にも繁盛していて、いろいろなものに目移りをしながら私は薬屋へと駆け込んだ。トーマさんは別のところを探すらしい。



 薬屋は薬草のにおいがむせかえるくらいしていた。色々な瓶に粉状の薬草が入れられている。そのような背の高い棚が沢山あり迷っていると声をかけられた。


「・・・・はい、これから花の都まで行く予定なのですが」


 最後まで言う前に話が早い店員さんはいろいろな棚から薬草を持ってきて私に見せてきた。どうやらこの店には旅人が沢山くるようでどうやら私も同類らしい。


 旅人か、と一人その言葉の響きに浸っているとお会計が済んでいた。その薬草を抱えて他に必要なものがないか考えてみる。とりあえず着替えも必要だろうと近くの服屋に寄った。


 集まったのは午後六時ごろ、ロビー。トーマと私は先にソファに座っていた。デュークがやってきた時には彼は疲れ果てていて、どしたのかと私は様子をうかがった。


「いや、大丈夫だ。ああ」


 デュークが持っていたボストンバックに入っていたのは、数々の食料だった。ちなみにトーマが持ってきていたのは大量のマッチと簡易的なテントだった。それらを見る限りこれから受ける環境はとても厳しいものだと自覚をした。


「とりあえず、今日は早めに寝よう」


 デュークがそう言った。私はそこに何か引っかかりを感じて、意見を述べてみる。

「そこまでして、この町から早く出なければ・・・・・・?」


 ここでまたもやデュークからの鉄仮面の視線を浴びてしまった。


「ここにいつまでもいてどうする」

「ですが、お互いお金もそんなに・・・・・・」


 ないわけではと言いかけたときに後ろから待ったがかかった。両肩に手を置かれて深呼吸をさせられる。


「いい・・・・?お金の話はこんなところでしてはいけないよ」

「・・・・はい」


 はい、いこいこうミュリュちゃんも疲れているんだ。とトーマが私の背中を押す。なにかがおかしい、私は疑問を抱いた。


 目覚めたのは深夜の一時だった。早く寝すぎたのだろうか、目がさえてもういちど眠るのにはそうとうな時間を要すると思った。


 部屋を出て、ダイニングまでに行くと二人が仲よくはなしていた。なにやら入ってはいけない気がして、通ろうとすると気づいたトーマが私を引き留めた。


「ミュリュちゃんも話そうよ」


 うれしかったが、緊張する。恐る恐る椅子に座った。


「・・・・・・申し訳ございません」

「ええ、なんで謝るの」

「仲の良い、二人を邪魔してしまって」

「気にすることないない、ほら飴あげるから」


 トーマは何かと優しくしてくれる。とても感謝していた。でもなぜかデュークが不機嫌そうな顔をしてドキリとした。


「なーに、兄さん不機嫌な顔しないの」

「別に」


 トーマは眉を困らせて私を見た。気にすんなよと肩を軽くたたく。それにデュークさんが余計に眉間にしわを寄せたのが気になるけど気にしないことにした。これから長い付き合いになる人だ。私は勧められたお酒を少し飲んだ。

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