『強さ』とは何か。涙無しでは語れない切なくも儚い時代を表す恋愛物語。

番外編を含む全てを読み終えました。
この物語は、狼種族のレティリエという女性が主人公のお話です。そのレティは美しい容姿を持ってはいるものの、一人だけ狼の姿になれないという悲しい事実を抱え、狼社会でとても孤立しています。

その美しい姿を人間に目をつけられたレティは、とんでもない事件に巻き込まれていきます。
そしてその事件を皮切りにずっと片思いだったグレイルという狼青年との恋愛を描く儚く切ない物語です。

まずとにかくすっと入り込んでくる作者さまの文章術がとても凄く、ガンガンと心にレティの儚い思いが飛び込んできます。
私はいつの間にかレティに完全憑依しており、とにかくレティの辛く悲しい気持ちが手に取るように感じてしまい……

恐らくこの物語の半分ぐらいずっと泣いていた気がします。

そして彼女が思いを寄せるグレイル。
彼もまた狼社会という、人間社会とはまた全然違った価値観や概念がある中で戸惑いながらも色んな困難に立ち向かいながら、少しずつ今まで狼社会に無かった新たな価値観や気持ちに目覚めていきます。

それもレティが辛く悲しい過去から色々なことを学び、感じ、辛い事が多くあっても、何度も崩れ落ちそうになりながらでも不屈の精神的な強さを持っていたから。

そのレティの思いと切ない恋心を中心に、狼社会という世界が少しずつ変わっていく……そんな恋愛をメインとした物語ではありますが、今の社会の考え方や人々の価値観、自分の在り方など、とても考えてしまうという儚くも美しいお話でした。

『強さ』とは一体何か。

その答えはこの物語に詰め込まれています。

涙無しでは語れないこの素晴らしき物語に、多くの方々が出会えることを強く願っています。

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