第13話ここは……

 姉の部屋は、カーテンやマットがピンク色で「女性の部屋」として想像しやすいデザインだった。ベッドの周りにはぬいぐるみが、いくつも置かれている。ボロボロの古いものから、最近出てきたキャラクターまで様々だ。


 部屋に一歩踏み込むと、女性特有のほんのり甘い空気が漂っている。

 それだけでイケないことをしている気持ちになってしまう。いや、これから本当にイケないことをする予定だ。


 親父の部屋になければ姉の部屋にタイムマシンに関する情報があると思って、留守中に部屋を探索しようとしているのだ。


「まずは……収納棚を調べてみよう」


 壁にぴったりとつけられた木製の収納棚には、本やノートパソコン、ファイルなどがしまわれている。携帯電話で写真を撮って元の位置を記録してから、一つ一つ取り出して、調べていった。


「これはビジネス書で、これは料理の本、あれは仕事の書類なのかな…?」


 架空のパッケージのデザイン案がいくつも描かれていた。


 誰に向けたデザインなのか説明が記載されている。プレゼン資料か何かだろう。他も似たような資料ばかり。目的のものは見つからなかった。


 テレビ台やベッドの下も探すが、筋トレ器具や化粧品などばかりが出てくる。ついでに下着も見つかったが、見なかったことにして、そっと元の場所に戻しておいた。


 部屋に入ったことがバレても許してもらえそうだが、下着を見たことがバレたら絶対に許されないだろうと予想できる。見える地雷は踏まない。大切なことだ。


 隅々まで探したが何も見つからない。

 最後にウォークインクローゼットのドアを開くことにする。


 左右にびっしりと、おしゃれな洋服が並んでいた。春物から夏物までいろんなデザインがあって、上部には荷物が置けるような棚には靴箱も置かれている。


「ここには置いてないだろうな」


 もし姉さんがタイムマシンに関連する何かを隠していたとしても、こんな分かりやすいところにはしまわないだろう。


 とはいえ、手を抜くことはできない。念のため探すか。


 天井付近から床まで隅々までチェックをするけど、予想通り衣服以外は何も見つからない。


 姉の部屋に入れば何か見つかるだろうと期待してたので、落胆する気持ちが大きい。探しつかれたこともあり床に座って壁に寄りかかった。


「ガコンッ」


 背中から音が鳴ると、体を支えていた壁が消えてあおむけの状態になった。

 頭をゴンと床にぶつけてしまいジンジンと痛む。


「イツッ……」


 頭を押さえながら立ち上がるとポッカリと壁に穴ができていた。隠し部屋が出てきたのだ。


 部屋は薄明るく中の様子が少しだけわかる。


 部屋には大型の冷蔵庫のような四角い金属がいくつも並んでいて、ブーンとファンの音が耳障りだ。空気はキンキンに冷えていて、まだ春だというのにクーラーがフル稼働していた。


「ここは……」


 普通の家にはないであろう装置にタイムマシンとの強い関係性を感じる。

 ようやく手掛かりを見つけた。そう思うと、自然と胸が高まるのだった。

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