第2話 不思議な彼


「どうも、嬢ちゃんには人を呼ぶ才能があるらしいな。

いい奴も悪い奴も寄ってくる」


どういう意味だろうか。

変な人に追いかけられた覚えはない。

あの後も特に何かあったわけでもない。


「なあ、あの少年って嬢ちゃんの友達なのかい?」


「少年?」


「うちの木蓮を寂しそうに眺めていた奴。

ちょっと線の細い、猫みたいな髪の毛しててさ」


あの白い花、そういう名前だったんだ。

入り口付近の木を見る。


「霧崎君のことですか?

友達っていうか、たまたま会っただけですけど……」


卒業式の時のことを言っているのだろうか。

たった数か月前のことなのに、何年も前のように思える。

こんな大騒動になるとは思わなかったからだろうか。


「あの少年、あの時の嬢ちゃんとは違ったおっかなさを感じたんだ。

もうちょっと来るのが遅かったら、俺が声かけてたかもな」


あの時、梅雨さんいたんだ。てっきり誰もいないと思っていた。


「隠れてたわけじゃないんだけどさ、裏のほうでずっと様子見てたんだ。

なんて言えば分かるかな……あの少年、ちょっとしたことで、道を踏み外しそうなんだよ。誰かが見てやってないと、知らない間に崩壊する感じがした」


「確かに変に目立ってはいますね」


「ああ、そうか。あの野郎と雰囲気が似てるんだな……知らない間に闇を抱えて、暴走させるような感じがした。下手したら、友達も気づいていないんじゃないか?」


「いつも一緒にいるのに?」


「距離が近すぎるからこそ、見えないもんもあるんだよ」


二人の距離感が近すぎてどうしようと、友達が騒いでいたのを思い出した。

まったく関係のない赤の他人のはずなのに、気にする理由がよく分からなかった。

灯台下暗しということを言いたかったのだろうか。


そういえば、あの時も黙っているように言われたのだっけ。

そう考えると、お互いに話していないことって結構あるのかもしれない。


「俺が言うべきことじゃないのは、重々分かっている。

あの少年にとっちゃ、俺たちはただの怪談話なんだから」


鬼が出るという噂を聞いて、ここまで来たらしい。

あの場に梅雨さんがいたら、また展開も変わっていたのだろうか。


「あの少年をちょっと見ててやってくれないかな。

いい刺激にはなると思うんだが」


「できるかぎり、気にかけてみますけど……不良って感じじゃないんですけどね」


「不良になりかけてるっていうか、壊れかかってんのを無理やり動かしてるというか。ここに来るからには、何かあると思うんだよなあ」


「そういえば、死に際の猫みたいなオーラ出してるって言われたそうです」


「まさにそんな感じだな。

いつのまにか、目の前から消えそうな感じがした」


あの日は友達からここまで逃げてきたと言っていた。

悪目立ちしているだけで、本人は悪い人じゃない。


本当に何かあるのだとしたら、その勘は誰よりも鋭いのかもしれない。


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