第9話 試合後


試合後のヒーローインタビューが行われている。

今日得点を決めた中村とゴンサロがファンに向けて喋っている。

ヨハンはその光景を目に焼き付けていた。


ここまで来るのに約4年かかった。

二部の降格しそうなチームを任され、ギリギリ残留に導くと翌年からは徐々に好みの選手を獲得しながら順位を上向きに持っていき、昨年やっとプレーオフを制して、一部リーグへの昇格を決めたのであった。

最初はクラブ内部でも批判的な役員は多かった。ファンもそうだ。

サッカー選手としての実力もない外部の人材を何故雇用したのか。

そしてキャリアもない新人をだ。

一つ目は破格の年俸で済むからであり、

もう一つは彼が学生時代成績優秀であり、インターンとして、前前監督の元で学んでいたからである。

その監督がオーナーと揉めて辞任したあと、成績は急降下して残留が危ぶまれた。

そこでもう一度お願いしようとしたところ、勧められたのがヨハンであった。

彼は未知数だが、私並みの手腕があるはずだ。

それは私が保証する。

それに1試合だが彼に指揮を取らせた時素晴らしかったからね。


そうして彼の監督人生が始まったのであった。



バルセロナの監督ことフェランが握手を求めてきた。


「今日はやられたよ。

 あなたと会うのはカップ戦しかチャンスが無かった。しかもそれすら運命の悪戯で今日が初めてとなってしまったがね。

 いやいや、見事でした。

 また我々のホームで待ってます。

 その時は完成されたチームをお見せしますよ。」


彼は負けたというのに自信満々であった。

それが彼のカリスマ性にもつながっているのであろう。


「いえいえ。

こちらこそ不意打ちみたいなものなので。

あなたの選手時代から応援していました。

また対戦できるのを楽しみにまっています。」


そういって2人は握手をして去るのであった。



報道陣がとても多い。

これが一部ならではか。

そしてバルセロナを倒すという恐るべき難易度の高いミッションの報酬か。

彼はチームと自身が悪く言われないであろう最低限のコミュニケーションだけをマスコミと取り切り上げるのであった。


そして部屋に着いたヨハン。


彼はパソコンを立ち上げた。

そこに出てきたのは今季の対戦カード。

そこには点数も入っている。


今日の対戦は 2-1 で勝利。

その先の3戦は全てレガレスは負けとなっていた。

そして年間の順位は8位。


ヨハンは独り言のように呟く。


「今日の結果は読めていた。

 そして初めての一部だった選手も多く。

 相手はバルセロナ。

 しかも準備期間は膨大にあり、相手からすると視界に入らないようなチーム。

こちらはモチベーションとコンディションのピークをここに持ってきている。

それは結果こうなるであろう。」


彼はペンを片手に丸を描く仕草を見せる。


「だが、この先は一部のプレースピードやフィジカルに圧倒されるであろう。

 そのあたりが噛み合うまで3試合かな。

 だが今が成長期の選手が何人かいる。

 その爆発次第では、、、」


そう言って彼は録画した今日行われた試合を全て見始めるのであった。

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