第33話

 アルバンの調子が戻ったのを確認した後、俺はラーレたちの下へと戻っていた。

 すると、ラーレとエーファが必死に木材を運んでいるようだった。


 ただ、釘までは打てないようで、そこで完全に手が止まっているようだった。


 そこで戻ってきた俺は二人に謝って作業に加わる。



「すまない。もう大丈夫だ。続きをしようか」

「もう、遅いわよ! さっさと始めましょう」



 ラーレは口で怒りながらも、その表情はホッとしていた。



「あ、主様にそんなお仕事をさせるわけには――。ここは私とラーレにお任せください」



 エーファが俺の代わりに作業をしようとする。

 すると、ラーレが頬を膨らませて驚いていた。



「だから、二人でやってても進まなかったんでしょ!?」



 その二人の様子に苦笑を浮かべてしまう。



「大丈夫だ、ちゃんと手伝うからな」

「も、申し訳ありません。主様にこのようなお手を煩わせてしまい――」

「気にするな。それよりも一気に片付けていくぞ!」



 俺たちはそれから黙々と壁を補修していった。






 そして、しばらくすると何とか壁の補修が終わっていた。



「はぁ……、はぁ……、何とか終わったな……」



 不格好ながらも何とか隙間風は吹かなくなった壁を見て、俺は額の汗を拭っていた。



「えぇ、本当に何とか終わったわね」



 ラーレもどこかホッとした様子だった。

 もちろんエーファも安心して――。



「よし、それじゃあ、記念にもう一度吹き飛ばして――」

「って、やめろ!」



 まさかのもう一度魔法を放とうとしていた。



「じょ、冗談ですよ。主様……。わ、私がそんなことするはずないですよ……」



 エーファは苦笑を浮かべているが、とても冗談だったように聞こえない。



 でも、ようやく直せたんだな……。

 本当に良かった……。



 そんなことを思いながら水晶を見てみる。



【領地称号】 弱小領地

【領地レベル】 3(1/16)[庭レベル]

『戦力』 4(3/25)

『農業』 3(6/20)

『商業』 3(6/20)

『工業』 7(14/40)



 あれっ? 戦力の数値が伸びていないか?



 もしかして、壊してそれを補修しても数値が上昇するのか。


 ――意外と上げるのが大変な項目なんだよな。

 今は家が増築できないし、新しい家を作るわけにも行かないし――。



「よし、エーファ。もう一発、景気よくいって――」

「って、そんなのダメに決まってるでしょ!!」



 ラーレに思いっきりピコハンで叩かれてしまう。



「わかりました。主様が仰るのなら思いっきり――」

「って、あんたもそんな命令を聞かなくて良いわよ!!」



 ラーレはエーファに対してもピコハンで叩いていた。






 建物を壊して、戦力を上げる上昇方法は一旦保留になってしまった。

 良い案だと思ったのだが、やはり今住んでいるところだから……というので抵抗があるようだ。


 それならば、壊す用の建物を急遽準備すれば解決するだろう。


 そういうことで、朝からクルシュには木の枝の採取に向かってもらった。

 今回は品質を気にする必要がないので、クルシュ一人で問題ない訳だし――。


 そして、俺は鍛冶に取りかかっていた。


 まだ鍛冶で作っていないものがあったから――。



 『鉄の短剣』と『白銀の剣』。



 ラーレとアルバンの武器なのだが、武器に損傷度が設定されている以上、いつかは壊れてしまう。


 そうなると新しい武器を買うのにかなりの金がかかってしまう。

 自分で作れるならそれに越したことはないだろう。


 そんなことを思いながら鍛冶の画面を開いてみる。



【名前】 鉄の短剣

【必要材料】 D級石材(20/15)+D級木材(115/10)

【詳細】 鉄製の短剣。切れ味はそこまでよくない。



『鉄の短剣を作りますか?』

→はい

 いいえ



 よし、これは作ることができるようだ。

 なら、早速作っておくか。



 俺は『はい』のボタンを押すと、目の前には完成品の短剣が出来上がった。


 次に白銀の剣を見てみる。



【名前】 白銀の剣

【必要材料】 B級石材(0/30)+B級木材(0/10)

【詳細】 白銀製の剣。鋭い切れ味で刃こぼれしにくい。



『素材が足りません』



 まぁ、そうなるよな。

 むしろ鉄の短剣が素材集めなしで作れたことの方が驚きだった。



「あらっ、また何か作ったの?」



 一通りの鍛治をおえるとラーレが興味深そうに聞いてくる。



「あぁ、ラーレの武器を使ってたんだ。これ、使うよな?」



 ラーレに向けて短剣を差し出すと彼女は驚きの表情をする。



「ほ、本当にいいの?」

「あぁ、もちろんだろう? ラーレのおかげで俺たちはずいぶん助かってるからな」

「うん、わかったわ。大事に使わせてもらうからね」



 ラーレは笑みを見せてくる。



「それじゃあ作れる物も作ったし、そろそろ新しい場所を見にいくか」

「新しい場所?」

「あぁ、今行けるスライムの森。その更に奥を目指してみようと思う。ラーレの万能薬も作る約束だもんな」

「えっと、自分から頼んでおいてなんだけど、本当によかったの? S級万能薬なんて、かなり高価な代物よ。そんなものを作ってくれる約束をしてもらうなんて……」

「はぁ……、今更何を言ってるんだ? そんなの当然だろう? 仲間のためなんだぞ?」

「あははっ……、そうだったわね。わかったわ、私もその素材採取、全力で力を貸すわ!」

「あぁ、よろしく頼むな」

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